絡まれたぁー(ガチ)
長めです。
ドンッ!
「「「「ええぇぇぇぇーーーー!?!?!?」」」」
冒険者ギルドは、その声を最後にこれまでの騒ぎが嘘だったように静かになった。
周囲からの視線を感じながら、どういうこと?と疑問が僕達に浮かんだ。
事態は少し遡る。
話し合いの結果、4人で冒険者ギルドに向かうことになった。
カララーン。
「今日でようやく、遠征が終わったな。」
「そうだな、本当になんであんな魔物がいたのやら。」
「ダンジョンに近いほうが強い魔物が多いと聞くが、それが増えたのかね。」
「そうじゃないとおかしいんじゃない?」
「オークとかもたくさんいたな。」
「でも誰が群れの長を倒したんだろうな?たしか群れの長がいなくなったから帰っていったんだろ?」
「それがまだわかってないみたい。」
「通りすがりの高位ランクの冒険者とかじゃないの?」
「でも、剣聖のパーティーはもういないだろう。」
「今はそんなことよりも酒だぁ!飲みまくれぇ!」
「「「「うおおおおおおお!」」」」」
「うっわ、マジか……。」
ギルドの中では、酒場にこれまで見たことがないほどの冒険者がいて、宴会が開かれていた。
昼間っから酒飲んでるよ……。
普通夜からとかじゃないの。
席もいっぱいだし。床で飲んでる人もいるよ。
受付の所は酒場とは違ってずいぶん空いてるな。
アナさんもいる。なんか書類みたいなの見てるけど。
さっさと用事を済ませようかな。
「さっさと行こう。」
「そうだな。」
そう思って、受付の方に歩き出そうとしたとき、
「あれ?新人冒険者ちゃんなんじゃない?」
「ほんとだ。私たちが遠征に出ている間に入ったんだね。」
「でも武器とか持ってるじゃん。ってことはあの年でDランクはあるってことか?」
「あー、じゃあちょっとだけちょっかいかけてみよっか?」
「そうだな。俺に任せろ。」
「ちょっ!やめとけって。また新人が辞めちゃうかもしれないだろ。」
「いいじゃないか。それでやめるならそれで。」
「……どうなっても知らんからな。俺は止めたぞ。」
本当にうるさいな。どうにかならないもんかね。
うん?一人の男がこっちに来るな。
「おい!そこのガキども!
先輩が帰ってきたってのに、挨拶もなしか?」
……は?何事?
いきなり声かけてきた挙句挨拶って。初対面のやつに挨拶をわざわざしに行くやつはいないでしょ。
そもそもガキじゃないし。
「……お疲れ様です。じゃあ。」
おー、アントンも怒ってんな。
「おい。お前たち、なめてるのか?
俺はCランク冒険者パーティーのリーダーだぞ。」
「はあ。で?」
「は?」
「だから、なんですか?俺たちは暇ではないので。
昼間から酒を飲んでる人とは違って。」
「……そうか、わかった。
お前たちはまだみたいだから、今からやるか。洗礼の儀を。」
「洗礼の儀?」
「そうだ。簡単に言えば俺がお前たちをボコボコにするってことだ。
訓練場に行くぞ。」
「拒否するよ。
ここで十分でしょ。」
「おい。レオ。」
「それにもう時間がない。早くアナさんに聞くこと聞いたらおばちゃんの所に行かないと。
それは3人とも同じでしょ?」
「ほう?お前は馬鹿なのか?ここでの戦闘は禁止にされてるんだがな。」
「あはは。わからないんだ?」
「何がだ?」
「戦闘にすらならないってことだよ。
Cランクパーティーのリーダーくらいじゃ。」
一瞬ギルド内の空気が凍り付いた。
でも次の瞬間、
「ぎゃははははは!
え!?お前みたいなガキが!?このライアン様に!?
冗談もほどほどにしろよ!」
その目に怒りを浮かべながら怒鳴ってくる。
「じゃあここでやる?
