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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第3章 王立軍学校3号生徒

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第25話 クリス、キーンの自宅を訪ねる。


 夏休みも終わりになろうかというある日、キーンの自宅うちにクリス・ソーンが訪ねてきた。


「ソーンさん、どうぞ居間の方に。

 キーンはソーンさんを居間に案内してあげてください。私はお茶の用意をしてきます。あと鼻の頭に小麦粉が付いてますよ」


 あわてて鼻の頭を手で拭いたキーンは、クリスに向かって、


「やあ、クリス。久しぶり。居間はこっちだから」


「キーン、久しぶりじゃないわよ。放校処分になったことは仕方なかったかもしれないけれど、わたしに何も言わずにいなくなっちゃたのはどういうこと?」


 キーンに対して少し膨れた顔をしてクリスが詰め寄った。


「ごめん。一応クリスにだけには知らせようと思ってあの日探したんだけど見つからなくって、教室の中に入るわけにもいかなかったから、仕方なく帰っちゃった」


「もう」



 居間のソファーに腰を下ろしたクリスが、


「それで、キーンは来月らいしゅうからどうするの?」


「実は、軍学校に編入できることになったんだよ」


「ええ? あそこって、途中編入できるの?」


「どうやらできるらしいね」


「そうなんだ。初めて知ったわ。それじゃあ一応おめでとう」


「ありがとう、クリス」


「キーンが軍学校の生徒になるってことは、来年の対抗戦にはキーンが軍学校代表で出てくる可能性があるわけね?」


「来年はまだ2年生だから、対抗戦には出ないんじゃないかな」


「そーかなー。キーンの実力が軍学校内で広まれば間違いなく代表選手になるわよ。いままでの連敗がキーン一人の活躍で消し飛ぶもの」


「そう言われてみれば、そうかも」


「私が3年で対抗戦の代表選手になって試合に出たとして、相手方からキーンが出てきたら棄権するわ」


「それは極端だね」


「だって、勝てるわけないもの無駄じゃない」


「うーん。そうだ、僕はここのところ図書館に通って本を読んでたんだよ」


「へー、キーンも座学に目覚めたんだ」


「読んでた本は、全部冒険小説なんだけどね」


「あら。お勉強の本じゃなかったのね」


「うん。毎日通っていたら、図書館にあった冒険小説をあらかた読み終えちゃったんだ。それで、ここのところ図書館には行っていないんだよ。今日はアイヴィーのお手伝いでさっきまで焼き菓子を作ってたんだ」


「キーンはお菓子を作れるの?」


「いや、材料の分量を計ったり、型を抜いたりするくらい」


「それでも偉いわ。わたしなんて何もできないもの」





「二人とも、お茶が入りましたよ。焼き菓子はまだ焼けていないのでもう少し待ってね」


「はい。ありがとうございます」


 アイヴィーがカップにお茶を注ぎ、クリスとキーンに手渡す。



「そう言えば、軍学校って寄宿舎じゃなかたっけ?」


「そうなんだ。全然知らなかった。アイヴィー、知ってた?」


「もちろん知っていました。寄宿舎に入るにあたっての準備はもう済ませていますからキーンは気にしないでも大丈夫ですよ。キーンの上下用の寸法は把握していますから、制服も新調してそろえてあります」


 キーンが呑気のんきに図書館に行っているあいだにアイヴィーがいろいろと取り揃えてくれていたらしい。


「アイヴィー、ありがとう」


「どういたしまして」


「キーンが寄宿舎に入っちゃうと、もう会えなくなるね」


「ソーンさん、軍学校にも週に一度は休みがありますし学期と学期の間には長期休暇があるので、外で会うことは可能ですよ」


「「それなら、よかった」」



「私は台所の様子を見てきますから」


 そう言ってアイヴィーが席を外した。


「お休みの時キーンと会うにしても、連絡方法が手紙くらいしか思いつかないけれど、それはそれで面倒よね。手紙の配達にも時間がかかるし」


「僕の方から手紙を持たせたキャリーミニオンをクリスに送るから、それに返事を持たせて送り返してくれれば、そんなに時間はかからないよ」


「今度はキャリーミニオン?」


「そう。キャリーミニオン。いつか話したパトロールミニオンと違って物を運ぶことができるんだよ」


「そんなのが作れるんだ。ねえ、ちょっと見せてよ」


「いいよ。ほら」


 キーンとクリスの座ったソファーの前に、30センチほどの半透明な丸い球(ボール)が浮かんだ。色はうっすらとした水色でゆっくりとその場で回転している。


「これがキャリーミニオン?」


「そう。こいつに物を渡して、届けたいところを告げると、そこに物を届けてくれる。もちろん届け先を僕が知らないと、ミニオンは届先を探し回ることになって時間がかかるんだけどね。だけど今日僕がクリスを自宅まで送って行けば、クリスの自宅をミニオンに伝えることができるから、クリスの居場所に間違いなく飛んでいけるはずだよ」


「キーンってこんなにすごい魔術も簡単に使えるのに、付属校はもったいないことをしたものだわ」


「勉強していなかった僕が悪いんだけどね」


「まあね。でも今度軍学校に入ったら、しっかり勉強しなきゃだめよ」


「うん。軍学校では魔術が主な教科じゃなくて僕の知らない事を教えてもらえるからすごく興味があるんだよ」


「なら安心ね」






 クリスと楽しく半日を過ごしたキーンは、クリスを彼女の自宅の門前まで送っていった。クリスの自宅は侯爵家の邸宅だけあって周りを塀に囲まれた大きな屋敷だった。左右の門柱の上には立派なライオンの像が立っている。これなら間違えようがない。屋敷の位置を確認できたので、キャリーミニオンがクリスを探し出す手間が省けた。


「2階のあそこに見える窓が私の部屋の窓よ」


「覚えたよ。ミニオンが窓をたたくからその時は窓を開けてやってね」


「了解。それじゃあキーン、さようなら。なるべく早くお手紙を送ってね」


「うん。そんなに長い手紙は書けないけれど、試しに出してみるよ」


「待ってるわ」


「うん。じゃあさよなら」



ミニオンはダンジョン〇スター2「ス〇ルキープ」に出てきたミニオンのつもりです。ガードミニオン大量生成で数の暴力でラスボスを圧倒してエンディングを迎えました。あれのエンディングは思わせぶりだった。本作ではそのうちミニオンも進化する予定です。

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