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110 魔法の装備は素材が大事


「魔法の武器や防具って、魔道具だったんだ」


 この本に書かれている内容を読んで、僕が最初に思ったのはこれ。


 と言うのも、僕はてっきり魔法の武器や防具はそれぞれ専門の職人が作るものだと思ってたからなんだ。


 ドラゴン&マジック・オンラインには僕が習得しているような魔道具職人とは別に、武器鍛冶職人とか防具鍛冶職人みたいな、それぞれ作るものによって幾つかの一般職があったんだよね。


 で、ゲームの時はその人たちが作ったものには全部何かしらの魔法が込められてたから、この世界でもその一般職についている人たちが作ったら入れたいって思ってる魔法がその装備に篭るんだろうなぁなんて漠然と考えてたんだけど、この本を読むとどうやらそうじゃないみたいなんだ。


「そっか。この世界では材料によって魔法の道具にできるかどうかが決まるんだね」


 魔道コンロや魔道冷蔵庫なんかと違って、魔法を込めて作る魔道具は必ず魔石を使うわけじゃないみたいなんだ。


 じゃあ何を使うのかって言うと、それは特殊な金属や魔物から取れる素材なんだって。


 例えば金属で言うと、青銅や鉄だけで作ってもその武器や防具に魔力を込める事はできない。これはこの二つの金属が殆ど魔力と馴染まないかららしいんだ。


 逆に一般的に知られている金属で魔力と相性がいいのは金とか銀で、この二つの金属なら魔石をつけただけで魔法を付与する事ができる。


 でも金や銀はそんなに丈夫じゃないから武器や防具に向かないよね? ではどうするのかと言うと、例えば剣なら予め魔法を込めた状態のものを用意して、それを剣の芯にして鋼で作れば魔法の剣が出来上がるそうなんだ。


 ただ、これだと魔力の供給源として魔石が必要だし、一定の時間や回数魔法を使ってしまうとその魔石の魔力もなくなってしまうから、その度魔法が使える人に魔力を込め直してもらわないといけないんだって。


 そりゃそうだよね。武器や防具に魔道リキッドを入れる場所なんて作れないし、魔道回路図を書いても、そこに傷がついたら途切れちゃって魔力が供給できなくなるもん。


 じゃあどうしたらいいかって言うと、魔力を周りから吸収する素材で武器や防具を作ればいいそうなんだって。


「へぇ~ミスリルやオリハルコンって、空気中から魔力を吸収するんだ」


 この二つだけじゃなく魔法の金属で有名な物はみんな魔石と同じように魔力を溜める事ができるそうで、その上周りにある魔力を吸収する性質があるらしい。


 だからそれを材料にすれば魔力の供給源である魔石もいらないし、戦闘で込められた魔力を使い切ってしまったとしても、ある一定時間経てばまた魔法が使えるようになるんだって。


 それにミスリルやオリハルコンは鋼よりずっと丈夫な上にとっても軽いから何もしなくってもそれその物が鉄を使った物よりずっと良い物になるし、おまけに芯だけじゃなく全体に魔力を込めることができるから物凄く強力な魔法が掛かった武器や防具を作る事ができるらしい。


 ただ魔法の金属は物凄く高い上にそんなに取れないから、ミスリルやオリハルコンだけで作られた武器や防具はあんまり無いらしいんだけどね。



「ミスリルとかオリハルコンは無理だから、僕が作るとしたらやっぱりこの二つのどっちかかなぁ」


 と言う訳で、そんな希少でとっても値段の高い魔法の金属を使った武器や防具なんか、この世界でも英雄と言われるような人たちくらいしか持ってないよね? じゃあ、みんな魔法の装備は持って無いのかって言うとそうでもないらしい。


 では普通の冒険者が使っている魔法が込められた道具は何で出来てるのかって言うと、それは魔物から取れる素材なんだ。


 魔物って魔力溜まりのような強い魔力があるところで変質した動物だから、その皮や骨も当然強い魔力を含んでるんだよね。だからそんな魔物の素材を使う事で魔法を込める事ができるらしいんだ。


 後ね、クモや芋虫の魔物みたいなのが吐く糸とか、木の魔物や魔素溜りに近い場所に生えてる植物から取れる繊維とかも織って布にすれば魔道具にできるんだって。


 あとその他にも強い魔物の血で布を染めたり、翼がある魔物の翼膜や羽とかも結構いろんな魔道具に使われてるそうなんだ。


 ん? って事はブレードスワローも高く売れるって言ってたから、もしかしてその羽根も貴族様が魔道具にしてるのかなぁ?



