表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ化決定 現在準備中】明治に転生した令和の歴史学者は専門知識を活かして歴史を作り直します  作者: 織田雪村


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/200

【外伝】東部戦線構築

1940年(昭和15年)5月11日


Side :近衛文麿 


於:ウラジオストク北方 ウスリースク市近郊 ロシア


とうとう戦争が始まってしまいました。

既に海軍に対してはヨーロッパへの参戦計画を発動済みで、これからは新兵器や兵員の遅滞ない輸送がカギとなるでしょう。


一方の対ソ連戦線。

今後は東部戦線と呼称しますが、この方面でも間もなく戦いが始まるでしょう。

よって今回は最終打ち合わせと、前線の状況把握のためにロシアを訪問しています。


それにしても…航空機の発達というものには毎度ながら驚かされますね。

東京からウラジオストクまでは距離が1000kmほど離れていますが、昔は船を利用して行き来するしか手段が無く、どんなに急いでも2日近くを要していました。


それが現在では航空機を利用すれば2時間程度で到着できるのです。

これは素晴らしいことですね。

当然ながらお互いの行き来が活発になるにつれ、ソ連に対するお互いの意見交換も集約されましたから、具体的な戦略・戦術といったものに纏まりつつあります。


そして最も重要な点が人事交流であり、意思の統一ですね。

今後は共に戦うのですからこれは当然でしょう。


「初めまして。小官は大日本帝国軍にて統合作戦本部長を勤めます近衛文麿大将と申します」


「私はロシア立憲君主国にて陸軍西方方面軍司令官に任命されましたミハイル・トハチェフスキー元帥です。

以後お見知りおきをいただければ光栄です」


若い!

ソビエトでも陸軍元帥に叙されていたのは事実ですから、もっと年配の人物を想像していたのですが、今年49歳となる私よりも若いのでは?


「失礼ですが年齢はおいくつであられますか?」


「はい。47歳となりました。こちらのジューコフ中将は44歳です」


何となんと。やはり私より年下ではありませんか!?

