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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第6章 キーンの冬期休暇

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第70話 キーン、ミニオンを定着させ黒玉を作る。


 一応、邪魔になったからミニオンも大剣の練習には役立ちそうだと分かったキーンは気分を少しだけ良くしたところで、


「それじゃあ、次は中身のあるミニオンで試してみるか」


『龍のアギト』を井戸の脇に立てかけ、先ほどのミニオン×回数を改造し、ミニオン部分を空ミニオンではなく、命令記憶部分を10個ほど内蔵したミニオン×回数を作ってみた。


「定着までの回数を細かく調べてもあまり意味ないから、定着させるには1000回というのを目安にしておけばいいな。『龍のアギト』があんなになったのは確か強化1000を3回かけたはず。ミニオン1000を3回かけるより、いきなりミニオン3000の方が途中で間が空かない分効果が高そうだから、3000でいっちゃお。ミニオン3000!」


 目の前にミニオンが現れた。まだ、同じ場所にミニオンが生れ続けている。見た目は最初のうち変わらなかったが、少しずつミニオンの色が銀色からくすんだ灰色に変化し始めた。さらにその灰色が濃い鼠色になりやがて真っ黒になったところでミニオンの生成が終わった。そのミニオンの表面はツルツルで黒光りしている。


「できた? なんだかテカテカで真っ黒いミニオンができてしまった。命令記憶部分は空だけど3万個詰まっているわけか。さて、このミニオンに何か命令を覚えさせてみるとしよう」


「考えたら、後から命令を覚えさせるのはどうすればいいだろ? 取りあえず僕が作ったミニオンだから僕の言うことを聞くかもしれない。試しに、

 そこに立てかけてある大剣『龍のアギト』を持ってこい」


 黒いミニオンはキーンの言葉を聞いてフラフラと井戸の脇に立てかけてあった『龍のアギト』の場所まで飛んでいき、持ち手を体の中に入れて、『龍のアギト』をキーンのところまで宙を飛んで運んできた。


「あれ? こんなに簡単にできちゃうものなのかな?」


 ソニアとアイヴィーは台所の中にいるので誰も見ていなかったため、キーン一人で悩み始めた。


「ミニオンの命令部分も空なら、何が大剣で、何が井戸なのかもわからないはずなのに不思議だ。『龍のアギト』が変化したみたいに、このミニオンも1段階も、2段階も優秀になったのかな? 作っているとき僕の知識が知らない間に流れ込んじゃったのかな? まあ、深く考えても仕方がない。定着してしまった以上は名まえがないと不便だし、そうだなー、名まえは『黒玉』にするか。ちょっと安直かもしれないけれど、そんなに悪い名前じゃないだろう。

 ミニオン、お前の名まえは『黒玉』だ。分かるよな?」


『黒玉』が目の前で上下に揺れた。分かったと頷いているようにも見える。今までのミニオンもいってみればキーンの子分だったわけだが、そのうち消えてしまう物なので愛着などわかなかった。黒玉は壊さない限り消えてしまわない。そういった意味でもキーンは黒玉に早くも愛着を抱き始めた。


 どの程度耐久力があるのかはわからないが、キーンの大剣『龍のアギト』をして黒変こくへん前のミニオンが10回耐えたところをみると、『龍のアギト』の斬撃を100回程度なら簡単に耐えそうだ。


 今のところ『黒玉』にはっきりした意思があるのかは分からないが、初めての子分ができた気がしたキーンはさっそく『黒玉』をアイヴィーたちに見せるべく、『龍のアギト』を手にして台所に入っていった。


「キーン、ミニオンはどう、……」


 キーンと一緒に入ってきた真っ黒なミニオンを見たアイヴィーはことばが止まってしまった。


「キーン、それが新しいミニオン?」


「そう、黒くて丸いから『黒玉』って名まえを付けちゃった。『黒玉』は今までのミニオンと違って消えないから。それと、僕の言うことが分かるみたいで、言ったことをやってくれるんだ。

