Cランク冒険者デビュー?
「驚きました?これはさっきのに気づいた人たちには教えているんですよ。
でも皆驚いた後、なぜかショックを受けたような顔をするんですよね。
なんででしょう?」
知らんよ。
でもそうか。青い髪と目も、白い肌も整った顔立ちも領主様譲りだったってわけか。
考えてみれば、結構似てるな。
でも、オリビアさんみたいなものは持ち合わせていないようだ。
……うん?なんかピキッ、て音が聞こえたような。
「……さて、今日話すことはこれで以上です。
神話の話は私も教えてもらっただけなのでそれに対して質問されても答えれられないので、質問の時間は取りません。
ということで、今日はここまでです。
これからとりあえず冒険者ギルドに来てもらいます。
冒険者カードを更新しないといけないので。
その後は、ご自由にしてください。
……ああ、あと警告です。
レオ、あんまり変なことを考えないようにしてください。」
「へ……?」
アナさんはスタスタと教室から出て行ってしまっていた。
どいうことなんだ?
「……レオ、もう少し顔に出さないようにしなさい。
アレは普通に失礼ですよ。」
「そうだよ。女性に対して胸のことで変なことを考えちゃだめだよ。」
「……そうなんだ?」
つまり、大きさのこと?でも口に出してないんだけど。
それが伝わったとでも?
いやいや、まさかね?ね?
「考えるだけでも相手に伝わりますからね。気を付けてください。」
「あ、そうなの?最強じゃん。
こんどから気を付けるよ。」
「……そうなのか……。」
カララーン。
冒険者ギルドに到着、って言っても隣なんだけどね。
時間的にちょうど昼間だから人はあんまりいないかなぁー、とか思ったら普通にたくさんいたわ。
なんでだよ。討伐なり護衛なり依頼を受けろよ。
「来たぞ来たぞ。」
「今日の主役だな。」
「確かもうCランクに上がるんだっけ?」
「そうりゃそうだろ。あそこに居合わせたらな。」
「めちゃくちゃ強かったもんね。4人とも。」
「特に最後のレオがやったやつはどいうことなんだろうな。」
「ほんとだよね。ブラッディ・ベアだけじゃなくて、残ってたオークまで全部倒しちゃったもんね。」
「それを途中まで支えていたアントンも、とんでもない威力の攻撃魔法を撃ったシズクもとんでもないね。」
「いやいや、一番はヒカリだよ。3人に常に支援魔法をかけ続けて、それだけじゃなく回復魔法までかけてたんだよ!?そんなことできる人いないでしょ!?」
おーおー。盛り上がってるな。
でも今日は酒は飲んでいないみたい。まあ、あの日だけ特別だって言ってたもんね。
とりあえず、受付に行って冒険者カードを更新しないと。
「さっきぶりですね。言ったことが分かりましたか?」
「ん?……ああ。
あれでしょ。アナさんの胸が小さいってやつでしょ?」
ピシッ!
アナさん以外の受付の人の顔が強張った。
さっきまで酒場で騒いでいたはずの冒険者たちもピタっと音を立てなくなった。
話し声はもちろん食事の音まで。
そして何よりアナさんの顔から表情が抜け、怨嗟のこもった視線を向けられた。
3人は、何やってんだといわんばかりの表情をしていた。
「……しょうがないですね。今からここで大事な話をしましょうか。」
……やばい。なんか知らないけど、やらかしたみたい。
あれ、僕なんかやっちゃいました?とか言っても逃げられなさそう。
すごい負のオーラだ……。
それから10分程アナさんのお話があった。
曰く、胸があるからなんなんだと。
あんなのあってもなくてもいいじゃないかと。
それどころか、あったら肩が凝るのではないかと。
私も牛乳をたくさん飲んだのに全然大きくならなかったと。
どうしたら大きくなるのおぉぉぉー!!
チーン。
……おおう、マジか……。
その悲痛な叫びがあまりにもいたたまれなくて誰も顔を上げられなかった。
だというのに、僕達はその目の前いる。
やばい、どうすればいいんだ?
なんかアナさんも突っ伏したまま起き上がってこないし。
「どうしたんだ?なんか悲鳴が聞こえてきたんだが……。」
ギルマスだっ!このままギルマスに押し付けちゃえ!
「ギルマスッ!アナさんのことどう思う!?」
「あ?なんだいきなり……。
おい、まさかお前……。」
何かを察したみたいだけど、ここで逃がすわけにはいかない。
なんとか押し付けないと。僕達が死ぬ。精神的に。
アナさんが期待を込めた目でギルマスを見つめる。
「どう思う!?」
「え、あー。いいんじゃないか?」
「なにが!?」
「うん、よく働いてくれているし俺からしたらかわいい部下だが……。」
「だが、なに!?」
「ちょっと圧が強いな。」
「「「「「…………はあ、ないわー。」」」」」
みんなの声が重なった。
そうじゃない。
ほめるなら最後までほめようよ。
だが、で切ったなら続きは違うでしょ。
なんとも言えない空気がギルド内に満ちた。
とても居心地が悪く、またその上逃げることもできない。
少しでも動こうものなら僕の標的になっちゃうからね。
カララーン。
そんな時、誰かがギルドに入ってきた。
ギルマスを含めたアナさん以外の全員の目がその人に向けられた。
そしてそこに立っていた人は……
イーサンさんだった。
「うん?どうしたんだ?
普段こんな静かじゃなかっただろ?」
「イーサン、アナのことどう思う?」
おっ。今度はギルマスが押し付けた。
まあ、そうなるよね。
一刻も早く逃げ出したいだろうから。
「え?アナさんのことですか?
普通に素晴らしい女性だと思いますけど。
かわいいし、仕事もできるし何も非の打ちどころがないのでは?」
「「「「おおぉぉー……。」」」」
すごい。完璧な返しだ。
アナさんの顔も元に戻ってる。
「……なんだこの敗北感……。」
知らん。




