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人と神様の国取り合戦  作者: きりきりきりたんぽ
称号『復讐者』
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決戦の時 その1

 翌日朝、冒険者ギルドに行くとすぐに奥に通された。

でも通されたのはいつもの部屋とは違って、ギルマスの仕事部屋みたいな感じなところだった。


「ギルマス、4人を連れてきました。」


「おお、来たか。まあ入ってくれ。」


 案内してくれたのはなぜかアナさんだった。この人暇なのかな?

まあ、案内したらすぐに戻っていったんだけど。


「今日は例の件について具体的な話をするぞ。

って言ってもお前たちに頼むことはそこまで多くないが。」


「そうなんですか?」


「ああ、領主様の所に手紙が投げ込まれてから今日で6日目だ。つまり明日か明後日には魔物の大群がこの街に攻めてくるってことだ。で、その時のお前たちの仕事はブラッディ・ベアの討伐、それだけだ。

それだけって言えるほど、生易しいものじゃないがな。

だが、普通にしていたらブラッディ・ベアと戦うのはCランクの冒険者になるだろう?

だから少しだけ先に手を打っておくんだよ。」


「なるほど。」


 確かにそうだね。

普通に魔物の大群が来たってなったら上位の冒険者が少数精鋭のパーティーを組んで元凶を倒しに行きそうだし。

 だから僕達が相手をできるようにあらかじめ手を打っておこうっていうことね。


「だからお前たちは明日か明後日かに冒険者の強制招集がかかる前に知らせに行くからその時に街の外に出て行っといてくれ。

そうすればお前たちは街の外で自由に動けるはずだ。」


 確かにそうすれば僕達は自由に街の外で動ける。

でもその後の方が問題じゃないの?

そもそもブラッディ・ベアと遭遇できるのか、とかほかの冒険者はどうなるのか、とか。


「でだ、一応俺たちの作戦も伝えておく。

俺たちはこの街を守るためにだけ戦力を使う。

基本的にこの街に攻めてくる魔物だけを倒す感じだ。

実際それでもかなり厳しいことになりそうだ。なにせここ最近で倒されたオークの数は異常なほど少ないからな。

 だからそれを冒険者たちには徹底させる。それ以外のことに意識を割けるほど余裕があるやつはいないだろうが、一応そう伝達する。

だから、ブラッディ・ベアと戦うのは本当にお前たちだけだ。増援はないぞ。」


 うーん?……ああ、そういうことね。

これまで普段だったら倒されていたはずのオークとかの魔物がブラッディ・ベアの支配下にあるかもしれないっていうことね。もしそうだとしたらかなり大変なことになりそうだな。

 でもCランクの冒険者がいればそれほど脅威にはならなさそうなんだけど。


「そんなに厳しいんですか?」


「ああ、厳しいな。

特にオークロードが倒されてから見かけなくなったって言うのがより一層な。

 っていうのも、オークロードみたいな種族の魔王種や準魔王種が死んだあと、次にその個体が生まれるまでその種族には長がいないんだ。でその間、どの個体がその種族の長の代わりをするかっていうと、他の種族の強い個体がそれを担う。

 今回の場合はブラッディ・ベアだろうな。それにブラッディ・ベアはオークロードよりもはるかに強い。ステータス的にも指揮能力的にもな。

 だから想像もつかないほどの数のオークがこの街に押し寄せてくるだろう。

それもブラッディ・ベアのせいで多少の戦略も使ってくるかもしれない大群だ。

領主様の協力があってギリギリ街を守れるぐらいだろうな。

だが、それでも死傷者はかなりの数になるだろう。」


「………。」


「だが、お前たちのほうがはるかに大変だぞ?

 ブラッディ・ベアの強さは未知数だし、勝てるかどうかも領主様の話じゃ賭けになりそうだしな。

あれを見つけるのはあとで渡す魔道具で何とかなるだろうが、そのあとがかなり大変だろう。

 だからお前たちは自分のことだけに集中しろ。復讐を果たすことだけを考えろ。

そうしてくれれば、俺たちもこの街も救われる。」


「……分かりました。俺たちは俺たちの復讐を果たすことだけを考えます。」


「そうしろ。魔道具は……。」


バンッ!


 アナさんが勢いよく部屋に入ってきた。顔色が心なしか悪い気がする。


「ギルマスッ!街の西側から魔物の大群が現れましたっ!」


「何ッ!?もう来たのか!?早すぎだろ!

ってそんなこと言ってる場合じゃない。

アナ、さっき渡した魔道具持ってるか?」


「えっ!?あっ、はい。持ってます!」


「よし、それをアントン達に渡せ!そして裏口からこいつらを外に出してやれ!

他の冒険者が集まったときに送り出すぞ!」


「分かりました!」


「俺はもう下に行くから魔道具の説明とかは任せたぞ。」


 そう言い残し、ギルマスは部屋から出ていった。

それを見送ったアナさんはすぐに腰のアイテム袋から魔道具を取り出して渡してきた。


「これは、魔王種以上の魔物が近くに現れた時に知らせてくれる魔道具です。

近くにいるときに振動しますから、そういう風に使ってください。

それと……。」


 アイテム袋からまた何かを取り出した。

あれって確か、


「これも持っていってください。全部ハイポーションです。一人1本ずつ持っておいてください。

いいですか?死にそうな時ではなく、危険だと思った時に使ってください。その時にためらってはいけません。」


「はい。」


 おお、すごい真剣だな。

別にそこまでしなくてもいいのに。


「それと、


絶対帰ってきてください。

あなたたちを待っている人がたくさんいますからね。

それは孤児院の子供達だけじゃなく、ここの職員も、他の冒険者の皆さんもそうです。

分かりましたね?」


「分かりました。」


 ええ?どうしたんだろ?なんで泣きそうなんだろ?

アナさんってこんな感じの人だっけ?

まあいいか。

なんか下の方が騒がしくなってきたな。


「……冒険者の皆さんが集まってきたみたいですね。

では皆さんも出発の時ですね。裏口に案内します。」


少し歩くとすぐについた。


「ここが裏口です。

本当に気を付けてくださいね。」


その言葉とともにギルドの外に送り出された。

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