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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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捕縛という名の“保護”

……うう、頭が重い。

誠はゆっくりと瞼を開けようとした。だが、身体はまるで石のように動かない。手足を引こうとすると、バリッと荒縄が擦れる痛みが走った。


(う、え? 縛られてる……?)


恐る恐る目を開けると、そこは薄暗い倉庫のような小屋だった。木の壁、土の床、埃っぽい匂い。天井の梁には干された薬草の束がぶら下がっている。


「目を覚ましたか?」


低い、よく響く声がした。誠の視線の先にいたのは、人……いや、人“だけ”ではなかった。


誠の周囲にはざっと六名ほどが立っていた。

人族らしき青年、耳の尖った猫族の女性、灰色の毛並みの犬族の男、その奥には虎のような縞模様の獣人までいる。


(え、猫? 犬? 虎? いやいやいや……コスプレにしては完成度おかしいだろ!)


誠が心の中で盛大にツッコミを入れていると、最前列に立つ、腹の出た犬族の男が一歩踏み出してきた。体格はがっしりとしており、体毛は茶の混じる灰色、胴には簡素な革鎧をまとっている。


「さて……何者だ?」


その言葉には、明確な“選別の眼”があった。

返答次第では、誠の命など簡単に断ち切られる。そんな空気が肌に刺さる。


(やべぇ……これ完全に尋問だよな。どう返すのが正解なんだ?)


誠は頭をフル回転させる。下手に嘘をつくと即アウト。

しかし本当のことを言っても信じてもらえるはずがない。


(……よし、嘘八百じゃなく、都合の悪い部分をぼかして話す!)


誠はゆっくりと口を開いた。


「お、俺は……気がついたら森の中に倒れていて……。そこから彷徨って、助けを求めようとしたところを……その、あなた達に捕まったんだ。気付いたら、ここで縛られてて……」


犬族の男は腕を組んだまま聞いていたが、すぐ横に置かれた「誠の荷物」に目を向けた。


「ふむ……その割に、お前が持っていた“これ”は何だ?」


床には、誠の刀・財布・スマホが置かれていた。


「まず、この“刀”だが……。お前が握りしめていたらしい」


「……覚えてない。気付いたら持っていたんだ」


本当に覚えてないので、これは正直な返事だった。


次に犬族の男は財布を持ち上げる。革財布を分解するように開いた跡があり、どうやら中身を見られたようだ。


「これは金か? それに、この薄い板……“免許書”と書いてあるが、これは何だ? “住所”というものがあるが、この地名は聞いたことがない」


(あ、やっぱ文字読めるんだ……!)


誠は内心驚きつつも、とぼけるしかない。


「……確かに持っていたのは覚えてる。でも、何に使う物かは……思い出せないんだ」


猫族の女性がひそひそ声で言う。


「本当に記憶を失ってるのかしら?」


「いや、怪しいだろ」


「そもそも服装がおかしい。布なのか革なのかよくわからん……」


誠のジャージを指差して、獣人たちが警戒の視線を向ける。


(いや、ジャージにそんな突っ込まれても……)


次に犬族の男がスマホを持った。


「そして、これだ。何だ? 鏡にも見えるが……」


「そ、それも……わからない。気付いたら持ってて……」


誠の返答に、周囲の者たちは再びひそひそと声を潜めた。


「危険物では?」


「いや、魔力の反応はない」


「だが妙だ……」


犬族の男はしばらく誠の顔をじっと見つめ、やがて鼻で息を吐いた。


「……ふむ。話はだいたい聞いた」


数名が頷き、どうやら結論が出たようだった。


「お前を一時的に――“村で保護”する」


「……保護?」


誠が目を丸くすると、犬族の男は続けた。


「ただし条件がある。刀は預かる。危険だ」


そう言うと、背後の若い男が誠の縄を切った。手足が自由になると、血が一気に巡ってジンジンと痺れる。

誠は試しに、軽く挑発してみた。


「縄を解いたのはいいけど……俺が暴れたらどうするんだ?」


犬族の男は一瞬目を細め、次いで豪快に笑い声を上げた。


「ハハハ!お前の手を見れば分かる。刀だこもなければ、鍬を握った痕もない。綺麗な手だ。戦士でも農民でもねぇ」


「……」


「着てる物も変わってるしな。おそらく“異国の商人”か何か、だが……野盗か盗賊に捕まって逃げ出し、その拍子に頭でも打ったのだろう」


(……おお。そう解釈するのね!)


誠は心の中でガッツポーズした。“記憶喪失”扱いなら、当面は都合がよすぎる。


犬族の男は少し柔らかい声で言った。


「ここは小さな村だが、食わせるくらいはできる。しばらく休むといい。……そうだな、お前の名は?」


「まこと。誠だ」


「マコトか。俺はバラン。この村の自警団の頭だ」


バランと名乗った犬族が大きな手を差し出す。誠は戸惑いつつも、その手を握り返した。


(……助かったのか? 一応は?)


縄から解放された誠の手はまだ震えていたが、胸の奥にはかすかな安堵が芽生え始めていた。


だが――


この村がどんな場所なのか。

自分が本当にどこに来てしまったのか。

そして、この刀とスマホがどんな意味を持つのか。


誠の不安は、まだ何一つ解消されていないのだった。

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