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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第6章 キーンの冬期休暇

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第63話 キーン、二度目の襲撃を受ける。


 自宅を出て、用心のため自分自身に強化10倍をかけて軍学校の寮に向かうキーンだったが、夕方前のまだ明るい時間だったにもかかわらず、体を覆う6色の光がかなり目立つ。


 往来の人や荷馬車の御者は当然として、通りに面した建物の中からもキーンを物珍しく眺める人が大勢いた。


 確かにこれでは目立ちすぎる。衣服で光が隠れればいいものを、服を着たまま強化すると着ている服まで光ってしまうのが問題だ。


 何か上から着ることで光が漏れなければいいがと思い、キーンは一度強化を解除した上で上着を脱いで、再度強化をかけてみた。


 その後上着を着たのだが、やはり上着を着たとたん、上着が光りはじめた。光の素が体から漏れだして、それが発光しているようにキーンには思えた。


 発光については諦めたキーンは、奇異な目で見られたところで刺客に襲われて不覚をとるよりよほどましと思い直し、今まで以上に速足で寮を目指すことにした。


 結局のところ、尋常じんじょうではない速足でさらに衆目を集めてしまったのだが、本人は気付いていない。



 軍学校は王都の郊外寄りの施設のため、学校の近くでは民家も少なくなるし自然と人通りも少なくなる。しかも今はもう黄昏たそがれ時だ。強化中のキーンは遠くからでもかなり目立つのだが、そのかわり本人からすれば視界はかなり明るく遠くのものも良く見える上に、聴覚なども敏感になっている。


 ちょうど50メートルほど先の立ち木の裏側から金物をこすり合わせるようなわずかな音がした。さやから剣を抜いた音にも聞こえた。キーンは歩く速さを変えずそのまま進んでいるが、意識は先ほどの音のした方に向いている。今のキーンの速度だと実時間で7秒ほどで50メートル進んでしまう。


 このとき、ふとキーンは授業で習った『戦術』という言葉を思い出した。


 自分が襲撃者の立場に立って、自分を襲撃するとしたらどうすれば『効率』が良いか?


 この場合の『効率』とは、襲撃の成功を最優先にしつつもこちらの被害を最低限に抑えること。


 昨日の襲われた時は、一人だけの襲撃だったが、仲間がいたようだ。二人がかりで襲撃するなら、当然一人をおとりに使い、スキを突いて残りの一人が決定的な攻撃をする。おとりは防御力が高く、攻撃者は攻撃力が高ければ理想的だ。


 今の状況に当てはめて考えると、木陰にいる何者かはおとりで、どこかにもう一人潜み自分のスキを狙っている。


 そう思って周囲を警戒したところ、通り過ぎるまで気づかなかったが、後方にわずかではあるが息遣いきづかいが感じられた。後方に潜んだ敵が、どういった手段で攻撃してくるのかは分からないが、気付いた以上対応は容易だ。


 強化によりキーンの思考も高速化しており、木陰の気配に気づいてからここまでの経過時間はわずかに5秒。その木まで15メートル、時間にして2秒。


 そこで目の前の木の陰から短剣を抜いた覆面の襲撃者がキーンの目の前に躍り出た。距離はすでに5メートルを切っている。襲撃者は体つきからいって男のようだ。


 男は高速で近づいてくるキーンにぶつからないよう、体をずらせながら短剣を突き出してきた。




 本来ならぶつかるくらいがちょうどいいのだが、キーンの接近スピードが想定外だったようで体をずらしながらの手先だけの及び腰の軽い攻撃となった。キーンは突き出された短剣の初撃を簡単にかわし、後ろに潜んでいると思われる第2の襲撃者の射線が今の男に遮られる位置に素早く回り込んだ。そして、


『アタックミニオン』『ガードミニオン』


 直接魔術攻撃をすると襲撃者を即死させる恐れがあるため、キーンはミニオンを二つ作り出し、そこで振り向いた。


 短剣を突き出した男は、先ほど軽い攻撃だったのにもかかわらず、初撃をかわしたキーンに対して二撃目が続かず、通り過ぎたキーンに慌てて振り向こうとしている途中だった。


 キーンから見て、その男の先、20メートルほどに、魔術師らしきフード付きの黒いローブを着た男が杖を突き出していた。詠唱はすでに終わっているらしく、杖の先に火球が形成されつつある。おそらくファイヤーボール。キーンとの射線は完全に目の前の男で塞がっているので、男諸共(もろとも)キーンを吹き飛ばそうというのだろう。


 今の強化状態のキーンには直撃でもないファイヤーボールではダメージなど入るわけはないが、黒ローブの男の放つファイヤーボールが直撃するだろう目の前の男は、よほどの魔術耐性がなければただでは済むまい。


 キーンの作り出したアタックミニオンが黒ローブの男に向かって飛んでいきながら、男が魔術を発動するとほぼ同時に電撃を放った。


 アタックミニオンと魔術師の間で二つの魔術がぶつかり爆発が起きた。やや魔術師よりでの爆発だったが、魔術師はひるんだだけでダメージをさして受けなかったようだ。


 その爆発に驚いたのは、キーンのすぐ前で短剣を構えキーンに再度斬りかかろうとしていた男で、自分の背後で爆発が起こったことで、軽く前につんのめり、勢いがそがれてしまった。しかもターゲットと自分の間には見たこともない丸い球がふわふわ浮かんでいる。かなりヤバそうな感じがする。そこまで考えたところで男の意識が飛んだ。ガードミニオンが放った電撃が男を直撃したのだ。


 黒ローブの魔術師も、ファイヤーボールの爆発ではダメージは受けなかったが、直後にアタックミニオンが放った次の電撃を受けてしまい、その場に倒れてしまった。


 アタックミニオンを消して、代わりにその魔術師の上にもガードミニオンを浮かべたあと、キーンは周囲の気配を探り、怪しいものはいないことを確認したうえで、昨日顔を出した近衛兵の詰所に向かった。



 前回の襲撃時と同じように詰所から10人ほどの近衛兵たちがやって来て襲撃者を連れていった。今回はその場で簡単に近衛兵の隊長に状況を説明しただけでキーンは解放されている。




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