面倒な奴 三度
「街の中の依頼をたくさん受けないとⅮランクになれないんですよ。」
……ああ、またアリスか。なんかめんどくさいな。
「いいですか、あなたたちは私のライバルなんですよ。能力的には私と同じくらいなのにどうしてさぼるんですか?」
アントン、相手してあげて。頼む……。
心の声が通じたのか、アントンがアリスに話しかける。
「あのな、……。」
「何ですか。さぼっていては持ち腐れなんですよ。魔物を討伐に、ひいてはレベル上げに行けるDランクに上がることを目指すべきでしょう?」
「俺たちの格好見てみろ、な?」
「はあ、……なんでそんな恰好してるんですか?まだ、討伐依頼を受けられないでしょう?」
「だから、俺たちはもうDランクなんだよ。そして今日は討伐依頼をしてきた帰りなんだよ。分かったか?」
アリスの目がこれでもかと見開かれた。
「え?どうしてもうDランクなんですか?そんなウソついてもダメなんですよ?」
「はあ、ウソなんてついてどうするんだよ。俺たちは学校に通う前から街の中で雑用を探しては受けてたんだよ。それに能力も十分だって判断された。だから、最初からDランクだったんだよ。」
「…そんな、また、負けた。」
「じゃあ、行くぞ。またな。」
うなだれているアリスの横を通っていこうとする。
「待ってください。」
すると呼び止められた。まだなんか言いたいことでもあるのかな。
「なんだ?」
「ちょっとついてきてください。渡したいものがあります。魔物討伐をするにあたってあった方がいいものです。」
魔物討伐をするにあたって、あったほうがいいもの、ね。
「どうする?」
「いいんじゃない?」
「同じく。」
「賛成ー。」
「じゃあ、ついてきてください。」
そして、街の中を歩くこと5分。大きな建物の前にたどり着いた。
そして、その建物には
ーーー アカサ商会本店 新装開店 ーーー
という垂れ幕がついていた。
……あれ?おかしいな?なんか潰れたって聞いたんだけど。
「どういうことだ?確か、悪いことして、商会長が捕まったって聞いだんだが。」
「だから、新装開店って書いてあるでしょう。父は悪いことをしていたので、今は領主様の所で使用人として鍛えられているそうです。
今の商会長は私の兄です。」
は?兄ってあの時殺しに来たやつか?
「といっても、兄にあったことがある人はほとんど誰もいませんが。」
「どういうこと?あの時のがお前の兄だったんじゃないの?」
「それは兄が説明するといっていました。なので、来てもらったんです。渡したいものもありますが。
ということで、早速兄の所に案内します。」
すたすたと商店の中に入っていく。
それにしぶしぶついていく僕達。ほんと、何を説明したいんだか。
商会内の魔道エレベーターという魔道具に乗せられた。
「あの時、って言うのはなんだ、レオ?」
「そうです。何かあったんですか?」
何か、察したような顔で聞いてくる。そうであってほしくないとも願っているようだった。
「…みんなはどこまで知ってる?あの時のこと」
「え?確か、剣の演習の後意識を失ったあの子の目が覚めるまで側にいたら、そこで誰かに襲撃を受けたって感じだったかな?」
「そこまでわかったら、多分想像がつくと思うけど、その時のがアリスの兄だったって話だよ。」
「……やっぱりか。」
「……どうしてくれましょうか?レオの目はもう治らないのですが?」
「……ふーん、しかも私たちを攫おうとしたのも、確かこの商会の人間だったよね。」
魔道エレベーターの中の空気はただでさえ密閉されていて悪いのに、もっと重くなっていく。
「……皆さんの怒りは私もわかります。」
「へえ、わかるんだ?家族も同然の大切な奴を傷つけられた怒りも?」
「……私も、父に殺されかけたので。それも一度や二度ではなく。」
その声には隠しきれない怒気と憎悪が含まれていた。
「……それは私だけではなく、兄も姉もそうでした。なので、話だけは聞いてほしいんです。」
……あの時やたら絡んできたのもそれがあったのか?まあ、どうでもいいか。
チーン。
「つきました。では、ついてきてください。」
魔道エレベーターのドアが開いた。
降りた階ないはいくつも部屋があり、その中の一つに案内された。
「ここで少しだけ、待っていてください。兄を呼んできます。ソファに座っていても大丈夫です。」
アリスが部屋から出ていった。行った通り兄を呼びに行ったんだろう。
「どう思った?」
「あの時の怒りと憎悪は本物だったと思うよ。僕達と同じものを感じたよ。」
「そうですね。あれは嘘ではないでしょう。」
「まあ、聞くだけ聞いてみようと思ったくらいかな。」
「そうか、なら聞くだけ聞くか。」
その時、
ガチャッ
と音がして、中にアリスとガリガリの男性が入ってきた。
「ここまで来てくれてありがとう。そして、当商会が皆さんに多大な迷惑をかけてしまい、申し訳ない。」
ガリガリの男性が見た目とは合わない低い声で謝罪してきた。
「私がアカサ商会の現商会長で、アリスの兄のエドガーだ。」
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次回、この街に起こっていた異変についてです。