 さて、この本によると強い魔物から取れた皮や骨を使って武器や防具を作れば、魔法金属ほどでは無いけど周りの魔力を吸収してくれるから軽い防御力アップとか耐性アップの魔法を込めた物なら作れるらしい。


 そしてもうひとつ、魔物から取れる素材で忘れちゃいけないのが魔石だ。


 魔石そのものが物凄く優秀な魔力を蓄積する道具になるんだから、魔石に魔法陣を刻むとそれだけで魔道具になるんだって。


 そしてこの魔石を使った魔法が込められた魔道具、実は僕も持ってるんだよね。


「そっか。そう言えば巻きつけるだけで狩った獲物を軽くするって事は、あのひもの魔道具には重さ軽減の魔法が込められてるって事だもんね」


 そう、イーノックカウでお父さんが買ったタリスマンみたいなのが付いているひもの魔道具は、この本にも代表的な魔法が込められている魔道具として紹介されてるんだ。


 因みにあの魔道具を見た時に僕はタリスマンのような物がついてるって思ったけど、どうやら魔法を込めた魔石は本当にタリスマンって言うらしい。


 これは武器や防具と違って刻まれている魔法陣によっては魔法を常に発動させておく事ができるから、持っているだけで状態異常の耐性を上げたりステータスをほんの少し上げたりする、お守りのような使い方ができるからなんだって。


 そっか。魔法の呪文だけじゃなく、こう言う所でも前世の言葉を使ってるんだね。



 後ね、タリスマンは魔石だけじゃなく、ダイヤモンドやルビーのような一部の天然石でも作る事が出来るんだって。


 実は宝石も地中で長い時間をかけて出来るものだから金や銀と同様に強力な魔力に耐えられる物質らしくて、その上魔物から取れる魔石と違って生物的な魔力が篭ってないから魔石よりも上質なタリスマンを作る事が出来るんだってさ。


 ただ宝石は魔石なんかよりもっとず~っと値段が高いから、僕たちが宝石のタリスマンを使う事は無いと思う。


 だってこの本にも、タリスマンに出来るダイヤモンドは、小さな物でも一粒で帝都の中央エリアにある家一軒よりも高いって書いてあるもん。


 そんな高いの、買えるわけ無いもんね。



 ところで、このタリスマンの項目を読んでいて、僕はある事に気が付いたんだ。


「そっか。ジャンプの印をつけるために用意する魔石って、あれもタリスマンの一種なんだね」


 そう、どうやらタリスマンの作り方は、あの魔石の作り方によく似てるんだ。


 属性魔石を作るのには魔力の流れを覚えて、その魔力を注入するよね? それに対してタリスマンは魔法その物を魔法陣にして魔石に刻み込むんだけど、この場合予め魔法に対応した魔法陣を用意しておいてそれを見ながら魔法を刻む方法と、魔法を頭の中で魔法陣を構築しながら、それを魔石に刻み込むと言う方法があるそうな。


 この場合、当然用意した魔法陣を刻む方が簡単だし一般的らしいんだけど、この方法って僕がジャンプの魔石を作る時とまったく同じだよね?


 そっか。僕、知らない間にタリスマンを作ってたんだ。


 因みに魔法陣だけど、よく魔道具に使われる物は魔法ギルドに行けば買うことができるらしいし、ギルドに無いものでも魔法陣を書くための勉強ができる本が売ってるらしいから、欲しかったらそれを読んで勉強しなさいだって。


 とりあえず今度イーノックカウに行ったら魔法ギルドに行かなくちゃいけないなぁ。


 あっ、でも次は多分ジャンプで行くだろうから一人だし、行けないかも。ロルフさんに言えば連れてって貰えるかなぁ?


 ホント、この本。もっと前にちゃんと読んでおくんだった。


 魔法ギルドに行かないといけないって解ってたら、この間行った時にお父さんに連れてってもらったのに。


 今更言っても、もう遅いんだけどね。


 読んで頂いてありがとうございます。


 実はこの世界では魔力を込める事が出来る金属を人工的に作る技術もあって、魔石を砕いて鉄に混ぜるとかミスリルの粉を鉄に混ぜるとかがこれにあたります。


 あと魔法陣を教える専門の学校があって、そこの卒業生たちの手によって魔法ギルドで新たに発見された魔法が日々魔法陣化されていたりします。


 因みにタリスマンだけじゃなく、魔物の皮を使った魔皮紙に魔法陣を刻んだ使い捨てスクロールも彼らの手によって作られ、魔法ギルドで売られています。


 まぁ、これらの情報に関しては裏設定のような物で、本編には出てこないんですけどね。


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