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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
6章:羊皮紙の長旅に天風は吹き抜ける
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火の粉が舞い込み…

*我々はじっくりと周囲を観察した。勇敢なものは外へ出ることができたし、残りの者と私は後を追うだろう*

 火の粉が舞い込み、ルフォロとシャーノは扉を閉め、顔を見合わせた。どうやら、廊下側は出れないということらしい。


 ルシェはぐるりとあたりを見回した。先日のうちに移動された棚が、火元になっている広間側から遠く離れていて、壁から染みている煙が掠らない位置にある。滲みでた煙は再び広間の方へと吸い込まれていた。それでもあふれた煙は天窓の近くまで届き、仄暗い部屋をさらに暗くしている。


「参ったな」ルフォロが困ったように首を傾げて、言った。シャーノもその後ろに付いて、戻ってくる。「扉を壊せても、火の中は通れない。他に道は?」


「ここは、あそこからしか」ルシェは扉を指差して答えた。「天窓は高くて、通れないし…あ、棚を積んだら、行けるかな」


「えっと、ごめん、この前閉じちゃったから」シャーノが言った。


「閉じた?」ルシェは尋ねる。


「うん。ペトラさんに言われて、小さい板で…、雪で割れないように、補強したんだ」


 それで薄暗かったのかと、ルシェは納得した。去年は雪の下にまで、拡散した夕日が入り込んでいたのだ。


「それじゃあ、割って出る?」


「うーん、危ないけど、火に巻かれるよりはいいよね」


 話を聞いていたルフォロが、作業机のすぐ傍にあった棚に向かった。シャーノとルシェも後に続く。


「重いなぁ…中身を出さないと」と、そこまで言って、ルフォロはピタリと止まった。そのままキョロキョロと首を傾げて、つぶやく。「隙間風か」


「もしかして」シャーノはしゃがみ込んだ。地面の石畳を触りながら、少しずつ進んでいく。そのまま、作業机の近くまで来ると、振り向いた。


「ここの、木の床…やっぱり、下があるかもしれない!」


 ルシェが近づくと、確かに空気が流れ込んできているようだった。長い髪の毛先が少しなびいて、その存在を主張する。だんだんと部屋全体が暑くなってきていたが、その空気はとても冷たかった。



 作業机を退かすのに、少し手間がかかった。緊急時とはいえ、未だ何に使うかを知らない器具や、詰められた小瓶が多く乗っていた。結局まとめて棚に入れておいたが、調合室まで燃えないとも限らない。床にぶちまけても良かっただろうかと、ルシェは首を傾げた。


 その道は、シャーノやルシェにピッタリの高さだった。シャーノが前を歩き、ルフォロは少しかがんで、後を付いてくる。冷たい風が正面から吹き付けるので、真ん中のルシェが灯火を持つことになった。


 ゴツゴツとした岩肌を撫でていると、それが急に無くなった。頑丈そうな木が空間を支え、時折、明かりの薪を入れる鉄カゴが壁から生えていた。

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