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58. その正体は命がけ

老婆に連れられた俺は今、彼女たちが住んでいる小屋の中にいた。

ルトはその移動の間も自分の頭を持ったままだった。ちょっとしたホラーである。


「さて、本題ですが」

「ああ、そうだな」


魔女たる老婆はコリスを、俺はルトの生首を一瞥してから、


「彼女を治せばいいのですね?」

「どうなっているのか説明してくれ」


お互いの目的がお互いに、微妙に食い違っていた。


「……そっちですか?」

「いや普通先に説明するだろ」

「不死身の貴方が気にする事とは思えませんが」

「俺のはそんな風にグロくない」


俺の『リスタート』は死んだ時、死体や血が残る。ただ、ほとんどは復活した際に消えてしまう。残るのは飛び散った細かい肉へんや血ぐらいだ。


「失敬な! 私のどこがグロい!?」

「そう言ってる口が首ごと正しい位置にないんだが!?」


俺はちょっと思いついて、手から生首を取った。

そして、回転を加えつつ上に向けて投げてみる。


「うぁぁああああ!!」


髪の毛がばさばさ振れて俺の頬に何度か当たったが、無視する。


「……これ面白」


魔女の顔がなんかすごい引きつってるが、止めようとしない。


「ほいパス」


俺は生首を魔女にパスした。

きれいな放物線を描く生首。シュールだ。


「あども。えい」


なぜか俺に返す老婆。


「ちょ、えええええ!!!!」


味方だと思っていた老婆に裏切られ愕然とするルト。

どういう訳だか、しばらく生首でキャッチボールしながら話す事になった。


「全くスケさんは。あの斬魔刀だけは使わないようっ、言っておいたのにっ」

「あの刀にっ、何か悪い事でもあるのかっ?」

「所有者の精神をっ、喰らう刀なのですあれはっ」

「ああっ、そう言う事だったのかっ」


大方、黒いもやのようなものが相手だけでなく、使用者をも喰らおうとするのだろう。

その理由としては、強い悪霊を封じた刀で悪霊を斬る刀を作ったとかそんな裏設定でもしょっているんだろうと思い、適当に流した。

“アンダーワールド”で生きていると、チートの弊害や反動を軽く流す癖がついてしまうものだ。


そして果てしなくどうでもいいが、会話のところどころに促音記号(小さい“つ”)が入ってるのは、そこで生首を受けたり投げたりしているからだ。


「言う事聞かないスケさんにはっ、おしおきですっ!!」

「!?」


老婆渾身のストレートが俺の心のキャッチャーミットに収まった。


「ふぅ、今日の球は走ってるな」


俺と老婆はお互いの力量をたたえながら、かいてもいない汗を腕でぬぐう。


「それで、そろそろ話があるんだが」


俺は目を回して途中から無言になったルトを指さして言った。


「これは、どういう事だ?」

「漠然とした質問ですが、何から聞きたいですか?」

「血が全く流れていない」


そう、俺がルトの首をはじめに持った時は、単にイタズラするつもりだったわけではない。首からも胸元の傷口からも、一切血が流れ出ていないのだ。


「そして、異様に軽い」


頭を持った時、俺が異常に思ったのはその軽さ。

人間の頭ってやつは確か人間の体重の十分の一くらいの重さがあったはずだ。それがどうして軽いのかと思って思わず上に投げてしまった。

回転をかけたのは遊び心で、老婆に投げたのは完全な悪ふざけだが。


「何と言えばいいのでしょうか……見せた方が早いですね。スケさん?」


老婆はそう言うと、机の上にルトの生首を置いた。


「……ふん、仕方ないな」


そう言うと、ルトは両目をつむって叫んだ。


擬態装甲解除(あーまーていくおふ)!!」


突如、劇的な変化が現れた。

ルトの肉体がみるみるうちに消えその新の姿が今明かされた。


「……は?」


現れたのは白くて細い手足と、あまりにスリムな体、美しい見事な丸みを帯びた頭部。

そう、


「コイツとんでもないものをテイクオフしやがった!!?」


平たく言うと、白骨である。


「スケさんは元々、スケルトンなんです」


俺はあんまりな事に愕然としつつ、


(スケさん……ルト……ん?)


二人に名前を付けるセンスがない事も大体理解した。


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