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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
6章:羊皮紙の長旅に天風は吹き抜ける
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ルシェの叫び声は…

*我々はどうやら無事、次の約束を得た*

 ルシェの叫び声は少なくとも隣のシャーノを飛び退かせたし、階段を調べていたルフォロも驚いて、天井で頭を打った。ルシェは咄嗟にシャーノの腕を引っ掴んで後ずさり、二人はそのまま足をもつれさせて転んだ。


「どうした!」


 ルフォロが叫んで、楼台をこちらに向けた。二人は先程まで立っていたところを凝視する。ルフォロが調べている明かりを見ていたせいで、暗がりに目が慣れなかった。それでも、そこに何かが居るのは十分に解った。深緑の光が2つ、二人を覗いていたのだ。


 それはゆっくりと近づいてくる。


 二人は尻もちをついたまま、ルフォロの方へと後ずさった。


 そうして目が慣れて、ぼんやりとその姿が浮かんでくると、3人は肩で大きく息を吸った。ニャーという一声が、その息を吐き出させる。


「ああ…」ルシェは吸った息を吐いた。「ソリューか…びっくりした」


 あぐらをかいてルシェは座り直した。ソリューは黒ぶちの体毛をその膝にこすりつけて、尻尾で撫でる。


「ネコか」ルフォロも頭をさすりながら、安堵の溜息を着いた。「良かった…こんなところだし、何が出ても不思議じゃない」


「ルシェ、痛い、離して」シャーノが言った。


「あ、ごめん」掴みっぱなしだった腕を離し、ルシェは謝った。「びっくりした…本当に」


 通ってくるとき、隠し扉を開けっ放しにしてきたのを思い出した。あの部屋にいた猫たちを連れてこようとしたが、全く動かながったのだ。


 よく見ると、ソリューのひげ先が丸く弧を描いていた。全体的に毛先がパサパサしていて、毛の焼けた臭がする。先程は見かけなかったから、どうやら火中の廊下を通ってきたらしい。ルシェは鼻先からおでこ、耳、首と順番に撫で、最後に抱き上げてあぐらの中に下ろした。シャーノも頭を撫でる。ふと顔を上げれば、あの場にいた猫たちが集合していた。シャーノが立ち上がって、一匹ずつ、怪我がないかを確かめていく。


 ルフォロはそれを眺め、鼻で深呼吸をした。楼台を足元において、二人がいる部屋を照らす。光を背に階段の方を向き、自分がぶつけた天井を確かめると、淡い光が一筋走っているのが見えた。



 3人が思っていたよりも簡単に、天井は開いた。思い切り持ち上げると、蓋になっていた岩がごっそり抜け、背中側へと斜めに上がり、ギュウ、と雪を潰す音とともに止まった。


 そしてあまりの眩しさに3人は薄目を開けながらキョロキョロとあたりを見回した。ちょっとした広場のような空間だった。一定の間隔で小さな雪の山が幾つか、広場に作られている。そして長い木々がたっぷりと雪を背負って、静かに佇んで広場を囲んでいた。


 やっと目が慣れると、その広場に見覚えのある人物が立っているのがわかった。3人の足元をすり抜けて、猫たちが次々と外へ出ると、その人物の足元へと集まっていった。

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