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114:自由人との再会③


 情報を集めると、どうにもこの街の代官の評判は良くない。


 数年前に代官に就いた男の名をザハクというが、コイツは自分の懐を痛めるのを極端に嫌うらしく、まともに街道の防衛すらしていない。

 その為、街の商人達が金を出し合って街道の整備を進めている程だ。

 それでも、ダニクス候の内乱という緊急事態って事もあって、

『いつ国境に増援が必要となるか分からない以上、主力を無闇には動かせない』

 と言われれば、本格的な抗議も最後は尻すぼみになってしまう。


 そのために街の中でも意見がふたつに分かれてしまっているそうだ。




「まあ、ふたつに別れてるって言っても、大多数は代官の首がすげ変わるのを願ってるんだけどな」

 翌日、宿を訪ねてくれたハルミさんから、ようやく代官の事について話を聞く事が出来た。

 自然と俺が質問して、ハルミさんがそれにひとつひとつ答えるって形で会話は進んでいく。


「じゃあ、残る少数の住民が今の代官を望んでるのは、どうして?」


「おいおい、まさか言わんと分からんとも思えんが?」


「いや、念の為だよ。でも、要はその一部が代官と繋がって甘い汁を吸ってる連中って訳だろ?」


「ああ、特に大きな利益は、東の領境にあるベルン要塞への補給品に係わる取引だな」


「軍の消耗品ってのは安い方が良いんじゃないの?」


「金を出すのが伯爵ならそうなんだろうさ。だが、実際は代官が増税でまかなってる

 帳簿上は代官から上納される税に変化は無いんだろうな」


「あ~、結局は庶民が割を食ってるって訳ね」


「後は、一般の商人に保護税って奴までふっかけて来やがったんだが、こいつがまた質が悪い!」


「どんな風に?」


「確かに主街道の安全は守る、と約束はしてる」


「なら……」


「けどな、それ以外は完全に無視なんだよ。主街道が安全なのは当たり前だ。

 あちこちに魔石で結界が成されてる上に、町会だって金を出し合ってパトロールは出してるんだからな。

 だがな、旅には水が必要だ。そこで飲料水の確保を考えて少しでも街道から外れると、ヤバイ」


「街道でもそんなに危険なの?」


「五年前ならどうってことは無かったんだが、俺が駆け出しの頃あたりから魔獣が出て来る確率がやけに高まって来たんだよ。

 お陰でキャラバンは水の確保に難儀して、護衛無しじゃあ大規模な輸送が難しくなってきた。

 で、一番の問題はそこでな。

 保護税では、そう云う護衛に掛かる費用の負担が一切無視されてるんだよ!」


「一部の大商人は領主と繋がって秘密の内に大幅な税の免除を受ける代わりに、彼自身に個人的な付け届けをしている可能性が高いって、か……」


「正解! でもな、その証拠が掴めん。

 あるにせよ、よっぽどのモノでも無い限り、シラを切られるだけでお終いだろうなぁ」


 大きく溜息を吐くハルミさん。

 その姿に俺もどうしたモノかと悩む。

 と、その時、


【ならば、そいつに白状させればいいではないか?】


 いきなり、レヴァの野郎が現れた。


 おい、脅かすなよ。


【ふむ、何やら面白そうな話だったのでつい割り込んでしまったわ】


 まあ、それは良いけど、でもどうやって白状させるんだよ?


【お主、官憲の前や大勢の証人が居る前で自分の悪事を吹聴する人間が居ると思うか?】


 いるわきゃねーだろ! そんな奴なら誰も困りゃしねーんだよ!


【なら、どの様な時なら、そいつが自分の悪事を口にすると思う?】


 そう訊かれて考え込んだ俺だけど、答が出るのにそんなに時間は掛からなかった。


 例えば、の話だけど、そいつに敵対する奴と問題の件に関わる事で争ったりして、完全に相手を殺せるって決まった瞬間なら、もしかして喋る事もあるんじゃないかな?


【何故、そう思う?】


 死んでいく相手に絶望を与えたい、ってところかなぁ


【そこまで分かっているなら、もう問題はあるまい】


 罠を仕掛けろ、って事か?


【いかにも!】


 でも、そんな都合良く喋るかねぇ?

 それに上手く官憲を引きずり込んだって、結局はそいつらだって領主の手下じゃん?


【なら、そいつ以上の権力者を味方に付けるか、街の住人の大多数を証人として引きずり込むことだな。

 それこそ言い逃れも出来ぬほど明確に、な】


 とは言っても、そんな状況、簡単には作れっこないと思うよ。

 

【いや、一度で良い。奴らに有利な状況を創り上げ、自白させる事が出来れば良いのよ

 場所も時間も関係ないわ】


「?」


【我の炎で違う場所を見聞きした事を覚えているか?】


 あっ、ああ……、それがどうしたんだよ?


【あれを上手く使えばよかろう】


 どう使うって?


【おお、そうか! お主にはまだ話していなかったな】


 そこからのレヴァの言葉を聞いた俺は、“こいつ意外と使える”と、久々に感心してしまった。






すいませんが次回までは、また一週間ほど時間を頂きます。

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