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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第4章 9月危機、光の騎兵隊

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第46話 騎兵中隊、襲撃準備


 サルダナ軍本営会議を退出したランデル少佐は、自身の中隊へ急いで戻り、麾下きかの3人の小隊長を集めた。軍学校でランデル少佐の助手を務めるサール中尉は第1小隊の小隊長である。


「ダレン軍がバツーを囲んでいることは、諸くんらの知っての通りだ。その数は10万と言われている。わが軍全軍を上回る戦力だ。しかもわが軍は北方要塞でセロト軍を迎えている。

 委細いさいは省くが、結論として軍学校のアービス生徒にわが中隊の全騎馬を強化してもらい、ダレンの王族がいると思われるダレン軍の本陣を襲撃する。襲歩並みの速度が出せるならバツーまでの距離は道なりで200キロ強、時速50キロで駆ければ4時間だ。強化の持続時間は8時間弱。十分だ」


「中隊長、4時間も襲歩の速度での騎乗は無理ではないでしょうか?」


「通常なら無理だが、われわれ自身もアービス生徒に強化してもらうので大丈夫なはずだ。もしだめでも歯を食いしばって頑張れば何とでもなる」


「アービス生徒を同行させれば、作戦遂行が確実になるのでは?」


「アービス生徒は軍学校生徒とは言えまだ子供だ。戦場には連れ出せない。

 1時間で旅程1日分の出撃準備をなせ。あと、蹄鉄ていてつなどは多めに用意しておくか」


「「はいっ!」」



 1時間後、騎兵中隊駐屯所からランデル少佐以下99騎が常歩なみあしで軍学校に向かった。キーンに準備させるため小隊長ではあるがサール中尉は先に軍学校に向かっている。



 軍学校は既に放課後だったため、サール中尉は自分の馬を軍学校の馬場横の厩舎に預け、寮に向かった。


 寮の玄関でキーンを呼んでもらったが、まだ帰寮していないということだった。通りがかった生徒によると教室で補習を受けているということだった。


 サール中尉は急いで3号生徒の教室に向かい、扉をノックする。


「近衛兵団騎兵中隊のサールです」


『どうぞ』


 中から、ゲレード少佐の声がした。


「失礼します」


 中に入ると、ゲレード少佐がキーンに対面で補習をしていたようだ。


「サール中尉がやってきたということは、アービスに用事だな」


「はい。すでに馬場に中隊全騎が集まっていると思いますので、アービス生徒に軍馬と騎乗者ごと『強化』をかけてもらうよう軍からの依頼です」


「分かった、アービス行ってこい。というか私も興味があるから、ついていってみよう。サール中尉、良いだろ?」


「はい。問題ありません。それでは行きましょう」



 馬場への道すがら、


「騎兵隊が出撃するということは、まさか北部要塞が抜かれたのではあるまいな?」


「いえ、少佐ですからお教えしますが、バツーがダレンに囲まれました。われわれはそちらの方に急行する予定です」


「セロトが北を攻めてきたのと連動していたわけか」


「おそらく。しかもダレン軍の規模は10万という話です」


「なんと。それに騎兵隊は向かっていくというのか?」


「そうなりますが、敵の本陣には王族の所在を示す旗が立っていたそうです。われわれはその旗に向かって襲撃を敢行する予定です。アービス生徒のあの『強化』があれば十分勝算はあると思います」


「なるほど」


 キーンもその話を聞いて、なるべく『強化』そのものの強さを強めることはできないものかと考え始めた。同じ強化魔術の場合、重ね掛けすると、後に掛けた強化魔術に単純に上書きされてしまうので、重ね掛けは無意味だ。そういった意味で、強度を高めることができればいいと思ったわけだが、なぜ今まで強度を強めず回数にこだわっていたのか思い出したようだ。


「そうだ!」


 いきなりキーンが声を出したものだから、同行していた二人も驚いたようだ。


「どうした、アービス?」


「はい、強化魔術そのものの強度を上げることができないかと思って考えたのですが、何とかできると思います」


 キーンはこれまで、1回当たりの魔力量を最大効率にあたる設定にしていたため、無意識のうちに魔術ごとの最適強度で魔術を発動していた。


 先日ブラックビューティーへ強化をかけた際、一度に強化を掛けた時の反応が怖かったので10分の1刻みで強化することを考えた。その時の考え方は、10回重ねれば1となるよう強度を調節しただけだった。


