魔王種と準魔王種
バタンっ!
アナさんが勢いよく部屋に入ってきた。
「ちょっと、ギルマス!なんでおいて行っちゃうんですか!?」
「ああ、悪い。久しぶりに準魔王種をDランク冒険者が倒したんだ。いてもたってもいられなくなったんだ。たとえそれが結構弱いラビット族だったとしても俺がギルマスになってから初めてもことだったし。」
「そうですが、4人がびっくりしちゃうじゃないですか。ただでさえ、強面なのに。」
「ああ、びっくりさせた後だ。」
「そんなんだから、小さい冒険者に嫌われるんですよ。まったく…。
4人とも、びっくりさせてすいませんね。こんな人ですがこのギルドで一番権力もあって、戦闘能力も一番高いヒトです。」
はあ。なんというか、この人がギルマスか。なんというか、思ったよりも普通の人だったな。それよりも準魔王種ってなんだ?
「で、今日ここに来てもらった要件なんですが……。」
「それは俺が説明しよう。」
ギルマスがアナさんから手渡された資料を机の上に広げる。
「お前たちは情報部屋に行ったことがあるか?なかったら後で行ってみるといい。
でだ、今日お前たちが倒したのは冒険者カードの情報から準魔王種だとわかった。って言っても、倒した魔物の種類は普通の魔物か、準魔王種か、魔王種かしか区分がないから安心しろ。
情報部屋のに合わせると、真っ黒の魔物を準魔王種、赤みがかってる魔物を魔王種って呼んでいる。
ちなみにこんな風に見えてるぞ。」
冒険者カードを机の上に置いて、こちらにも見えるようにしてくれた。
冒険者カードの称号の下の方に討伐数の欄が追加されていて、こういう風に記されていた。
名前 レオ
総討伐数 3体
魔王種討伐数 0体
準魔王種討伐数 1体
名前 アントン
総討伐数 3体
魔王種討伐数 0体
準魔王種討伐数 0体
名前 ヒカリ
総討伐数 3体
魔王種討伐数 0体
準魔王種討伐数 1体
名前 シズク
総討伐数 3体
魔王種討伐数 0体
準魔王種討伐数 0体
「冒険者カードは今のうちに返しておくぞ。あとその討伐数とかはあと少ししたら消えるから見たかったら今のうちに見ておいてくれ。」
……総討伐数がかみ合っていないな。確かヒカリは、2体倒したけどあの黒いのを倒したわけじゃなかったしな。
協力して倒しても加算される感じか?そうだとしたら、アントンの討伐数が3になっているのもうなずけるし。
だとしたら、二人で協力して倒したらどっちにも経験値?って言うのが追加されるとしたら、その時の分配の仕方はどうなるんだ?
そんなことを考えていたら、討伐数の欄の文字が薄くなっていって、消えた。
「話を続けるぞ。
お前たちが今日倒したのは準魔王種ってことだな。
準魔王種の討伐は討伐数に関係なくCランクに一気に上がれるほどの功績になる。逆に言えば、それくらい準魔王種の討伐は難しいってことだ。
どうしてかっていうとだな、こいつらは知性を持っている。人間に対する殺意はすべての魔物が持っているが、その中にも冷静さを持っている。つまりただ突進してくるだけじゃないんだ。」
確かに、黒ウサギはヒカリの攻撃をかわしたもんな。普通の魔物だったら、たいてい突っ込んできてそれで終わりだったからそこが違いか。
「それだけじゃなく、普通にほかの魔物よりも強いからな。動物よりも普通に強い魔物の中でもかなり強い部類に入る。
魔物の攻撃を一回でも食らったらわかると思うが、かなり強いぞ。準魔王種とかのレベルになってくると、当たり所が悪かったら一撃で致命傷なんてことにもなり得る。たとえそれがラビット族みたいな弱い族であったとしてもだ。ベア族とかだったらBランクかAランクの冒険者に依頼するレベルだな。」
そうか、アレはそんなに強いのか。でもあれを倒せるようにならなきゃ。
「これで、準魔王種の討伐っていうのの立ち位置が分かっただろう?
ここからが今日の本題だ。
準魔王種を討伐したっていうことを隠すかどうかだ。
言ってしまえば、準魔王種の討伐はDランク冒険者の中でも上位に位置するっていう証拠にもなる。バカな冒険者に絡まれることはもちろんあるだろうが、それだけじゃなく、他の町に行ったときかなり厳しい依頼を受けることを強要されるかもしれないな。
だから、今の所は隠しておいて、十分強くなってからこれを開示するのはどうだ?」
確かにそうだな。ステータスも隠したほうがいいかもしれないって思ってたんだし、こっちも隠したほうがいいかな。
「じゃあ、それでお願いします。レオとヒカリもいいか?」
「いいよ。」
「大丈夫です。」
「そうか。じゃあ、今日の要件はこれで終わりだな。何か聞きたいことがあったらいまだけ特別に答えてやろう。」
「俺は特に思いつかないな。3人は何かあるか?」
あれ?アントンは気づいてない感じ?…いや、これは僕達に言わせようとしている感じか。
「じゃあ、一つだけ。
魔物を複数人で倒した時、経験値って言うのはどういう風に分配されるの?」
「それは、だいたい討伐に直接関係した人で等分される感じだ。
だから、一人で倒したほうがたくさん経験値が手に入る。でも、もしもの時危険だな。
でも、多すぎると全然経験値を得られない。
その効率とリスクを考えた時、だいたいパーティーの構成メンバーの数は5~6人だな。」
「じゃあ、次は私から。レベルが上がったときにステータスがMPやSPが全回復していたんですが、これはいつものことですか?」
「そうだな、レベルが上がるごとにHP、MP、SPが全回復するぞ。加えることがあるとすれば、レベルが上がっていくほど、レベルアップに必要な経験値が増えていくからな。レベルアップするときの全回復を頼りにするのはやめた方がいいな。」
「じゃあ、最後は私から。冒険者カードを見ないでステータスを把握できるスキルって何か知ってる?」
「それは、『鑑定』っていうスキルがあるな。どうやったら獲得できるのかは知らないが。」
「…ギルマス?」
これまで空気だったアナさんからとてつもない寒気を感じる。鳥肌が止まらない。
……え?どうして怒ってるの?しかも顔は笑ってるけど、目は面白いくらい笑ってないし。
「ど、どうしたんだ?」
「以前聞いたとき、とぼけて答えてくれませんでしたよね?
確かど忘れしちゃったな、とか言っていませんでした?
しかも、私質問されたとき知らないって答えちゃったんですけど?」
「いやいや、落ち着けよ。子供達の前だぞ。」
「では、後で詳しく伺いますからね。ちゃんと知ってること全部教えてもらいますからね。」
「あ、ああ、わかった。」
「では、4人とも質問はまだありますか?」
「「「「…ないです。」」」」
「では受付まで案内しますね。」
土曜日から1日2話投稿にしようと思います。
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