出発準備
気が付いたら、道場ではなく普通に布団の上にいた。
あの後どうなったんだろ?……まあ、いいか。
ヒナが言ってることは確かに正しかったけど、つらかったな。
たくさん寝たはずなのに寝たりない気がするよ。
「おお、起きたか。遅かったな。」
食堂に行くと、もう4人は起きて朝食の準備していた。
「おはよう。なんかすごい悪夢見たよ。」
「どんな夢だったの?」
片手にタオルを持ったシズクも話に入ってきた。
「休憩なしで延々に剣を振り続ける夢。しかもその度に違う、って怒られて木刀で殴られるって感じの。」
「それは、ハードだな。」
「私は夢でずっと魔法を撃ってたよ。なぜか魔力がなくならなくてさ。しかもそこにすごいかわいい女の子がいてさ、できるようになるまで帰さないって言われたよ。」
「……それもハードだな。」
……え?それってさ、もしかして……。
「ほら、話していないで早く準備を終わらせますよ。これから少しずつダンジョンに向かうための準備をしなくちゃいけないんですから。ちなみに私はレオにそっくりな人が夢に出てきて、嬉しそうに微笑んでいる夢を見ました。」
なんだヒカリも話に入りたかったのね。
「なんだそれ。」
「私に聞かないでください。私もなんでこんな夢を見たのかわからないんですから。」
「そういえばさ、準備っていえば私たち昨日テント買ったっけ?」
「「「あ……。」」」
しばらくすると、子供達が起きてきて朝ごはんの時間になった。
このタイミングでダンジョンに行くって言ってもよかったんだけど、一応教えるのは院長先生とトワ達だけにした。
だって、子供達に行かないでって言われたら、ダンジョンに行くっていう決心が鈍りそうだったし。
それから、アカサ商会に行ってテントを含めた野営道具を買った。そしてそれを全部アイテム袋に入れようと思ったんだけど、なぜか入らなかった。容量オーバーらしい。
仕方ないからいったん冒険者ギルドに行って中に残っていた魔物の死体を売ってきた。
オークとかウルフとかの死体だったんだけど、思ったよりも値段がついて全部で金貨1枚になった。
なんでも準魔王種の死体が多かったみたい。まあ、確かに黒いウルフは結構倒したな。
すぐにアカサ商会に戻って入れてみたらようやくそれで入りきった。まったく、手間がかかったよ。
そのままアリスを呼んでもらって一緒に魔物討伐に行った。
オークとかもブラッディ・ベア討伐の直後はほとんど見なかったけど、増えてきてたね。
アリスの魔法は強くて、オークも2,3回魔法を撃つだけで倒していた。
ちなみに僕は魔法では倒しきれないよ。ブラッディ・ベアの時は特別だったのさ。
結局夕方近くまでいたのに、魔法使い3人組がほとんどの魔物を倒してしまったせいで僕とアントンは特に何もすることがなかった。試したいことがあったのに。ちくしょう。
あ、ちゃんと倒した魔物はヒカリが収納魔法でしまっていたよ。
街に帰ってすぐにカミラさんの家に向かった。
そこには庭を掃除していたカミラさんがいた。ただし魔法を使ってだけど。
どうやってんだろ?なんか庭の土が巻き上がってるんだけど。
……ま、まあ今はいいかな。
カミラさんにブラッディ・ベアを討伐できたこととダンジョンに行くことを伝えた。
そうしたら、すごい喜んでくれた。
よく生き残ったと、頑張ったねと。
そして帰っておいでとも言ってくれた。
最後に明日友達を連れてくるかもしれないとだけ言って孤児院に帰った。
その夜、今度はマサムネに声をかけていないのに呼び出されて、ヒナと剣を振っていた。
確かに来たいときには言えって、言ってたけど呼び出せないとは言ってなかったし、実際最初の時呼び出されてたわ。
そういえば、シズクは特魔天っていうところに行けてたらしい。僕が行ってたところの魔法バージョンだね。
ちなみに僕が行ってたところが特剣天っていうところ。マサムネがいるところね。
次の日もアリスと魔物討伐に出かけた。
今度はちゃんと僕達にも出番があった。うーん、やっぱりあそこと同じようには剣を振れないな。
昨日の夜は何となく感覚がつかめたような気がするんだけど。
で、街に帰ってから昨日倒した魔物を合わせてギルドで売却した。分け前は折半ね。
その時にアリスに僕の雑用先に行ってみないかと声を掛けたら、行ってみたいと答えたからカミラさんの家に連れて行った。
そしたら、カミラさんとアリスは知り合いだったらしく、僕がやっていた庭掃除をアリスが代わりにやってくれることになった。
これで、あとはトワ達と会わせてあげれば大丈夫そうかな?
夜のことは知らん。また死ぬかと思った。
その次の日もほとんど同じことをした。
魔法使い3人組が互いに魔法を教えあってるみたいだけど、僕とアントンはその中に入ることができなかった。だから、すこし木剣で実戦みたいな感じで試合してみたりした。
結果、勝負がつかなかった。僕の攻撃はアントンの盾に阻まれて、アントンの攻撃は僕がよけていたからだ。バシバシ打ち合ってたんだけど、そうしたら魔物を引き寄せちゃったみたいで木剣で相手をする羽目になった。まあ、ウルフだけだったから何とかなったんだけどね。
昨日の予定通り、今日はアリスを孤児院に連れてきた。そしてトワ達と引き合わせることができた。
僕達がいない間、トワ達にアリスを頼るように言っといたからこれで完璧だね。
カミラさんっていう頼る相手とトワ達っていう頼られる相手を作れたからね。
アリスには頼る相手と頼られる相手の両方がいることが重要だと思ったんだよね。
だって、僕達がそうだったし。
その夜、荷物の確認をした。アイテム袋に全部入っているかどうか。
予定では明日ダンジョンに向けて出発するからね。