この若さで「赤いナポレオン」の異名を奉られるほどの戦術家なのですから、兄上が彦麿に対して引き抜くように直接指名するだけの事はありますね。

更にジューコフ将軍も極めて優秀らしいです。

それはともかくとして…


「トハチェフスキー元帥はソビエト軍の実力をどのように考えておられますかな?」


「日露両国によるウクライナ救出作戦時と比較しても、近年は機械化師団の構築と、航空戦力の拡充を主に推進していますから侮ることは出来ません。

それと…なんと申しましても彼らの強みは人海戦術であり、人命を重視しない作戦を採用されると非常に厄介です」


やはり彼らも私たちと同じ見立てなのでしょう。

ですが、人命を軽視するなど本当にどうしようもない敵ですね。

兄上の作戦を共有しておきましょう。


「それに関しましては、我が国の首相より作戦案が提示されておりますので参考にしてください」


「それはどのような内容でしょうか?」


「はい。敵が圧倒的な人海戦術によって攻め寄せた場合、我らがそれに対して陸上部隊で対応するのは悪手であり、相手の思うツボにはまる原因となりかねません。

もちろん相手より優秀な機械化部隊は必須でしょうが、それにばかり頼ると長期戦において不利となってしまうでしょう。

よって、我々は相手の得意戦術に対して正面から対応するのでは無く、(からめ)め手から攻めるべきと考えます」


「…具体的にはどのような戦術をお考えなのでしょうか?」


ちょうど紹介するにはいいタイミングですね。


「大型爆撃機による空爆作戦です。

本日私が乗って来た機体がそれなのですが…こちらへ移動願います」


そうです。一式重爆撃機「朱雀」と命名されるでありましょう機体と、制式採用された三菱「零式」戦闘機、中島「零式」攻撃機をお披露目したのです。

トハチェフスキー、ジューコフのお二人も「朱雀」の大きさに驚いているみたいです。


「この『朱雀』は航続距離が4000kmに及びますから、クラスノヤルスクを拠点にすればウラル山脈東方のエカチェリンブルクまでは往復可能でしょう。

そして今日は間に合いませんでしたが、同程度の航続距離を持つ護衛の夜間戦闘機を開発中です。

つまり、クラスノヤルスクからウラルまではソビエトの戦車や軍団、補給拠点を爆撃で吹き飛ばしつつ、こちらは確実に補給拠点と飛行場を確保しながら前進するのです。

これであれば、地上兵力において人数で劣るわが軍にも勝機が見出せるでしょう」


「シベリア鉄道を使用した兵站線に沿って西へ進むわけですか。確かにそうですね。それなら勝てそうだ…」


堅実な作戦だと私も思いますね。

あとはあの問題ですか…この機会に解消したいです。


「ですが、まだ懸念事項が残っています」


「それは何でしょう?」


「指揮命令系統の統一問題です。

我々は日露軍を中心として、東パレスチナや我が国の影響力の強い国家群の兵士も参戦するでしょうから、指揮命令系統が一本化されていないと、思わぬ大敗を喫する恐れがあります。

何といっても少なくとも敵方はそこが統一されているのですから」


「それであれば問題ありません。

兵員数における主力は我がロシアですが、兵器は日本製が殆どですから、指揮官も日本人でよろしいのではないでしょうか?」


そういう考え方もありますがね…

しかし彦麿はこの人に指揮をとってほしそうでしたが。


「私の弟でもある貴国の首相は、ソビエト侵攻部隊の全指揮権を貴官に(さず)けると明言されたと聞きましたから、我が国もその方針に従うのは問題ありませんし、我が国の首相も認めています。

我らとしましては、これら新兵器を存分に活用いただいて勝利を収めて下されば満足なのです」


「…貴方たち御兄弟はおっしゃる内容がそっくりですね。

ですが、ここは貴国の陸軍軍人を最高指揮官とするのが相応しいと思います。

我らは微力を尽くし、期待に応えるよう努力します!」


これで良かったのでしょうか?

兄上はこの人物を全面的に信じているみたいでしたから、私もそれで良いと思っていましたが。

ですが、本人がそう言うのであれば日本人を司令官に任命しましょう。


それよりも気になるのが兵力です。


「わかりました。

それであれば日本陸軍から適任者を選びます。

ところで…敵の兵員数ですが、これはどの程度を見込んでおられますか?」


「はい。ソビエトの最大動員可能兵力は1300万人を想定すべきで、我らが西へ進軍すればするほど敵の兵力は増えていくでしょう。

現状でも700万人程度は即時投入が可能とみるべきで、特にウラル山脈を越える前後からは激しい戦いが予想されます」


1300万人ですか…予想はしていましたが、やはり動員能力が高いですね。


「一方で東部戦線に投入可能な我らの動員数は、最大でも400万人程度でしょうか?」


「はい。我がロシアが200万人、東パレスチナが50万人。そして日本軍が100万人ですか。

そこへ台湾軍が30万人。オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンや南太平洋諸島などを含め合計20万人程度が当面の兵力でしょう」


台湾やフィリピンね。

暖かい地域の兵士は極寒のシベリアに投入するのは負担が大きそうですから、後方支援が主な任務となるでしょうね。

そうなると正面兵力が350万人ですか。

そう考えていたのですが、トハチェフスキー元帥が笑顔で続けました。


「ここで朗報があります。

我がロシア国内において騒動が発生しています。

騒動と言いましても悪い意味ではありません。

ウクライナからの移住者を中心に志願兵が殺到している状態で、ロシアにおいては徴兵などする必要すらない状態となっているのです。

これはソ連に対する復讐をしたいからに他ならないわけで、驚いたことに志願者の中には老人、子供、果ては女性も多く含まれており、志願者総数ではロシア在住ウクライナ人の6割に達します」


「えっ!?…確かウクライナから救出した人数は1000万人程度でしたよね?

それの6割にも及ぶのですか!?」


600万人?しかも自発的に軍に加わりたいという人々ですから、当然ですが士気も高いでしょう。


「そうなんです。

とは言っても600万人の希望者を全員兵士にしてしまいますと、ロシアの産業にも影響するでしょうから、実際に兵士として採用するのは最大でも100万人程度を想定しています。

