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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第2章 魔術大学付属校

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第22話 交流戦見学4、持久走


「ねえキーン、きみだったら何点いけそう? って聞こうと思ったけど、どうせ50点なのよね」


「うん。そうだね。それでもまとが50個あるから少しは時間がかかると思うよ。初見だったら10秒かかるかもしれない。一度見て準備しておけば2秒か3秒かな」


「そんなことだろうと思ったわ」



 競技場の準備が終わり、最後の付属校の選手が登場した。


「あれ? あの選手は、鋼柱破壊競技の時のアンカーだった選手じゃない?」


「あの大きな杖は見覚えがある。選手が複数の競技に出場しても良かったんだね」


 キーンは杖は覚えていても選手の顔は覚えていなかったようだ。


「そうみたいね。あの選手はうちの学校のホープなんでしょう。3年になってキーンがこの競技会に出場したら、一人で三競技15人分できるんじゃない?」


「最後の競技の持久走を見てみないと分からないけど、たぶんいけると思うよ」


「やっぱり。きみを見てると笑いしか出てこないわ」




 付属校のアンカー選手が、特徴のある大きな杖を構えてしばらくして、審判から「始め!」の合図があった。


「マジックアロー!」


 この選手も初手はマジックアローだった。マジックアローを最初に使った付属校の選手と違うのはマジックアローが五つに分かれて的に向かっていったところだ。


 そして、五つに分かれたマジックアローはそれぞれ白丸に命中した。


「……、マジックアロー!」


 一度の詠唱に13秒ほどの時間がかかっている。


 その後も、マジックアローは的を外すことなく全部で9回撃ちだされ、そのことごとくが白丸に命中した。この時点で四十五点。残り15秒。


「……、ファイヤーアロー!」


「……、ファイヤーアロー!」


「……、ファイヤーアロー!」


 五秒弱の間隔でファイヤーアローが二発撃ちだされ、見事3発とも白丸に命中し、そこで審判の「止め!」の合図。


「ただいまの結果、48点。一点の差をもって、的当て競争の勝者は付属校となりました」


 劇的な逆転勝利にさすがの付属校側の観客たちも大声援を上げた。その中でちらほらと席を立つ観客も出始めた。


 付属校のアンカー選手は観客席に一礼し、その歓声の中競技場を後にした。


 すでに交流戦の勝敗は決してしまい、軍学校側の観客たちは声も出なくなってしまったようだが、それでも誰一人会場を去ろうとはしていない。




 競技場では先ほどの的が片付けられ最後の競技、持久走の準備が始まっている。


 準備と言っても、競技場の真ん中にラインを引き、競技場の出入り口を開け放つだけだ。もちろん選手の邪魔にならないように誘導員がレースコースに何人も配置されている。



 準備が終わったところで両校の選手たち各五名が競技場に入場してきた。


 付属校の選手は青い鉢巻を、軍学校側の選手は赤い鉢巻を頭に巻いている。着ている服は動き易そうな布製の服で、靴は足にフィットした革靴のようだ。



「ねえ、キーン、勝敗はついてしまったけれど、持久走はどうなると思う?」


「身体強化が決め手になるんだろうけれど、地の体力がおそらく高い軍学校の方が有利なんじゃないかな」


「そうよね。身体強化は地の能力を強化するものだものね。身体強化無しで1キロ走るのにどれくらいかかるかしら?」


「10分あれば1キロ近く歩けるから、走ればその倍で5分もあれば1キロ走れるんじゃないかな」


「だとすると、身体強化でさらに2倍のスピードが出るとすると、2分半で走れるってことか。5キロだと12分半。3年生でも身体強化が12分半も続かないんじゃない?」


「たった1種類か2種類の身体強化でいいんだし、みんな3年生だし。さすがにそのくらいは続くんじゃないかな。そうじゃなくても、途中でかけ直せばいいから何とでもなると思うよ」


