VSラットクイーン その1
「じゃあ、行くぞ。作戦は昨日立てた通りだ。」
「「「了解!」」」
そして、アントンがゆっくりボス部屋の扉を開けた。
その先には円形の広間が広がっていた。天井にはシャンデリアのようなものが取り付けられている。
そして僕達が入ってきた扉の反対側に頭に王冠を乗せた大きなネズミが座っていた。
その大きな瞳が僕達を捕えた。
そして、
「キシャアァァァッ!!」
いきなり大きな叫び声をあげた。
あまりに大きな声だったから、思わず耳を抑えるだけじゃなくて目も閉じてしまった。
その叫び声は10秒ほど続いた。
そして、その声が収まったときにはラットクイーンの前にラットクイーンと同じくらいの大きさのネズミとその半分くらいの大きさのネズミが10匹立っていた。多分でかいのがラットキングなんだろうな。
そして、こちらに狙いを定めたのか、10匹のうちの半分とラットキングが距離を詰めてきた。
「来たぞ!作戦開始だ!!」
アントンのその声とともに僕は感覚強化以外のすべてを発動させて、ラットキングの目の前に飛び出した。
アントンは5匹の前に立って盾を構えている。
そしてぶつかる前にヒカリから支援魔法が飛んできた。
体がすごい軽くなったのを感じる。
よし、来い!!
作戦はこんな感じね。
僕がラットキングの相手をして時間稼ぎをする。
その間に、アントンとシズクで10匹をさっさと倒しきって、その後ラットクイーンと戦ってそのまま倒しちゃえって感じだね。
ヒカリは危なそうな方の援護をする。まあラットクイーンを倒せそうだったらそっちの攻撃に参加するって感じだったかな。
まあだから、僕の仕事はラットキングの足止めをすること。まあ倒せそうだったら倒しちゃってもいいんだけど、時間稼ぎがメインだから無理しないようにしないといけない。
まずはこいつを少し離れたところにおびき寄せないとね。
こいつの攻撃が3人の方にいったら作戦崩れちゃうし。
どうやったらうまくいくかな。
そんなことを考えながら、こちらに向かってくるラットキングを眺めていると
「マジかっ!?」
体の毛を炎で燃やしながらこちらに突進してきた。
それを咄嗟にジャンプして躱した。
ラットキングは僕の足元を全力で駆け抜けて壁にぶつかって止まった。
は?こいつ今魔法使った?鑑定しておかなきゃ。
名前 ラットキング
LV 40
HP 1850/2000
MP 1900/2000
SP 1950/2000
攻撃力 700
魔法力 700
物防力 300
魔防力 300
回避力 300
スキル『火属性魔法 LV5』『生贄 LVMAX』
称号『女王の護衛』
なんだこの整ったステータスは?しかもさっきの攻撃で自分にもダメージが行ってるし。
そもそも魔法を使ってくるなんて情報なかったじゃん。
それに生贄ってなんだよ。
はぁー、まあそれでもやるしかないからやるけどさ。
ラットキングがこちらをにらんできていた。壁にぶつかったときに頭から言ったせいなのか額から血が出ていたけど。
「キシャアァァァッ!!」
今度は大きくジャンプしてとびかかってきた。
それを前に少し踏み込んでラットキングの後ろに回り込んだ。
ドーン!!
一拍置いて僕の目の前にラットキングが飛び降りてきた。
その着地の瞬間に体の動きが止まったところを狙って、後ろ足を両方とも切りつけた。
「キシャアァァァッ!?」
後ろにいることに気づいたラットキングが後ろ向きに全力で突進してきた。
「ヤバッ!?」
その攻撃は予兆が全くなかったから普通に食らった。
ラットキングの身長は僕の腰当たりまであるから普通に前かがみに倒れてしまった。
で、問題だったのは倒れたことじゃなくて倒れた場所ね。
ちょうどラットキングの目の前に倒れちゃったんだよね。
しかも、後ろまで取られたし。
「キシャアァァァッ!!」
その声とともに後ろの方が熱くなっていくのを感じた。
これって叫び声が攻撃の前兆って感じかな。
ってそんなのどうでもよくて、急いで逃げなきゃ。
これ完全にさっきみたいに火だるまになって突進してくるでしょ。
よけるのは時間的に無理。だから、
「ファイヤーランス!!」
ラットキングがいるであろう真後ろに向かってファイヤーランスを放った。
なんで火属性魔法かっていうと水属性の魔法は使えないから。
「キシャッ!?」
おっ。当たったかな。今のうちに体勢を整えないと。
手を前の方について前転の要領で起き上がる。
ラットキングの方を見ると、毛についた炎を消そうとして転がりまわっているところだった。
なんでだ?さっきのは普通に消せてたのに。僕の魔法だったからか?
まあ、だったら今のうちに倒してしまえばいいか。首も狙えそうだし。
そう思ってラットキングの側に駆け寄る。
うん、行けそう。ついでにアレも試しに使えるかどうかやってみよう。
「レオッ!!後ろッ!!」
止めを刺そうとしたその時、ヒカリの悲鳴が耳に届いた。
それとほぼ同時に背中になにか熱いものが当たった。
それはラットクイーンが放ったがイヤーボールだった。




