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第50話:告白

駐車場では誠一が既にやって来ていてじっと夜空を見上げていた。

誠一は空を見上げるのが好きだ、それが青空でも夕暮れでも星空でも。


近づいてくる足音に気がついたのか、誠一はゆっくりと視線を星達から私に移した。


「ごめん、遅くなっちゃった?」


私がそう言うと、誠一はゆっくりと首を横に振った。


「ううん、僕が早く来てただけだから、といっても10分くらいだけどね」


「そ、そうなんだ」


「うん、そうなんです」


いつものような会話、いつものような笑顔。

それは何かを吹っ切ったような清々しい笑顔だった。


「それでさ、話したい事っていうか言いたいこと……いや、お願い、なのかな?

 とにかく詩遠に言うべきことがあるんだけど、いいかな?」


「――――っ! うん」


来た、と思った。自然と身体に力が入り、手はこぶしを握る。

海沿いの町の夜に抜ける風は涼しいけれど背中にじっとりと汗をかいている、様な気がした。


「それで、えーとなんていって伝えればいいかな……? うーん、よし、ストレートに言った方が分かりやすいよね、うん」


誠一は言うべき言葉を決めたのか、私にまっすぐ向き直った。


「じゃあ、言うね。詩遠、僕と――――?」








“それ”は全く予想だにしていない言葉だった。








言葉の意味を理解する、と同時に心臓が早鐘を打ち始める。


でも、まさか、そんな!


思考は目下大混乱中、口もまともに動かなくて「は」とか「え」に辛うじて聞こえる音を漏らすのみ。


今、自分の目の前で起こっている現実が信じられない。


もしかしたらこれは夢で、今頃本物の私は自分のベッドの上でマイ熊のぬいぐるみに抱きついているのではないか。


こんな展開、夢の中でしかありえない!


でも、震える手で握る汗も、視線の定まらない目も、鼻に感じる潮の匂いも、その存在感を持ってこれが今あっていることなんだと教えてくれる。


誠一はそんな私の挙動不審さに聞こえていなかったのかもと思ったのか、もう一度口を開いた。






「もう一度言うよ。詩遠、僕と結婚しない?」






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