 よく考えれば、簡単な話だったわけで、自分でも拍子抜けしまった。今回の場合はいくら強化しても良いはずだが、一応様子見はした方がいいだろう。


「サール中尉、今回の強化ですが、当然強い方がいいですよね?」


「もちろんだ」


「10倍までなら問題なくできそうです。ですが、そこまでの強度を人に試したことがないので少しずつ強度を上げていきたいんですが」


「アービスの言っているのは、この前の強化のさらに10倍まで強化魔術が強くなるということなのか?」


「はい」


「わかった。是非ぜひ試してくれ。私にまず10倍を掛けてくれ」


「いきなりは怖いので、2倍からいきませんか? どうせ後から掛けた強化で上書きされますから」


「そうなのか。それなら2倍からで頼む」


 歩きながらではあるが、サール中尉の体が6色に輝いた。明らかにというほどではないが、その光は前回の時より強いような感じもする。


「どうです?」


「体がすごく軽い感じはするが違和感は全くない。遠くも良く見える。ちょっと待ってくれ」


 そういったサール中尉がその場で飛び上がった。垂直飛びだが軽くキーンの頭の高さを越えていた。


 それを見たゲレード少佐が、


「すごい。だが体が慣れないと武器を振るうのは難しそうだな」

 

「いえ、それがどうも思ったところに武器を振ることができる自信のようなものが湧いてきてるんですよ。単純に力が強くなったり速くなったりしたわけでなく全6種の強化があってこそだと思います」


「なるほど」


「それじゃあ、サール中尉、次は4倍でいきます」


「面倒だから10倍で頼む」


「分かりました。強化10倍」


 強度10倍の強化魔術をかけられたサール中尉だが、今度は体を覆った6色の光がかなり明るく輝き始めた。まだ日のあるうちなのにこの明るさだと、夜間では相当目立ちそうだ。


「体の方は全く快調で異常ない。異常と言えば目を凝らすとかなり遠くのものが見えることと、遠くの音が聞こえるくらいだ。ただ、この光は相当目立つな」


「うーん、さすがにその光をどうこうするのは今のところ無理みたいです」


「サール中尉、ズボンと上着を脱いで強化を掛けてもらってから服を着たらどうだ?」


「騎乗者はいいかもしれませんが、馬がどうしても光ってしまいます」


「それもそうなんですが、光の素のようなものが体から漏れ出ているようで服を後から着てもやはり光は抑えられないようです」


「それなら仕方ないか。この前の話だと、時速50キロほどで進出できるそうだから、途中大小の休止を入れて5時間半。今から準備して出発すれば敵の寝入りばなの襲撃か。逆に敵に恐怖心を与えるかも知れないしな」



 キーンたちが軍学校の馬場に着いたときにはすでに騎兵中隊の騎馬が整列していた。騎兵たちは馬から降りて各自愛馬のくつわをとっている。


 サール中尉は自分の愛馬を預けた厩舎に向かって駆けて行った。



 騎兵隊の中央にいたランデル少佐が、キーンのところにやって来て、


「アービス生徒、サール中尉に聞いての通りだ。よろしく頼む」


「はい。それでは、サール中尉が戻ってきたらまとめて強化していきます」


「まとめてできるのか?」


「目に入っていれば問題ありません」


「アービスだものな」


「そう言えば、先ほどサール中尉と話したのですが、強化を今までの10倍の強さでかけることができるようになりました。サール中尉に試したところ良好なようです」


「サール中尉が光っていたがそのせいだったのか」


「かなり目立ちますがよろしいですか?」


「これまでの強化でも真夜中ならかなり目立つ。問題ない」


「中尉が戻って来たようなので、それじゃあいきまーす。

 強化10倍!」


 キーンがゆっくり視線を動かし軍馬と騎兵に順に強化をかけていく。


 強化のかかった軍馬と騎兵は6色に明るく輝く。


 1分ほどで全ての人馬に強化がかかった。


 私語をする者は無かったが、馬たちがその場で足を動かし始めた。早く走りだしたくてたまらないようだ。




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