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第63話 姉妹でライバル?

「シエルちゃんって、そうちゃんのこと好きなの?」


 ノエル姉の口から、電撃的な質問が飛び出した。


 それは俺が莉羅りらさんのマッサージを終え、静かに階段を上っている時だった。

 少しだけ開いたシエルの部屋から、何やら姉妹の会話が聞こえてきたのだ。


 とっさに俺は姿を隠した。階段の陰に。


 盗み聞きなんて趣味が悪いのは分かっている。

 でも、気になってしまったのだからしょうがない。

 莉羅りらさんから『どっちと付き合ってるの?』なんて聞かれたからだろうか?


 いつもの仲良し姉妹ならば、何気ない会話をしているはずだ。ノエルねえが『シエルちゃぁん』とか言って、シエルは『おねえはしょうがないなぁ』ってな感じに。


 しかし今日は真面目な口調だった。気になった俺は足を止めたのだ。

 そこで飛び出したのが『好きなの?』発言である。



 良く聞こえないな……。気になる。凄く気になる。シエルの好きな人が。


 しかし、聞かれたシエルは歯切れが悪い感じだ。


「えっと、べ、べつに……」

「でも、キス……してたでしょ?」

「うぐっ!」


 あの件か。旅館で俺の頬にした時の。

 やっぱりノエルねえに見られていたのかよ。


「本当にしたの? キス……。暗くてよく見えなかったから」

「ほ、ほっぺ! 口じゃない」


 慌ててシエルが説明した。


「あれはお仕置き。壮太が生意気だから。そ、そう、私が姉で壮太が弟というマーキング」


 意味不明な理屈を披露するシエルだが、そんな犬みたいな行為を自慢されましても……。


「シエルちゃん……そうちゃんにマーキングするくらい独占欲が……」

「ち、違う! や、やっぱりマウンティング」

「まま、マウンティングって……覆いかぶさって腰を……。きゃっ♡」


 ノエルねえの声が羞恥に震える。きっとマウンティングと聞いて、動物の交尾っぽいポーズを思い浮かべたのだろう。


「シエルちゃん、やっぱりそうちゃんと交尾……」

「ちち、違っ! 違う! 私の中で壮太は奴隷! いつも私が足で踏んで躾けてる」


 おい、シエル! お前、俺をそんな風に思ってたのかよ? 酷くないか?

 てかノエルねえ交尾(・・)とか言うんじゃない。


「そ、そうちゃんを踏んじゃダメだよ」

「大丈夫、壮太は踏むと喜ぶから」

「ええぇ……」

「この前も私の足を舐めようとしてた」


 ぎゃああああ! シエル、変な話をノエルねえに吹き込むんじゃねーっ!


「そうちゃん……足が好きなんだ」

「でも胸も好きみたい。いつもおねえの胸をチラ見してる」


 もう勘弁してくれぇええええ! 俺のフェチを広めないでくれぇええ!


「えっ♡ ふぇえっ♡ 胸も好きなんだ♡」

「そ、そう、壮太はエッチ」


 こら! シエルめ!


「もうっ、そうちゃんったら。うふふっ♡ でもちょっと安心した。口じゃないなら、そうちゃんのファーストキスは守られたんだね」


 ノエルねえの声が弾んだ。


「そうちゃんの初めては私が守らないと♡」


 過保護過ぎるぞ、ノエルねえは!

 俺が彼女を作ろうとすると、必ず妨害してくるんだよな。いつも彼女面するし。まるで恋人の嫉妬だぞ、それ。


「お姉こそ壮太が好きなの?」

「ギクッ!」


 シエルが反転攻勢に出たぞ。

 気になる。ノエルねえの気持ちが気になる。


「どうなの?」

「そ、そそ、それはぁ……」


 これまでと一転して、ノエルねえの声が急に上ずった。


「旅館でも布団に潜り込んできたし……」

「あ、あれはね、シエルちゃんがキスしたように見えたからぁ……」

「おねえもキスしたくなったの?」

「ギクッ! ち、ちち、ちがくて、え、えと……」


 おいおい、ノエルねえ……。キスしたかったのか?


