決戦の時 その3
フルフル、フルフル。
「魔道具が震えてるね。っていうことはここら辺にいるっていうことかな。
一応、魔力放射と感知を使っておこうか。」
「そうだな。で、結局どうするんだ?
シズクの魔法を頼りにするにしても、シズクに攻撃が向いたらやばいぞ。
多分俺以外は1回でもまともに攻撃食らったら死んじまうだろうしな。」
「先ほどの魔物除けを使うというのはどうでしょう?
それを私たちが使えば攻撃を二人に集中させられるんじゃないですか?」
「なるほど!
確かにそうすれば私たちは遠距離からの攻撃に専念できるね。
でも二人はそれでいいの?私たちよりもはるかに危険なことをしなきゃいけなくなりそうなんだけど。」
「気にする必要はないよ。僕達の仕事はそれなんだし。」
「そうだな。これは役割分担だ。それに危険なのはお前たちも変わらないと思うしな。
だが問題は、……あと使えるのが多く見積もって2回分くらいしかないっていうことだな。」
「「「え?」」」
確かにもう分量的に1回と少し分くらいしかないな。
だったらこれを使う時とかもちゃんと考えないとな。
「これはヒカリに渡しておくから、いざっていう時に使ってくれ。」
「分かりました。では預かっておきます。」
「で、他に何かあるか?ないなら本格的に探すぞ。」
「じゃあ、一応言っておこうかな。
鑑定を使えばいいんじゃない?」
「「「え?」」」
僕が考えていたことを話した。
鑑定を使えば、相手にもそれがわかるかもしれないということ。
そうならば相手の攻撃を集められるかもしれないということ。
「なるほどな。それはアリだな。試してみる価値は十分にある。」
「そうなると、私たちは鑑定を使わない方がいいよね。」
「そうですね。鑑定を使ってしまうと、攻撃が私たちの方に来て作戦が崩れてしまいます。」
「じゃあ、一応ステータスとかは僕達が教えるよ。そこまで余裕があるかどうかはわからないけど。
で、話は変わるけど思ったよりも近くにいたみたいでこっちに向かってくるのがいるよ。
多分、アレだね。」
「そうか。……は?」
「グルアァァァッ!!」
「うをあぁぁぁっ!?」
大きな影がジャンプでこちらに飛んできた。
そこにいたのはもちろんブラッディ・ベア。
なぜか首輪みたいなのしてたけど。
あれが魔物を操るっていう魔道具かな?
「おいっ!いきなり動くな!そしてもっとゆっくり動け!私が怪我したらどうするつもりだ!?」
そして何かをほざいているブラッディ・ベアにつかまっていた男が一人。
明らかに小物だな。どうでもいいから無視しよう。
ブラッディ・ベアはその男のことを無視して鋭い瞳をこちらに向けていた。
……あれ?あんなに毛が赤かったっけ?
騒いでいた男もようやくこちらの存在に気づいたようで、こちらに目を向けてきた。
「は?なんでてめえらがここにいる?オークの大群が向かってただろうがよ。」
動揺からか声がかなり震えていた。
でもすぐに何か得心したようで自慢げに話しかけてきた。
「……ああ、そうか!お前らの命を差し出してきたっていうことか!
だが、遅かったな。もう少し早くその決断をしておけば街を壊す必要がなかったというのに。」
「……そんなはずはないだろう。俺たちはブラッディ・ベアの討伐に来たんだ。」
「は?何の冗談だ?無理に決まってるだろ。
ブラッディ・ベアは魔物の中でも上位に位置するベア族の魔王種だぞ。勝てるはずがない。」
「へえ、随分自信があるんだな。お前の力ではないのに。」
「だったらなんだ?お前たちが勝てないのには変わりがない。」
「随分大きな態度だな。弱いのを必死で隠そうとしているようで滑稽だな。」
心の底から馬鹿にした様子で話しかけてくる。
アントンが煽りながら会話を続けている。
少しづつ怒らせている。本当にアントンは話が上手いな。
ならするべきことは、
「……シズク、ヒカリ、魔法の準備頼む。」
「……もうやってるよ。」
「……同じく。いつでも支援魔法を全部かけられます。」
よかった。ならあとは始まってから考えればいいか。
「もういい!!
ブラッディ・ベア、こいつらを殺せ!!」
しびれを切らしたのか、男が大声を上げた。
「グルアァァァッ!」
「来るぞ!
二人は魔法とあの男を見ていてくれ。
レオ、行くぞっ!!」
「「「了解!」」」
ブラッディ・ベアは全長2メートルほどで長い手を持っている。
だから、攻撃の主体は手だとみていいだろう。
ドンッ!
思いっきり踏み込んだと思ったら、もう目の前にいた。
そして長い右腕を振りかぶっていた。
アントンがそこに盾を合わせたが、受け流すことには失敗したようで後ろに吹き飛ばされてしまった。
でも、右腕に大きな隙が生まれた。
なら、そこを狙うしかないよね。
あらかじめ発動させていた魔力放射と感知に加えて全力で身体強化と武器強化を発動させた。
「はぁっ!」
右腕の付け根あたりをめがけて全力で振った。
ザシュッ!
当たった!って思ったら目の前に肉球が見えた。
咄嗟に剣の腹で受けたけど、吹き飛ばされた。
ゴホッ!
思わず口から血を吐いてしまった。
自分を鑑定で見てみるとHPが半分ほど無くなっていた。
この感じ、思わずついた左腕も折れてるっぽいな。
はぁ、早速ポーションの出番か。
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