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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第5章 キーンの休日

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第52話 キーン、青春する1。準備


 よくわからないまま少尉になってしまったキーンは、ゲレード少佐と別れ1限の始まる教室に戻っていった。


 キーンが教室に戻ったところで、教室のみんなが駆け寄ってきたのだが、間を置かず1限の担当教官が教室に入ってきたので、生徒たちはすぐに自席に戻っていった。


 キーンが席に戻ったところで、隣の席のソニアが小声で、


『ねえ、キーンくん、何があったの?』


『うーん。応接室で軍総長に会ってきた』


『軍総長って! それで、それで?』


『それで、今回のランデル少佐の騎兵隊の件で礼を言われた』


『すごい! でも、それだけ?』


『報奨金をくれるって』


『やったじゃない』


『それと、今日から少尉になっちゃった』


「少尉になったー!」


 教室の一番後ろでつい大声になったソニアに教室の面々が振り向いた。授業を始めていた教官が咳払せきばらいをしたところで、ソニアが、


「すみません」と謝り授業が再開した。


『キーンくん、詳しい話はあとで』


『うん』


 その後は真面目にソニアもキーンも授業を受けた。


 1限が終わり、2限までの授業の合間にみんながキーンを囲んだので、


「……、そういう訳で少尉になっちゃった」


 今度はトーマスがみんなを代表して、


「ということは、これからはキーンのことは、アービス少尉殿って呼ばなくちゃ俺たちは怒られるのか?」


「いやいや、これまで通りキーンって呼んでくれよ」


「わかった。キーン。おまえならそう言うと思ったよ」


「それで、少尉になったらここを卒業しちゃうのか?」


「まさか。僕の仕事は、ここで勉強することだって」


「なるほど。さすがは軍総長だな」


 その言葉を最後に次の授業の先生が教室に入ってきたので、キーンの報告会はお開きとなった。



 その後も授業の合間にいろいろ聞かれたが、キーン自身知っていることはそんなにないので、みんなの興味も薄れていったようだ。



 そして、昼休み。ソニアたちと食堂で食事しながら、


「ソニア、ちょっと教えてもらいたいことがあるんだけど」


「教えてもらいたいことってなに?」


「ソニアって王都出身?」


「王都は王都でも東の外れだけどね。それで?」


「次の休日友達から王都で一緒に遊ばないかって誘われているんだけど、どこに行けばいいのか見当がつかないんだよ」


「あら、その友達って女子なの?」


「うん。付属校の時仲の良かった女子」


「ふーん。キーンくんもやるわね」


「えっ? 僕が何をするの?」


「まあいいわ。そーねー。女子と一緒に街歩きするなら、お買い物のお付き合いが喜ばれるわよ」


「いきなりお買い物?」


「いきなりはないな。向こうから買い物に付き合ってって言ってきたならまだしも、こっちからいきなり買い物付き合うよって言えないものね。

 こういうのって、意外と難しいわね。うーん。

 それなら、お芝居しばいを見に行くとかはどう?」


「そう言えば、僕は生まれてから一度も芝居を見たことはなかったな」


「それはそれですごいわね。キーンくんらしいわ」


「芝居って面白いのかな?」


「好みによるけれど、たいていは面白いと思うわ。大切なことはあなたが楽しむんじゃなくて、お友達が楽しむことよ」


「そうだったね。いまどんな芝居をやってるんだろう?」


「その辺は私は詳しくないから分からないけれど、劇場は王都の繁華街の近くにかたまって建っているからそこで面白そうなのを選べばいいわよ」


「そういえば劇場らしい建物が並んでいる広場のようなところを一度通ったことがあったかもしれない。近くに時計台があった」


「場所はそこよ」


「それで芝居って何時間ぐらいあるの?」


「たいてい午前中に1回、午後から2回だから、2時間から3時間じゃない?」


「結構長いんだ」


「楽しければいいじゃない。午前中お芝居を見て、食事して、それから繁華街を一緒に散歩してれば、きっと買い物に付き合ってって向こうから言ってくるわよ」


「そうなんだ」


「そういうものなの。あと音楽会なんかもいいけれど、たいていは夕方から夜遅くなってしまうので、寮の門限に間に合わなくなるから難しいわね」


「音楽会も行ったことがないけど、寮の門限は何時だったっけ?」


「消灯の1時間前の9時よ。キーンくんもこれから音楽会も含めて、いろんなところに行けばいいわよ。楽しみが増えてよかったじゃない」


「そうだね。ソニアありがとう」


「どういたしまして」


 キーンはソニアのアドバイスで芝居を見に行くことに決めた。




 その日のゲレード少佐による補習が終わって寮に戻ったキーンは、さっそく『次の休みには芝居を見に行こう』と手紙を書いてキャリーミニオンに持たせてクリスに送っておいた。集合場所は劇場の並ぶ一角に立つ時計台の前。時間は9時ということにしている。それと、休日の前日には家に戻るとアイヴィーにもキャリーミニオンを送っておいた。その際少尉になったことは伝えていない。


 夕方送ったミニオンだったが夜にはクリスから『楽しみにしている』という返事が届いた。もちろん、アイヴィーからも了承の返事が届いている。


SF短編『我、奇襲ニ成功セリ。トラ、トラ、トラ』

https://book1.adouzi.eu.org/n9346gb/ 2021年9月25日加筆しましたので、未読の方はよろしくお願いします。

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[一言] ソニアたん!やきもちを焼け!焼くんだ!
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