「えっとぉ……し、シエルちゃんがそうちゃんとイケナイコトしちゃうかもって思って……」

「心配になったの?」

「そうそう。赤ちゃんできちゃうでしょ」

「えっ!」


 若干じゃっかん、引き気味のシエルの声と一緒に、俺もビックリして声を出しそうになった。

 ノエルねえは妊娠するような行為を想像していたのかよ。


「おねえって、壮太と子供作りたいんだ?」

「ちちち、違うからぁ~! 今のは言葉の綾でぇ」

「前から思ってたけど、おねえってエッチだよね」

「ええ、エッチじゃありません!」


 分かる。分かるぞ、シエル。やっぱりノエルねえはエッチだよな。


「それに、あの時、布団に潜り込んできた手慣れた感じ……何度もやってそう」

「ギクギクッ!」


 容赦のないシエルの追求に、ノエルねえはたじたじだ。自ら『ギクッ』とか擬音を発してるのだが。


「おねえ……もしかして、頻繁に壮太の寝込みを襲ってるとか?」

「ギクギクギクッ!」


 おいおい、それをシエルが言うのかよ。お前は頻繁に催眠しに来るだろ。


「そ、それはぁ……ひゅーひゅー」


 誤魔化そうとしているのか、ノエルねえが口笛を吹いている。吹けていないが。

 ここからは見えないが、その姿を想像すると笑いが込み上げてくるぞ。


「あぁ~ん、シエルちゃん許してぇ~」

「じゃあ、おねえはエッチと決まったことで」

「決まってないからぁ」


 おい、結局何の話なんだよ?

 それより俺を好きかどうかという話はどうなったんだ? 気になるのだが。


 もう少し……近付いてみようか?


 ギシッ!


 隠れている階段の途中から一歩足を踏み出したその時、意図せず床が鳴った。


 マズい!


「シエルちゃん、協定を結ばない?」

「ちょっと待って。何か音がしたような?」


 ヤバっ! 今ここで見つかったら最悪だぞ。姉妹の会話を盗み聞きなんてバレたら気まず過ぎる。


「あっ、ドアが開いてた。壮太に聞かれるとマズいよね」


 バタンッ!


 シエルがドアを閉めてしまった。

 これじゃ室内の会話が聞こえないぞ。



 ◆ ◇ ◆



 その日の夜――――


 俺は姉妹の会話が気になって眠れずにいた。

 いつもならシエルが催眠に来る午前零時を回っている。


 気になるな……。あの時、ノエルねえが協定とか言ってたような?

 結局、途中で聞こえなくなってそのままだけど。

 しかし気になる……莉羅りらさんが、あんなこと言うからだよ。


『あの子たちも壮太君のこと大好きだから』


 脳内で莉羅りらさんの声が再生される。


 ああああああ! やっぱり気になる! シエルもノエルねえも俺を好きなのか?

 でも、本人たちの会話では違ってたし……。シエルは俺を奴隷扱いで、ノエルねえは過保護なだけみたいだよな……。


 カタッ!


 何か音がした。

 選りに選って布団の中で悶々としている最中だぞ。


 ガチャ!

 ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ――


 やっぱり来た!

 部屋のドアが開き、誰かの足音が近づいてくる。

 シエルに間違いない!


 もう俺の心の中では、シエルの甘々ボイスや、ノエルねえの意味深な密着や、ついでに莉羅りらさんのグラマラスボディでいっぱいだというのに。

 これ以上は我慢できないぞ。

 色々溜まっていて限界なのに。


 ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ――


 ん? もう一人の足音が聞こえるような?


「シエルちゃん、ホントにするの?」


 ノエルねえの声だ!

 何でノエルねえまで!?


「おねえまで……。本気だったんだ?」

「ダメだよ、シエルちゃん。抜け駆け禁止。そうちゃんの部屋に忍び込む時は、お互いに話し合うって約束でしょ」


 なななななな、何だってぇええええ!


「何か間違いがあったら困るの。シエルちゃんが妊娠しないように、お姉ちゃんが見張らないと」

「おねえの方が心配。エッチだから」

「ええ、エッチじゃありません」


 お、おい、どうなってるんだ? 協定って?


「これからは一緒にそうちゃんと添い寝するんでしょ」

「分かった。おねえと一緒に壮太をお仕置きする」


 ギシギシッ!


 二人が俺の布団に入ってきた。シャンプーの香りと、バラのように甘い官能的な匂いが、俺の鼻腔と脳内に襲い掛かる。

 しかもダブルで。


 俺はどうなっちゃうんだぁああああ!!



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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