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人と神様の国取り合戦  作者: きりきりきりたんぽ
称号『復讐者』
37/125

エドガーからの頼み

時間設定を現代日本のものに直しました。


「さて、これまではこの商会にまつわる話だったが、ここからは皆さんに直接関係してくる話になる。

といっても、その間私は監禁されていたからアリスやオリビアから聞いた話をそのまますることになる。


 まず一番最初にしたことは、孤児院とそこに食料を提供している商店に対して圧力をかけた。だが、孤児院にはそもそもBランクパーティーの剣聖ジーク率いる“アルセナル”が背後についてた。そして、孤児院に食料を提供している商店も簡単に手を出せるような相手ではなかったと聞いている。


 その次から実力行使に移るようになった。皆さんを全員この街の外に強制的に出そうとして、誘拐をたくらんだ。ほかの村に売るように準備までしていた。しかし、それもアルセナルのメンバーに止められたようだ。その止められたのが最初だったからこの計画はその時点でとん挫したようだ。


 そして、最後の手段として全員を亡き者にしてしまおうとしたらしい。とはいっても、さっき言った通りそこまでアラ・デレチャの連中は強くない。

 だから、前商会長はCランク冒険者まで上り詰めたオリビアに襲わせようとした。達成できなければ妹のアリスの命を奪うと脅しまでかけていたようだ。

 そして、オリビアはレオ君の所を襲撃した。そして勝負がついたところで剣聖がそこに現れたため、慌ててオリビアは空間転移の魔法が入った魔道具を使って退散した。


 レオ君が殺されかけたことで、ここまで様子見を貫いていたアルセナルの面々は激怒して冒険で培ったものを総動員してこのアカサ商会本店から不正の証拠を奪い取ると、それを領主様に直接渡した。

 事態を重く見た領主様がすぐに領主様直属の兵士を派遣して、前商会長は確保された。


 これが私が把握している今回の事件の全貌だな。」


 そこでエドガーは一息つき、水を飲んだ。


「さあ、なんでも質問は受け付けよう。いくらでも聞いてくれ。」


 ……ジークさん達のパーティーってアルセナルっていうんだ。初めて知った。

それに直接領主様に会えるってすごいな。

 場違いななことを考えながらも、疑問に思うことはやっぱりたくさんある。


「俺たちが狙われたのは、この街の外の生まれだからと言っていたけど、まだそういう風に考えている人って多いんですか?」


 まあ、まずはこの街が僕達にとって安全か確認しないといけない。


「そうだな、いないとも言い切れないが、本当に一部のご老人とアラ・デレチャの連中だけだ。それに何かあれば私の所に来てくれれば解決できるから安心してくれて大丈夫だ。」


 なら大丈夫そうかな。


「まだ捕まっていないアラ・デレチャの人数はどれくらいですか?」


「確かそこまで多くないはずだ。そもそも、20人くらいしか全体ではいないからな。排他的で危険な考えをしている人間のはそこまで多くないから妥当といったところか。」


 つまり10人くらいだと予想が立てられるな。だったら4人で固まっていたら問題はなさそうだね。


「あとは、……三人とも、何かあるか?」


「魔道具とかについてになるかな。あと、オリビアっていう人にもあってみたい。謝ってほしいとかじゃないんだけどね。今度は普通に戦ってみたいって感じかな。」


 恨みとかではなく、ただ純粋にそう思った。


「私はレオの目を治す方法があるかどうかと、なければ補助できる魔道具がないか、とかです。」


「私もあとは魔道具関連になるかな。ほとんど聞きたいことはアントンが聞いちゃったし。」


 僕達の要望を聞いて、少し考えた素振りをした。


「では、お詫びとお祝いの品を渡そうか。確かもうDランクに上がったのだろう?

アリス、オリビアと一緒にアレを運んできてくれないか?」


「分かりました、兄さん。」


 エドガーの隣に座っていたアリスが立ち上がり、部屋から出ていった。

その直後、エドガーは深いため息をついた。そして、これまでの商人のような近寄りがたい雰囲気がエドガーから抜けていった。


「…商会長としてではなく、一人の兄として君たちに話しておきたいことがあるんだ。きいてくれないか?」


 エドガーの目には深い悔恨の色があった。

その目を前に僕らはそれを拒否することはできなかった。


「…二人には本当に苦労を掛けさせてしまった。オリビアにはCランクまで上げることを強要させてしまったし、アリスには父から直接虐待を受けさせてしまった。二人ともこれまで女の子として生きることができなかったんだ。」


「……だから、君たちに二人の話し相手になってほしいんだ。友達までは言わないから。二人は被害者なのに、街をあるけば子供を殺そうとした悪辣な前商会長の娘として見られて嫌厭されているんだ。」


「……こんなことってないだろう?僕は不用意に動こうとしたから責められる理由があるが、二人にはないんだ。本当に何もしてないんだ。」


「……もう、僕は二人が悲しんでいる顔なんて見たくないんだ。笑っていてほしいんだ。

そのためなら僕はなんでもするつもりだ。だから、……頼む。僕では二人を笑わせてあげられないんだ。」

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