113:自由人との再会①
ようやっとシーアンまで辿り着いたのは良いんだけど……。
『この街を私たちだけで落とす必要があります』
ってルルイエに言われて、
「ねぇ……、頭、大丈夫?!」
マジで、そう言いかけた。
でも、侯爵としては、最初にこれくらいやってもらわないとルルイエを信用出来ないって言うんだって。
まあ、確かに侯爵の立場だけを決定的に悪くして、後はルルイエが逃げ出す事だって有り得る訳だから、試されるのは当然だ。
でもね~。
いくら何でも……。これ、ちょっと荷が重すぎるよ。
そりゃ、元の世界と比べれば小さい街の部類だって言ったって、人口が六千に迫るシーアンは、この世界では大都市だ。
そうそう簡単に落とせるはずも無い。
「外からなら、そうだろうな」
ピートはシーアンの城壁を見上げて言う。
中世の城は城壁の防御力が格段に高い。
山上の城ともなると五十人くらいの僅かな数でも、千を超える軍を相手にひと月単位の防衛戦ができたそうだ。
シーアンは平野部の城だけど、それでも城壁は二十メートルを超える。
厚みだってそれに見合った見事な造りだって事は城門を潜った時に分かった。
あれじゃあ、多分だけど地球の榴弾砲だって簡単に破壊出来るものじゃないと思う。
つまり、例え竜甲を大量に揃えたって、そう簡単に落ちない事は確かだ。
いや、何よりベルン要塞がある以上、竜甲を積んだ荷車が簡単に街道を進む事は出来ない。
竜甲って奴は、俺が思った程には長時間の装着は出来ないんだそうだ。
頑張っても四時間も装着出来れば上出来で、決着を付けるポイントで一気に運用する兵器らしい。
つまり、常時着用してベルン要塞からの追撃に備えるなんて事は無理だ。
けど、ここシーアンが落ちればベルン要塞と同時に南部のノーザ、スーザも一気に制圧できる。
マイエル伯爵領の東半分は確実にダニクス侯の手に入るって訳だ。
「ダニクス候からスーザを守るための旅だった筈なのに、どうしてこうなった?」
「いや、あたし達、名目上でもあんたの奴隷なんだから、行動に決定権なんか無いし……」
「おとーさんに会わせてくれる約束を守ってくれるなら、後はリョーヘイが好きにすれば良いのです」
「御主人様の仰せの侭に」
三者三様に言葉を返すけど、俺としちゃあ、そんなに簡単に自分達の今後を決めさせられても困るんだ。
「あのね! 三人とも暢気すぎるよ!」
少しは戸惑って欲しいって思ったんだけど……。
「でも、決めたのはリョーヘイでしょ?」
やっぱり、ローラの一言には返す言葉も無かった。
おれが侯爵に、と言うよりルルイエに付くのを決めた理由はふたつ。
ひとつは、この問題を解決すれば人々からの多少の感謝が俺にもたらされるんじゃないかっていう下心だ。
死んだ後の『煉獄行き』はまっぴらゴメンだ。
もちろん敵対する相手には恨まれるかもしれないけど、前世の俺や洞窟にいた人物みたいに『居ても居なくても同じ』ってのだけは避けたい。
無限の空白だった、あの煉獄。
あそこに行くぐらいなら、時間が過ぎれば転生できる可能性のある『地獄』の方がずっとマシだと思う。
後は、やっぱりローラとメリッサちゃん、それにリアムの故郷を守りたいって事だ。
俺が死んじゃった後、彼女達が帰る街が無事であって欲しい。
つまり、今後のスーザが支配者にとって手を出す必要も無い「静かで平和な街」になって欲しかった。
でも、そんな理由でルルイエ、いや侯爵に味方するって言っても信用される筈は無い。
だから、あえて望みを現実的な話にした。
「最終的にこの内戦に勝ったら、ノーザ、スーザからタタンまでの土地を領地として貰い受けたい」ってね。
こういった世界で欲がない奴なんてのは、端から見れば『何考えてるか分からない不気味な奴』になるだけだ。
だから俺が欲をきちんと見せて報酬を求めた事で、侯爵もルルイエも『これは人間としての行動だ』と納得してくれると思ったし、実際そうなった。
まずまずの滑り出しだと思う。
それに言ってから気付いたんだけど、実利って奴は思った以上にやる気を与えてくれるものの様だ。
こうなりゃ必ず勝たなくっちゃね、と気合いが入る。
でもね、それでもやっぱりルルイエの話は無理がありすぎるんだよなぁ……。
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街に入って、ピート達と一旦は分かれる。
万が一にもルルイエを知って居る人間に会った時、俺たちのことまで詮索されたくなかったからだ。
そうしてます俺とローラ、リアム、メリッサちゃんの四人は自由人ギルドに向かう。
この世界の『自由人』ってのは、ラノベで言う『冒険者』の事だ。
何だかんだ云って、結構楽しみだったりして、へへっ!
