アカサ商会“冒険者おつかれさまセール”
店内はめちゃくちゃ混んでいた。特に冒険者たちで。
どうしてだよって思ったらすぐにその答えが分かった。
だってやばくない?冒険者の必須品である革装備とかナイフとかが半額で売ってるんだよ?
そりゃ本職の革職人の方が単純に丈夫で長持ちするけど、こっちのでもグレイ・ラビットとかと戦うなら十分だろうし。
……は!?しかもポーションまで半額で売ってんの?
なんか大量にポーション抱えてる冒険者が何人もいるんだけど。
急いでポーション売り場に見に行ってみると、ポーションとハイポーションの値段は変わっていなかった。
安くなってるのはロウポーションだけっぽい。
はあ、びっくりした。もしハイポーションが安くなってるなら買っておきたかったし。
味は最悪だけど効果はすごかったもんね。味は最悪だけど。
結局ポーションは買わずに野営道具を売っているところを探した。
……見つからん。広すぎな、この店!
しかも3人とはぐれたし。ポーション売り場に走っていったときしかそんなタイミングないからその時か。
前ポーション買いに来たときはすぐ見つかったから全然そんなこと思わなかったけど、この街で一番大きい商会って言うのは伊達じゃないな。
あー、やばい。広すぎて今日もうこれだけで時間なくなりそう。
そんな時後ろから突然声がした。
「……どうしたんですか?そんな顔していると通報したくなってしまうんですが。」
何奴っ!?と振り返ってみるとそこにはあきれたような顔をしたアリスが立っていた。
ああ、そういえばここってアリスの家だったな。
「探し物をしてたらわからなくなってね。3人ともはぐれるしで路頭に迷いかけていたところだよ。」
「はあ、そうですか。だったら周りの人に聞けばよかったじゃないですか。あなたに声かけようとしていた冒険者はたくさんいましたよ。」
「え?そうなの?全然気づかなかったよ。」
「あなたはこの街ではもう結構有名なんですよ?オークロードだけでなくブラッディ・ベアまで倒したんですから。
でもなぜか誰もあなたたちにからもうとしませんね。
パーティーに入れてくれー、とかいう人が大勢殺到すると思ってたんですが。」
「まあいいじゃん。来てないしもし来たとしても入れるつもりもどこかに入るつもりもないし。
僕達は4人だけだからこそ生きてこれたんだよね。だから、だれかを入れることはないよ。」
「……そうですか。」
……それに約束があるし。この前村に帰ったときに思い出したけど。
「そういえば、なにか言いたいことがあるんじゃなかった?
なんかブラッディ・ベアと戦ってる時言ってなかった?」
お、なんかアリスの顔が少し赤くなった?
「あっ、あれは、……なんでもありません!!
そもそも何でそれを!?」
「いやなんでって、自分で言ってたじゃないか。
たしか、最期に4人に伝えたいことがあるって。」
「忘れなさい!いいですか!?忘れなさい!」
おお、どうしたんだ?そんなに焦ることか?
でも迫力が冗談じゃない。頷かなかったら帰れなさそうな感じがする。
「わ、わかったよ。
……じゃあ、話を変えるか。
あの時たしかブラッディ・ベアに攻撃してなかった?どうやったの?」
「あ、あれですか?
あれはですね、剣の先から魔法を撃ったんですよ。どうやってるかは教えませんが。
そうすれば少しでも剣が刺されば体内に直接魔法を撃ちこめます。
それで残った魔力分の攻撃をしたっていうわけなんです。倒しきれませんでしたが。」
なるほど、体内に魔法を撃ちこんだのか。
確かにそうすれば、僕の弱い魔法でも結構使えそうだね。
これは何回か考えてみようかな。
「……なるほど、そうすれば強い攻撃が入るか。」
「で、レオはどうやったんですか?
気が付いたらブラッディ・ベアが倒されていたので詳しく知らないんですが。」
「あー、それはね、なんといえばいいか……。」
声こそは冷静だったがアリスの目には期待が見え隠れしていた。
いやー、期待してもらってるところ申し訳ないんだけど。
「自分でもわからないんだよね。」
「……は?」
「いや、使った魔法は創造魔法っていうやつなんだけど、どうして使えたかわからないんだよね。」
「……そうですか。」
「ごめんね。ほんとに。
……そういえば野営道具ってどこにあるか知ってる?」
「ああ、じゃあ案内してあげましょう。
どうせ、口頭じゃわからないでしょうし。」
……いやそうだけど、それ言わなくてもいいじゃん。
アリスに案内してもらったらすぐにたどり着いた。
そしてそこで3人が野営道具を物色していた。
テントやら寝袋やらをね。
デザインとか大きさとか結構種類があるな。3~4人分とかから10人分とかっていうものまで。
それ以外にも魔道具付きだったり高級素材使用だったりもあるな。
ここら辺はよくわからないからヒカリとシズクに任せようかな。
「そういえば、野営道具なんて買ってどこに行くんですか?」
おっと、この質問は飛んでくるよね。
「ああ、えっとね。私たちダンジョン攻略に行くんだぁー。」
「Cランクに上がりましたもんね。それに新しい目標の達成のためですし。」
買い物に夢中になっていた二人が会話に入ってきた。
まあ、端的に言うとその通りだからいいんだけど。
「……そう、なんですか……?」
アリスがいきなり泣き出してしまった。
……やっぱり聞き間違いじゃなかったみたいだね。