『黒玉』僕の部屋の場所はわかるかい?」


『黒玉』はその位置で上下に揺れた。やはりキーンの知識を持っているようだ。


「『黒玉』、『龍のアギト』を部屋まで持っていって片付けてくれ」


『黒玉』はキーンの手に持った『龍のアギト』の持ち手を体の中に取り込み、そのまま持ち上げてユラユラと台所を出て行った。


 ソニア、アイヴィーともども3人で『黒玉』の後を追って2階に上がったら、ちゃんとキーンの部屋の扉を開けて中に入っていった。


 キーンたちが部屋に入ると、『龍のアギト』はキーンのベッドの脇に立てかけてあった。そこは、いつもキーンが『龍のアギト』を置いている場所である。


 そのあと『黒玉』はキーンの元に戻ってゆらゆら揺れている。


「キーンくん、スゴイ!」


「キーン、こんなことができるとは。私でも本当に驚きました。テンダロスが生きていたら大騒ぎしていたかもしれません」


「ビックリしてくれるのは嬉しいけど、ちゃんと考えて『黒玉』を作ったわけじゃないんだ。たまたまミニオンを重ねて作っていたら、定着が起きて、さらに重ねて行ったところ、黒く変化して『黒玉』ができたんだよ」


「ミニオンって重ねることができる物なの?」


「あまり意味はないんだけれど、ほかの魔術も重ねがけができるんだ。僕の『龍のアギト』も元はアイヴィーに作ってもらった木の大剣だったんだけれど、強化を合わせて3000回かけたら強化が定着してあんなになったんだ。それで、今回は同じ場所にミニオンを3000個重ねたらああなっちゃったんだよ」


「3000回!?」


「そう、3000回」


「キーンくんだものね。ということは、今回はまん丸のミニオンを重ねて定着?したんなら、他の形のある魔術も重ねていけば定着するのかな? そうしたら、何でも形のあるものを魔術で作れそう」


「そうかもしれない。形のある魔術というのがミニオン以外思い浮かばないんだけど。ミニオンは別に丸くなくてもいいからソニアの言うように複雑な形以外なら何でも魔術で作れそうだね」


「キーン、それなら、試しに『龍のアギト』の鞘を作ってみませんか? 布を巻いただけだと見た目が危なっかしいし、取り扱いが不便でしょう」


「そうだね。よし、やってみよう」


 キーンはいったん、立てかけてあった『龍のアギト』を手に持って、


「ミニオン!」


 そう一言。キーンの前には長ぼそい先のとがった銀色の平たい棒が浮いていた。


「外側はこれくらいでいいかな? それじゃあ、これは消して」


 鞘の外観を持ったミニオンがいったん消えた。


「内側に『龍のアギト』がぴったり入らないといけないから、『龍のアギト』の周りにさっきのミニオンを作ればぴったりしそうだ」


「ミニオン!」


 手にした『龍のアギト』の剣身を覆うようにさきほどのミニオンが生れた。


 ミニオンから『龍のアギト』を引き出し、また納めるキーン。


「ちょうど良いみたい。

 それじゃあ、一度ミニオンを消して」


 鞘型のミニオンが消えたところで、


「それじゃあ、本番、ミニオン3000!」


 銀色の鞘型ミニオンが目の前に現れ、その色がだんだんと黒ずんでいき、最後に真っ黒になった。


「できちゃった」


「キーンくんなら簡単になんでもできちゃうとは思っていたけれど、想像以上だった。黒い剣身の大剣も相当禍々(まがまが)しいけれど、新しくできた鞘も真っ黒で禍々《まがまが》しいわ」


「そうかなー。僕から見ると、すごくカッコよく見えるけれど。それに、この鞘ほとんど重さがないんだ」


「魔術で作った鞘だからかなー? 作ったキーンくんが納得しているんなら、それはそれでいいんじゃない」





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