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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第6章 キーンの冬期休暇

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第75話 キーン、衣類をまとめて強化する。


 下着を強化したキーンだったが、下着1枚を強化するのに30秒かかってしまった。


 前回人馬共に強化した騎兵中隊100人に対して下着を強化するとなると200枚×0.5分=100分かかる計算になる。それでもすごいことではあるが、効率重視のキーンからすると無駄が多いように思える。下着だけでなくその上に着る物や鎧などの装備まで含めると100人分の強化に半日はかかる。それに他人ひとの下着を延々と見ていたいわけではないし、女子の兵士までいることを考えると今の方法は問題が多い。


「うーん。衣類と防具をひとまとめに強化、なおかつ視界に入っている全員分を一度に強化できればかなりすごいんだけどな」


 今まで魔術の発動対象について漠然と目に入っているものという認識でキーンは魔術を発動していたが、ここにきて魔術の発動対象について真剣に考え始めた。


「衣類の中で、下着と言えばシャツとパンツ。これはセットになっているし、よほどのことがなければ一つと考えていいはず」


 女性の場合は胸当てなどもあるのだが、キーンにはそこまでの考えはない。


「軍人の場合基本的に着ている物は全員一緒だ。それなら、衣服をシャツやズボンといって別々に考えなくても衣服としてひとまとめにしてもいいんじゃないか?」


 今着ていたシャツとパンツをまた新しいものに替え、さらに普段着で上に着るシャツを着てズボンもき、それら全体を意識する。


「強化600!」


 後から着たシャツは白かったがズボンはベージュっぽい色合いだった。強化が重ねがけされていくうちに、どちらも灰色がかった色合いになってしまった。下着の方も確認したところちゃんと灰色になっていた。うまく着ている物全部、特に見えていなかった下着も強化が定着した。


「まずは第1段階は成功した。あとは、これを視界全体に対して発動するだけだ。これについてはさすがに試すことが難しいからそのうちだけど、これがたとえできなくても、100騎分の衣服の強化なら30秒の100人分で3000秒。あれ? よく考えたら発動さえしてしまえば終わるまでの30秒待たずに次に移れるから、5秒あれば一人分の強化ができる。急がなくても10分もかからないな」


「強化された衣服に十分な強度があるようなら、人に対する強化の強度をもっと上げても大丈夫かもしれない。あんまり上げると、さすがに違和感が強くなるだろうけれど、20倍くらいなら何とかなるかもしれない。まだ自分でも20倍は試したことがないから、やってみるか。

 強化20倍!」



「ほー。体がここまで軽くなるのか。ここまで軽いと僕でも違和感がある。慣れればなんてことないと思うけれど、僕以外の人に慣れさせることは難しいから、今まで通り強化10倍でいいか。

 あれ? 体が光っていない? 手先はかなり光っているけれど、強化した服から光が漏れていないぞ。これは新しい発見だ! 衣類を強化して強くした以上に意味があるかもしれない」


 強化した衣服で覆われていない手や顔はかなり光り輝いているが、強化した衣服に隠れている部分からはわずかに光が漏れ出てくるだけだった。今までは強化した体から光の素が漏れ出てきたような感じで、何を着ても光を防ぐことができなかったが、今は漏れ出ているのは強化した薄い布から透けたわずかな光だけだ。


 試しに今着ている服の上から上着を着たところ、上着から全く光が漏れてこなかった。


「良い感じだ。だいたいのことが分かったから、そろそろシャワーを浴びてそれから食堂に行こう。着替えはこのままでいいか」


 今着たばかりの下着なのでそのまま着替えに使ってしまおうと、タオルだけを持ってキーンは1階にあるシャワー室に向かった。誰かに見咎みとがめられる可能性はあるが、洗濯が間に合わなかったとでも言えばいいと思っている。新年帰寮初日から洗濯が間に合わないということは普通ないが、その辺についてキーンには思い至っていない。


 シャワー室に黒玉を連れていくと説明が面倒になりそうなので、黒玉は夕食時にみんなに紹介しようと思い部屋に残している。



 シャワー室前の更衣室に入るとちょうど他の寮生たち数人が服を着替えて出ていくところだった。


「よう、キーン久しぶり。今年もよろしくな」


「こちらこそ」


「それじゃあな」



 更衣室で裸になってシャワー室に入り、シャワーを浴びて体を拭いて下着をつけていたら、今度はトーマスが更衣室に入ってきた。


「よう、キーン。なんだか灰色でしゃれた下着だな」


「ちょっとね」


「休みの間、何かいいことでもあったのか?」


「いいことといえばいいことかな」


「なに! 本当か!?」


「本当だけど? この下着、実は強化を軽く定着させたものなんだよ。しかも肌触りも変わらずに」


「えっ?!」


「だから、強化」


「わかった。キーンだものな。俺はシャワーを浴びる」



 トーマスはさっさと裸になってシャワー室に入っていった。


 何となく釈然しゃくぜんとしなかったキーンだが、トーマスが衣類の強化について理解したようなので、それはそれでよしとした。


 シャワーを終えていったん部屋に戻ったキーンは、強化を自分自身にかけて頭の四方から軽い電撃を髪に当てて乾かしておいた。休暇中、自宅の居間でそれをしていたら、髪の毛が傷むからやめた方が良いとソニアに言われたのだが、温風で乾かすよりよほど速くて便利なので、頭を洗った時にはいつもこの方法で髪の毛を乾かしている。軍学校の校長のようになってしまった老後の自分の頭を思い浮かべたが、その時はその時と思っている。



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