石造りの大きな四階建ての建物。
開け放しになった入り口を通り、中に入る。
一階全体が、デカイ酒場みたいになってて、どのテーブルにも、いかにも冒険者って感じの人たちが集まって何やら相談したり、酒をあおったりしている。
奥と右端の方にはカウンター。
奥の方が飲食用で、右側が業務用って感じだね。
なら、右側かな?
「いらっしゃい。お客さんかな? それとも、もしかして登録?」
栗色の髪とオレンジの瞳。
如中世のヨーロッパで付けられてたディアンドルの様な服装が眩しい巨乳のお姉さんが話しかけてくる。
何だか、見た目と話し言葉が合わないけど、荒くれ者達を相手にしてると、こんな感じになっちゃうんだろうねぇ。
ラノベならここで登録して冒険者になるんだろうし、実際、俺も過去には、そんな事も考えてたけど今は違う。
捜す人物の名前を出した。
「う~ん、多分、『ご利用』って事になるのかな? ハルミさんに会いたいんですけど?」
「あら、御指名? でも、彼らのチームは高いわよ」
「いえ、そうじゃなくて、街に来たら会いに来るように言われてたんです。
場合によっては仕事の依頼もするかもしれませんけど……」
なんだ、単なる知り合いか、と気の抜けた様になる受付のお姉さん。
「今の時間帯なら、『幸運の牡鹿亭』に居るはずよ。
四チームの合同でデカイ仕事をかたづけたばかりだから、懐も温かいでしょうしね」
と、行きつけの食堂を教えてくれた。
「ねえ、なんであの自由人達に会いに行くの?
あたし達の身元を知ってる人間には、出来るだけ会わない方が良いと思うんだけど?」
ローラの疑問は当然だけど、ハルミさんには借りがある。
それに、これからこの街で暴れるとなると彼らと敵対する事になるのは確実だ。
負けるとは思わない。
いや、だからこそ、彼らにはしばらくこの街から離れて欲しい。
そう言うとローラは首を傾げる。
「あれっ? 自由人って今回の戦争について中立なんでしょ? 確か、スーザで防衛を引き受けてくれたドノヴァンさんは“そう”言ってたと思ったけど?」
「うん。確かにそう云う話だったんだけど、このシーアンに限っては違うらしいんだ」
「?」
「自由人ギルド西部地区の本部だから、この街の防衛戦については無条件で参加する事になるらしいね」
俺の言葉にローラの目付きが厳しくなる。
「じゃあ、余計に会いに行くのはマズイんじゃないの?」
「何で?」
「だって、これから敵になるのは確実よ」
リアムも当然だと頷いてローラに同意する。
でもね、敵になるかも知れないからこそ会う必要があるんだぜ。何と言っても相手の実力を知らなくっちゃね。
ご無沙汰致しております。
一応、新章突入(とは云っても、単章完結してる訳じゃないんですけどね)です。
未だ身体が本調子でないため3~4話続けては一週間ほどお休みをもらうペースになるかと思います。
もし、お見捨て無きようでしたら今後も宜しくお願いします。




