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151 そう言えばそんなの、売ってたっけ


「バーリマンさんの出番ってどういう事? あっもしかして、錬金術ギルドにも魔法陣の本が売ってるとか?」


 ストールさんはいろんな所で本が売られてるって言ってたし、僕がほしいのは魔法陣の本だって聞いたロルフさんがそんな事を言い出したんだから、きっとそうだよね。


 そう思った僕は、期待した顔でバーリマンさんの方を見たんだ。


「期待させちゃったみたいで、ごめんなさい。残念ながら錬金術ギルドに魔法陣の本は売っていないわ」


 だけど錬金術ギルドには売って無いんだよって言われちゃった。


 でもさ、ならなんでロルフさんはバーリマンさんの出番だって言ったんだろう?


「なるほど。確かに先ほどの言い方では、ここに魔法陣の本が売っておると勘違いしてもおかしくなかったのぉ」 


 そう言いながら笑ったロルフさんは、何で出番なんて言い方をしたのかを教えてくれたんだ。


「ルディーン君は覚えておらぬか? 最初にこの錬金術ギルドを訪れた時に話したじゃろう。入り口に並んでおるアミュレットは皆、ギルマスが趣味で作ったものじゃと。魔法を封じ込めた魔道具の作り方を調べたと言うのであれば、そのアミュレット作りに何が必要か想像できるのではないかな?」


「アミュレットって確かお守りの事だよね? あっ、そっか! って事は、あのアミュレットにはタリスマンが使われてるんだ」


 僕の返事に頷きながら、嬉しそうに長いお髭をなでるロルフさん。


「その通りじゃ。アミュレットには魔法発動体となるタリスマンが使われておる。と言うより、タリスマンに空気中より魔力を吸収する素材を組み合わせた物がアミュレットなのじゃよ」


「そう言えばタリスマンはずっと弱い魔法を使い続ける魔道具だってご本に書いてあったっけ。じゃあ、アミュレットって言うのは、誰かに魔力を注いでもらわなくても使えるタリスマンの事だったのか」


 そっか、あれは武器や防具にミスリルやオリハルコンを使ったり、重さが軽くなるひもの魔道具に魔物の毛が使われてるのと同じ様な魔道具だったんだね。


「うむ、その通りじゃ。そしてタリスマンを使った魔道具をギルマスは自分で作って錬金術ギルドで売っておる。ここまで言えば、わしが何故ギルマスに出番と言ったのか解ったじゃろう?」


「うん。バーリマンさんは魔法陣を描く事ができるんだね」


 もしかしたらタリスマンを他で買ってきて作ってるのかもしれないけど、ロルフさんが今まで話してくれた事から考えるとバーリマンさんが自分で作ってるとしか思えないんだよね。


 で、僕がそう言ったら、


「ええ。私は魔法陣を教えている学校できちんと基礎を学んでいるわ。流石にその分野の専門家には劣るけど、街に点在する魔法陣の私塾を開いている人たち程度には詳しいわよ」


 バーリマンさんがズイっと前に出て、こう言ったんだ。


「魔法陣って教えてくれる学校まであるんだ。図書館で読んだご本には、魔法陣の勉強はご本を読んでしなさいねって書いてあったから、知らなかったよ」


「本で勉強する人もいるけど、やっぱり誰かに教えてもらった方が理解は早いんじゃないかしら。特に基礎的な事をきちんと理解しているかどうかは重要よ。そこがしっかりして無いと簡単なものを書いているうちはいいけど、少し難しい物に挑戦しようとしたらうまくいかなくなってしまうもの」


 そっか。狩りとかでもそうだけど、やっぱり基本は大事なんだね。


「ルディーン君は魔法や錬金術を独学で身につけておるが、これらは学問であると同時に魔力を扱うスキルでもあるからのぉ。それに対して魔法陣は純粋な学問じゃから、教えてくれるものが近くにおるのならそのものに頼る方がよかろう」


「そうだね。だけど、バーリマンさんはギルドマスターのお仕事があるから忙しいんでしょ? 教えてもらってもいいのかなぁ?」


 回路図を書くだけの魔道具と違って、魔法陣は文字とか記号をちゃんと書かないといけないだろうから教えてもらえるならその方が絶対いいよね。


 でも魔法陣の描きかたを教えてくれるって事は、もしかするとバーリマンさんのお仕事の邪魔になっちゃうかもしれないから僕はいいの? って聞いたんだ。


「あら。ルディーン君には色々と手伝ってもらわないといけないもの。そのお礼をどうしようかって考えていたから、私からすると渡りに船よ」


「うむ。これが大人の錬金術師ならば時間に対してお金を払うだけで良いのじゃが、ルディーン君の場合はご両親が預金を管理なされているからのぉ。それだけでは喜んでもらえないと思って気になっておったのじゃよ。じゃがこれならば喜んでもらえるじゃろ?」