どうせすぐ終わるし。やらないならどいて。」
「ここでやってやるよ。
そうだな、そのふざけた態度に免じて初手は譲ってやる。
かかってきな。」
「そ、じゃあ「待ちなさい。」…え?」
ライアンの後ろにいつの間にかアナさんが立っていた。
「ギルド内で暴動を起こすことは禁止されています。
また今日は例外として認めていますが、昼から酒を飲むことも基本的には禁止されています。
それに、酔っているときに他者に迷惑をかけた時の処罰も既に伝えているはずですが。」
「うっ。
すいません。ちょっと飲みすぎた。」
「じゃあ戻ってください。
それと、先輩の冒険者には敬意をもって接しなさい。
これは冒険者としてではなく、人として当然のことです。」
「分かったよ。」
「本当に?」
「……ワカリマシタ。」
「はあ、まったく。
で、確か私に聞きたいことがあるって聞こえましたが、なんでしょう。」
「アントン、任せた。」
「お、おう。
同レベルの人がどれくらいのステータスをしてるのか知りたいです。」
「いいですよ。受付の方で話しましょうか。」
受付に場所を移して、アナさんから話を聞いた。
「まずは、冒険者カードを見せてください。」
「はい。お前らも貸してくれ。」
アントンに3人とも冒険者カードを渡すと、それをそのままアナさんに渡した。
「ありがとうございます。
へえ、皆さん頑張ってますね。もうLV10近くまで上がったんですか。
そうなると……。」
そういってアナさんは一枚の紙を取り出した。
そこには表が書かれていて、レベルとその平均ステータスが一目でわかるようになっていた。
「ここに書いてある数値が平均的なステータスです。」
HP 300
MP 300
SP 300
攻撃力 200
魔法力 150
物防力 75
魔防力 50
回避力 80
それが表に記されていた数字だった。
「ねえ、これ低すぎない?」
「そう、だな。予想以上に低い。」
「こんなステータスじゃ、オークとか倒せませんよ。」
「オークどころか、グレイ・ラビットも無理じゃない?」
「そうですね。
ここだけの話、皆さんはしっかりと鍛錬できているからステータスが軒並み高いのでしょう。
他の人は気づくのがもっと遅いか、気づかないまま引退することになります。
気づくのが早い人は上位ランクに手が届きますね。」
「そうなんですか。修行は欠かさずこれからも続けるべきだということですね。」
「それと、さっきオークを倒したという様に聞こえましたが、もう倒せるようになったんですか?」
「そうなんですよ。今日初めて倒せたんですよ。
……そういえば、オークが身体強化魔法みたいなのを使っていたみたいなんですが、ありえますか?」
「……本当ですか、それは。ちょっとそのオーク持ってきたりしてますか?」
「はい。アイテム袋の中に入ってますよ。」
「では、それを出してもらってもいいですか?」
「いいですけど、ここでですか?」
「そうですね。この上では狭いので、あちらの酒場の方でお願いします。」
少し移動するだけだったけど、酒で酔っている冒険者の前を通らなければいけなかったのは、割と苦痛だった。無意味に視線を受けるのは苦手だ。
「なんだなんだ?」
「さっきライアンに啖呵斬ってた少年じゃないか。」
「それにアナさんもいるぞ。」
「なんか面白いことでもするのか?」
「謝罪させるんじゃない?まだ新入りなんだし。」
「では、出してください。」
案内されたところはちょうど少し開けた場所にシートみたいなのが敷いてあって、その上に出すようアナさんに言われた。
「はーい。
……これかな。」
ドンッ!
「あれ?こんな細っこかったっけ?」
「「「「ええぇぇぇぇーーーー!?!?!?!?」」」」
シーン……。
こちらの様子を眺めていた冒険者たちからそんな叫びが聞こえてきたと思ったら、すぐ静かになった。
「え?ど、どうしたの?アナさん。」
そして、アナさんの顔も驚愕で固まっていた。
え?まじでどういうこと?
面白かったら、是非ブックマーク登録と評価をお願いします。




