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25. オロチの相手は命がけ

コリスはえせ科学ボディの脅威を理解したのか、カルマ値上昇を覚悟で大鎌に魔力を込めて戦い始めた。

これで俺が無為に殺される事はなかろうと思っていると、恐るべき速度でオロチが動き回るため、その余波で壊れた遺跡の破片が俺を無意味に巻き込んだ。


「ハァッ!」


コリス渾身の一撃は、オロチの鱗を貫通しダメージを与えるがそれもすぐに再生してしまう。そもそも、あの巨体にあの程度の傷を与えても、虫に刺された程度だろう。


一方オロチの攻撃は、一つ一つが凶悪な必殺の一撃としてコリスを襲う。


空を走る尻尾が、巨大な蛇のアギトが、飛び散る猛毒が、崩れ落ちるがれきが――コリスを襲う。

大鎌で受け流し、後ろに飛んでかわし、俺を盾に相殺し、危うく潜り抜け――それらをなんとかよけるコリス。

……途中でなんだか尊い犠牲があった気もするが。


「おいキョーイチ、少し時間を稼いでくれないか?」

「……」


コリスが助力を頼んでくるが、俺は既に相手にすらされていない。

ただ攻撃の余波に蹂躙されているだけで、俺自身が戦うどころか普通にやれば時間稼ぎですら、一秒たりともできやしないだろう。


だが、俺はそれでもうなずく。

俺がここにいる意味がないなんて――思いたくない!


それに、これは俺自身の目的達成のための我がままだ。コリスはただただ文句も言わずついて来てくれているだけに過ぎない。

それなのに俺が何もできないなんて、言うのは我がまま以上に甘えですらあるだろう。

だから、俺は俺なりの戦い方をするまでだ。


と思ったところで、オロチがコリスに向かって大口を開けた。

攻撃の予備動作を見てかわすコリスと――


――飛びこむ俺。


確かに俺は弱い。力がないなら速さもないし、頼りのチートは死んでも死なないだけ(・・)の『リスタート』。

だから俺が出来る戦い方なんて、自分が死ぬ事前提のあり得ない選択肢を選び取る事だけだ。


俺はあらかじめ拾っておいた石をオロチの目に投げつけた。直後絶命する俺。


「ぁぁぁああぁぁあ!!?」


俺が復活した時には、オロチは片目をやられて悶え苦しんでいた。

無論、俺の力だけじゃそこまでの傷にならないだろう。

しかし俺は、あいつが最高速に達した瞬間目に向かって投げ入れた。

俺の投擲速度はともかく、相対速度はかなりのものだ。


普通なら、正面から投げる必要があるこの方法は、自分が死んでしまう上に効果が未知数。

だからこそ躊躇うか、気負い過ぎて相手に気取られたりする事もあるだろう。


だが、『リスタート』のある俺に死への恐怖は全くない。仲間のためならなおさらだ。

結果、オロチ自身の速さが上乗せされた石は、絶妙な奇襲としてオロチの瞳に突き刺さった。


そして、その隙を見逃すほど、うちの魔女はバカじゃない。


「くらえッ!!」


どこぞの禁断の魔法とは比べ物にならない速さで完成された魔法を、コリスは大鎌にまとわせ振り下ろす。


「ぐぁぁあああ!!」


突き刺さった大鎌から、体内に直接流されたコリスの雷撃は、オロチの体を縦横無尽に蹂躙した。


「がぁ!!」


苦し紛れに毒液を吐くオロチ。

俺はコリスを攻撃範囲から外れるように突き飛ばす。

避けきれないだろう分は俺自身を盾にして防いでやった。


「貴様……不死身か」

「これでも勇者なんでね」


軽口をたたく俺だったが、何故か冷や汗が背中を伝った。

オロチの片方しか開いていない目が、まるで俺の全てを見透かすように研ぎ澄まされているのを感じる。


「はは、ははははは、はははははははっはっはっは!!!」


オロチは突然狂気と歓喜の合わさった怖気を誘う笑声を響かせた。


「なんと数奇な! 不死身の能力チートを狩るのはこれで二人目だ!!」


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