 そっか。僕がお手伝いをするお礼に魔法陣の描きかたを教えてくれるって言うのなら、頼んじゃってもいいのかも。


 だっていっぱい教えてもらったら、僕もいっぱいお手伝いすればいいんだもん。


「うん! 僕もいっぱいお手伝いするから、魔法陣の書き方、教えてください」


「ええ、期待してるわよ」


 こうして僕は、バーリマンさんから魔法陣の書き方を教えてもらう約束をしたんだ。



「1から教えるとなると教科書が要るわねぇ。どこにしまったかしら?」


「家のものに聞けば解るのではないか?」


 ストールさんが馬車を呼びに言っている時間を使ってロルフさんとバーリマンさんは僕に魔法陣を教える相談をしてるんだけど、その話を聞いてると、どうやら本屋さんに売ってる本じゃなくてバーリマンさんが学校で使ってた教科書を使って教えてくれるみたいなんだよね。


「他の教科のなら確かに家の者に聞けばどこにしまってあるかすぐに解るのですが、魔法陣の教科書は卒業した後も確認の為に何度か目を通していたので私が管理をしていたのです。ですから、他の資料共々仕舞い込んでおりまして……」


「なるほどのぉ。そういう事ならば、探しても見つからぬかも知れぬか」


 だけど、どうやらその教科書を探すのが意外に難しいみたいなんだ。


 でもさ、資料と同じところに置いてあるって解ってるならそこを探せばいいだけじゃないの?


 そう思って聞いてみたんだけど、


「これに関してはわしもそうなのじゃが、わしらのような研究者は資料だけで膨大な量を抱えておってのぉ。近年の物ならばすぐに取り出せる場所においてあるのじゃが、十数年も前の資料となると探し出すのも一苦労なのじゃよ」


 そしたらこんな答えが帰って来たんだよね。


 ロルフさんが言うには、ほぼ毎年どこかで何かしらの発見や発明がされるから、すぐに取り出せるような書庫は新しい資料だけですぐに一杯になっちゃうんだって。


 でね、そうなると古い資料は保存の魔法が掛かった入れ物に入れて別の倉庫に入れちゃうから、昔の資料が必要になったときは毎回苦労して探す事になるらしいんだ。


「何せその教科書を使っていたのは私の若い頃でしょ。そうなると資料庫の最深部、それも色々な資料箱の下になっていると思うのよね」


「うむ。流石にそこまで古い資料となると、探し出すのもちと骨じゃろう」


 おまけに今回のはバーリマンさんが学校を卒業してすぐの頃の資料だから、探すのがとっても大変みたいなんだよね。


 だからロルフさんも、そんなに古いもんなら見つからないかもって思ったみたい。


「ギルマスよ、ここは新しい教科書を用意するほうが早いのではないか?」


「そうですね。その方がいいかもしれません。では早速、明日にでも手配しますわ」


 なんと新しい教科書を買った方がいいんじゃないの? って言いだしたんだんだ。


 その上バーリマンさんまでそうした方がいいって言い出したもんだから、僕は大慌て。


「だめだよ! 本はとっても高いんだよ。それに、そういう本は物語が書いてあるものよりもっと高いってお父さんも言ってたもん。そんな本を買わないといけないなら、僕が自分で本屋さんで買ってくるよ」


 バーリマンさんが使ってたのを借りて教えてもらうならいいって思ってたけど、お金を出して新しく買うって言うのはダメだと思うんだ。


 だって、その本は僕に教えようって思わなかったら絶対に買わなかっただろうからね。


 だから僕は、そんなの絶対にダメだよって、二人にそう言ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。

 

 ブックマークが360を越えた上に総合ポイントも1000を超えました! 本当にありがとうございます。


 次の目標は日間ファンタジーの100位以内! まぁ流石に一日で100ポイント近くは難しいかもしれませんが、もし応援していただけるのでしたら、下にある評価を入れて頂けると本当にありがたいです。


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