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人と神様の国取り合戦  作者: きりきりきりたんぽ
ダンジョン攻略
88/125

ヒナの地獄の特訓

「ほらっ、そんなんじゃダメでしょ!もっと柔らかく振って!」


「ふ、振ってるって。」


「振ってない!そんなんじゃ、ダンジョンのボスに太刀打ちできないよ!」


「ちょ、ちょっとだけ休憩を……。」


「ダメ!できるまで振る!ここじゃ疲れないんだから!」


「……なんかすまん、レオ。」


 マサムネの申し訳なさそうな声が耳の届いた。

一体どうしてこうなったんだ!?




「あんたの名前は?」


 ヒナという少女は僕の前に綺麗に正座をすると、いきなりそんなことを言ってきた。

カッチーン。


「そういうのは聞いた方が答えるもんでしょ。」


「ぐっ、この生意気な坊主め。

いいわよ。私の名前はヒナギク。あんたは?」


「レオ。」


「そ、何が得意なの?」


「普通の剣。」


「ふーん。ジークと同じなのね。」


「「……」」


 どうするんだよ、この空気。


「……お前ら初対面のはずだろう?なんでそんな仲が悪いんだ?」


「「だって、こいつが……。」」


 ちっ!重なった。

互いににらみつける。


「ああ、そうか。仲がいいのか?いやでも初対面でそんなことあるか?」


 マサムネの声が静かな道場の中に響いた。



「もう、我慢できない!ようやくマサムネ様と二人きりだと思ったのに!

レオ、勝負しなさい。私が勝ったら今日は帰りなさい。」


「へえ、僕と勝負するの?いいよ。僕が勝ったら帰ってもらうから。」


「あ!あんたもマサムネ様を独占しようとしてるのね!?それだけは許さないから!

剣を出しなさい!」


 は?剣を出す、ってなんだ?

ってヒナはもう剣を持ってるし。いやあれは星剣マサムネの形に似てるな。


「ほら早く出しなさいよ!棄権するの!?」


「落ち着け、ヒナ。レオはまだ来てそんなに経ってないからここで剣を振ったこともないぞ。

レオ、自分の剣を想像しろ。そうすれば剣が出てくる。」


 なるほど、そうすれば出てくるのね。だったら……


「……なめているの?そんなので私に勝てると思ってるの?」


そう、僕が出したのは普段修行で振っている木剣だ。


「これでいいよ。普段もこれだし。」


「そ、なら始めるわよ。」


「……レオ、気をつけろよ。ヒナはお前よりも強いぞ。」


 え?

マサムネの声が聞こえてきたと思ったら、目の前にヒナの剣が見えた。


「っぶな!」


なんとか一歩引いて躱した。いや音しなかったじゃん。

おかしいでしょ。

 また消えたし。

仕方ない。魔力放射と感知を発動、って使えないじゃん!

その瞬間頭を強く打たれた。


ボグッ!



「で、わかったかしら。私が勝ったわよね。さ、帰りなさい。」


 不思議なことに意識を失うとかいうことはなく、ただすごい痛かっただけだった。

いやほんとに痛かった。なんであんな細腕からこんな威力が出るんだ?


「落ち着け、ヒナ。レオはここが初めてだったといっているだろう。

ここで魔力を使うことができないのもまだ教えてないんだから。」


「でも、マサムネ様……。」


「それに、同期のジークと違ってレオはお前の弟弟子だぞ。

確か弟が欲しいとか言ってなかったか?」


「……え?弟?」


 グルッとこっちに顔が向いた。目が怖い。

なんか獲物を見定めた魔物のそれなんだけど。


「ねえ、君は私の弟なのかな?」


 ひっ!またなんの気配もなく近づいてきて、肩をつかまれた。


「ねえ、どうなのかな?」


 こわ、こわ。なんか目に狂気が浮かんでる。

ちょ、マサムネ助けて。ちらっとマサムネの方を見ると。


 グッ、と親指を立てた。

なんだと。



「よし、じゃあ弟に修行をつけてあげないとね。ほら剣を構えて。」


 ……弟になってしまった。


「うん。」


「じゃ、早速まずは基本の素振りからね。100本振ってみよう。」


「分かったよ。」


「すまないがレオには人柱になってもらおう。なに、これも必要なことだった。」


 10分後。


「うん。いいじゃない。まあここに来れるくらいだもんね。これくらいは当然だね。

じゃあ次言ってみようか。」


「いいよ。なにするの()()()。」


「っ!!つ、次はお姉ちゃんと打ち合ってみようか。受け切ってみてね。」


「分かった。」


「ヒナ、よかったな。念願の弟ができて。これで、妹みたいな扱いされずに済む。」


 30分後。


「ほら立って、剣はこういう風に振るの。そうすればどんな体勢からでも全力で触れるでしょ?」


「はぁ、はぁ、そう、だね。」


「ほら、今度はお姉ちゃんの真似して打ってきてごらん。」


「わ、わかっ、たよ。」


「……レオ大丈夫か?なんか死にそうな顔してないか?まあここで起こることは全部向こう側に物理的な影響はないから、大丈夫か。」


 1時間後。

冒頭に戻る。


 も、もう無理。ちょ、マジで助けて。


「ヒナ、レオが死にそうだぞ。今日はここまでにしてあげろ。

また続きは明日とかにしよう。」


「え?……あ、ごめんレオ!夢中になって全然気づけなかった!」


 ああ、本当に気づいてなかったのか。

でもすごいためになった。確かに途中何回か力の入り方がよかったのがあったけど、その時は感触もこれまでにないくらいによかったし。

 でも、もう動けん。体力的にではなく、精神的に。

ガクッ。

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