これからどうしよっか……
3章開幕です。
よろしくお願いします。
―――ブラッディ・ベアを倒した次の日。
孤児院の裏庭で初めて朝から喋っていた。
「これからどうする?もう目標も達成しちゃったし……。
正直もうこれ以上強くなる必要はないよね。」
「……そうだな。
これまで俺たちはブラッディ・ベアを倒すためだけに強くなろうとしていたけど、その後のことは全く考えていなかったな。」
「私は前に行っていたように一度村に帰りたいです。
仇は討ったって報告にも行きたいですし。」
「そうだねぇ。そのあとはそれからもう一回考えてみない?
もしかしたら何か残ってるかもしれないわけだし。」
これまでは、時間があったら強くなるために剣を振ったり魔力制御の練習をしたりで大変だったな。
こんなにゆっくり話すなんて村を出てから初めてかもしれない。
子供達が起きてきたら遊んであげるのもいいかもね。
「おはよう。4人とも、朝が早いね。」
そんな風にのんびりしていたら院長先生が裏庭にやってきた。
「「「「おはようございます。」」」」
「昨日は大変だったね。お疲れ様。」
本当に大変だったな。何回も死ぬかと思った。
ブラッディ・ベアの攻撃を食らった時はたいていHPが半分以下まで削れてたし。
当たり所が悪かったり、受け身ができていなかったら今ここにはいないだろうな。
今思えばなんでそんな危険なことができたのかよくわかないね。
まあ『復讐者』のおかげだろうけど。
「……どうでしたか?仇を討てて心が少しでも軽くなりましたか?」
誰に聞くでもなく院長先生がポツンと呟いた。
多分僕達全員に聞いてるんだろうな。
……どうなんだろ?心が軽くなったのかな?
確かに軽くなったんだろうけど、それだけじゃない気がする。
「多分、4人ともこれまであった明確な目標がなくなってどうしたらいいかわからなくなってるんじゃないですか?
そのせいで次の目標を見つけることもできないし、達成感とかも感じられなくなってると思います。」
「……じゃあどうすればいいの?次の目標なんて見つけられなさそうなんだけど。」
「私がその目標の一つを作ってあげます。
でも、それは考えて行動して、最後までやりきってからです。
それでも目標が見つからなかったら、一緒に孤児院を盛り上げていきましょうね。」
院長先生はそう言い残すと、そろそろ朝ご飯の準備をする時間です、と食堂の方に歩いて行ってしまった。
「……まずはさっき言ってた通りに村に戻ってみよっか。」
「だな。」「だね。」「ですね。」
カララーン。
朝ごはんの後、ギルドに行ってみるとまた昨日騒ぎすぎたのか、ほとんど冒険者がいなかった。
でもそれはよかったかもしれない。
もしここでオークロードを倒した時みたいに冒険者に囲まれたら、またよくわからなくなってしまいそうだった。大して考えもしないで流れに乗せられてそのまま冒険者を続ける、なんてことになっていたかもしれない。
「おはようございます。皆さん昨日はお疲れさまでした。」
「おはようございます。今日はある村の場所を聞きたいんですが。」
「なんて言う名前の村ですか?」
「アコタル村です。」
「えー、っと。
……西の方にあった村ですね。この街より西側の村はブラッディ・ベアによってほとんど壊滅状態になっていましてね。多分この村もそうなんじゃないかなと思うんですが。」
「それでもいいです。」
「……分かりました。これが地図です。だいたい2日かからない程度で着くようです。
あと、皆さんはCランクに上がることができるので商人の護衛依頼についての講習を受けられる時間があったら言ってくださいね。
今からでも大丈夫ですが。」
「ありがとうございます。今はいいです。」
「そうですか。では次の機会に。」
カララーン。
「じゃあ、早速帰るか。」
「うん。」「だね。」「そうですね。」
この街並みをちゃんと見るのも初めてかもな。
露店もあるし。家もいくつか種類があるんだな。
思えばここは街の外と違って、石畳になってるな。
衛兵さんに冒険者カードを渡して街から出る。
「まっすぐこの道を進めばいいみたいだな。
身体強化で走っていくぞ。」
道らしきところを走っていく。
身体強化で走ってるから結構速いけどね。
ここはジークさんに送ってもらった時に通ったな。
あの時強くなりたいって頼んだんだっけ?
……ああ、今度ジークさんにあったらお礼を言わないとな。
途中で少し休んで、また走り出した。
今度はヒカリに支援魔法も掛けてもらったから面白いくらい速く走れる。
でも戦う時はこんな感じだったっけ。
しばらくすると、見覚えのある森が見えてきた。
……ここで鬼ごっことかかくれんぼとかしたなぁ。
何回も夢に見た光景だったけど、実際に目で見るとなんかこう感じるものがあるな。
自然と足を動かす速さがゆっくりになっていき、最後には歩いていた。
村に近づいていくにつれて、少しずつこれまで忘れていたものが思い出せる。
何回もさぼっていた村の手伝いも。
年に一回あったお祭りも。
自分の家族の顔も。
これまで無理やり忘れようとしていたものが頭の中を駆け巡る。
景色が突然開けた。
そこには、家とかはボロボロだったり燃えてなくなってたりはしたけど、確かに僕達が生まれた村があった。
そう、ここが僕達が生まれた村、アコタル村だ。