残った女性や子供に老人たちについては、生産活動や捕虜収容所の建設、後方支援に回ってもらう予定です」


凄い話ですね!こんなの聞いた事がありません。

さらに元帥が続けました。


「実を申しますと、東パレスチナの兵も同様に士気が極めて高く、こちらでも徴兵事務所に従軍希望者が殺到しており、とても捌き切れない状態との話です。

こちらはソ連の延長線にあるドイツに対しての感情が大きいのでしょう」


何という事でしょうか。

まさに「情けは人の為ならず」で、狙ったわけでは無いでしょうが結果として日本の国益に役立ったというわけですか。

もしかすると、これも兄上の深謀遠慮の結果かもしれませんね。



最終的な人事関連では、トハチェフスキー元帥やジューコフ中将と共に作戦指揮を執る日本側の指揮官、そして東部戦線の最高指揮官は、勇猛果敢な攻撃で知られる山下泰文大将を任命しました。


他にもヨーロッパ方面を担当する部隊は、今村均大将や栗林忠道中将、牛島中将をあてています。


これまでの我が国の軍隊は年功序列であり、陸軍士官学校や海軍兵学校の卒業年度や成績順による任免制度が幅を利かしていましたが、数年前からはそれらを考慮しない適材適所の人事配置を採用しています。

本人の適性を判断するのはとても難しいのですが、これを推進させねば戦争に勝利出来ませんので、序列は考慮しておりません。

攻撃に強い人、守勢において本領を発揮出来そうな人をバランス良く配置しております。


そんな中で、海軍では南雲忠一中将の扱いに苦労しました。

私は空母機動部隊の指揮官に任命しようとしたのですが、兄上が珍しく強硬に反対したのです。


『彼に航空戦を任せるのは負担が大きいだろうから、後方における業務を任せよう。

そうだな…例のアインシュタイン博士たちが行っている研究の軍側窓口としたらどうだい?』


そうおっしゃるので、その通りにしました。

なぜ南雲中将では空母指揮官がダメなのかは判然としませんが、代わりに名前が挙がったのが山口多聞少将という人物です。


「これから発生する航空戦は、指揮官の一瞬の判断の遅れや躊躇が命取りになる厳しい世界となるだろう。

それに対応するには、勇猛果敢な猛将型の人材が最も相応しいから、まさに彼は適任だ」


そのように明言されました。


確かに彼は最近まで空母の艦長職にあった人物で、能力を認められて将官へ昇格したのですが、私でも少ししか面識が無いのに、兄上はどこでこの人を知ったのでしょうか?


まあこんなことはよくある事なので、気にしないでおきましょう。


そんな具合で前線指揮官人事は固まりました。


さらに陸軍では主力戦車である「九八式戦車」と、砲兵支援用の「九八式突撃砲」、歩兵随伴用の「九八式駆逐戦車」と「九七式機動車」、兵站にも使用予定の「九七式兵員輸送車」などの正面装備や補助装備を使用した共同訓練を開始しておりますから、準備は着実に出来つつあると表現出来ますね。



Side:ヨシフ・スターリン


トハチェフスキーやジューコフといった裏切り者の多くは、どうやらロシアにおるらしいな。

最近の情報では、臆面もなくロシア軍の指揮官にまつりあげられたらしい。


構わん!

あの男自身が編み出した必勝の作戦、縦深攻撃と無停止進撃を行い、日露軍に開けた突破口を確実に拡げ、無慈悲な進軍で殲滅してやる!


当面の決戦の地はウラル山脈東方だな。

どんな国の軍隊でも陸上戦闘においては補給線の確保が最大の課題だが、お前たちは前進すればする程、本拠地から遠くなるのだから急速に負荷が掛かるのだ。

それに気付いた頃は手遅れだろうが、それまではぬか喜びしながらやってくるがいいだろう。

要するに指揮官が誰であろうが、結果は同じなのだから関係ないのだ!


そして…その勢いのままロシアを占領してくれよう。

赤い津波で皆殺しにしてやるのだ!


「ブジョーンヌイ元帥。

日露軍がのこのことやってくるが、奴らの補給線に更に過大な負荷を掛ける方法を考えよ」


「同志書記長。それであれば国内の不穏分子や刑法犯、政治犯などをまとめて最前線に送り、督戦部隊で追い立てて故意に捕虜になるよう仕向けてはいかがでしょう?」


「…なるほどな。国内の厄介払いをすると同時に、敵の食糧や燃料の供給に対する負荷を更に掛けるか。

良かろう。それで作戦を組み立てるように」


「はい。分かりました同志書記長」


これで奴らを慌てさせてやろうではないか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