「きみは簡単に言うけれど、走りながらなんて呪文の詠唱はまず無理よ」


「そうなのかなー?」


「一般人だとそうなの。ところで、キーン」


「なに?」


「あなたが身体強化したら、時間はいつまでもって聞いているけど、何倍くらい速く走れるようになるの?」


「計ったことないから良くは分からないけれど、うちからバーロムの門までの7キロを、身体強化して軽く走って15分はかからなかったから何倍くらいになるんだろ?」


「そう。きみがすごいってことだけ分かったわ。

 そろそろスタートよ」




 競技場の上では、両校の第一走者がラインの後ろに立ってスタートの合図を待っている。両校とも第一走者は女子生徒だった。


「ヨーイ、始め!」


 審判の合図で二人の体が一瞬薄く紫色に輝いた。同時に二人とも速さを強化する身体強化魔術をかけたようだ。


 すぐに二人は駆け出し、一段高くなった競技場からそろって跳び下りて訓練場の出入り口に向かって駆けて行った。二人ともかなりのスピードだ。



「選手たちが帰ってくるまで、10分ほどかかるからちょっと手持無沙汰ね」


「パトロールミニオンを出してもいいなら様子が分かるんだけど、ここじゃあマズいよね?」


「ミニオンって?」


「パトロールミニオンはあたりの様子を探ったりする宙に浮いたボールのようなものかな? 僕の目や耳の代わりにミニオンが見たり聞いたりしたものが僕には見えたり聞こえたりするんだよ」


「それってすごくない? 軍隊のパトロールの代わりになるんじゃない?」


「そういった説明はじいちゃんはしてくれなかったけれど、じいちゃんは昔軍隊で働いていたそうだから、そうかもね」


「最初の時、きみが自分にはできない魔術はおそらく無いとか言っていたのを聞いて、わたしはいくらきみでも二つや三つはできない魔術はあると思っていたけれど、きみの言ってたことは本当だったのね」


「じいちゃんがこれ以上教えることのできる魔術は無いとか言ってたからきっとそうだと思うよ」


「あなたのお義父とうさんがそう言ったのなら、本当だってことをすごく実感できたわ。

 ほら、第一走者が帰ってきたわ。軍学校の選手よ。うちの選手が20メートルほど遅れてる。それでもどちらも12分は切りそうだから、やっぱり途中で身体強化をかけ直したのかな? それとも12分身体強化が続いたのかな?」


 クリスの言うように、観客の声援の中、軍学校の選手が競技場に駆けあがり続いて付属校の選手が駆けあがった。選手がスタートラインを通過したところで第二走者がスタートする。


 第二走者は軍学校側が男子生徒で付属校側が女子生徒だった。どちらの選手も第一走者が駆け抜けた瞬間、薄く紫に体を輝かせ、そのまま走り始めた。


 第二走者、第三走者では、両校の差に変化なく、そのまま第四走者がスタートした。これまでのどの選手も5キロを12分ほどで走り切っている。


 第四走者は、軍学校側が男子生徒で付属校側が女子生徒。


「このまま、軍学校が勝つのかな?」


「どうだろう。うちの最後の走者はまたあの人よ」


 付属校のアンカーは、鋼柱破壊競技と的当て競争で付属校の最後の選手として現れた男子生徒だった。


「やっぱり、あの人うちのホープなのね」


「20メートルくらいの差しかないと軍学校は厳しいかもしれないよ。この第四走者でどれくらい引き離せるかが勝負どころと思う」




 そうして、10数分後、競技場に第四走者が現れた。それは、付属校の生徒だった。


 付属校の生徒は、スタートラインを駆け抜け、最終走者が走り出した。


 軍学校の選手が競技場のスタートラインにたどり着いたのはそれから約30秒後だった。軍学校の生徒をよく見ると、額から血を流しており、衣服の各所も血でにじんでいた。走っている途中で転倒などの事故が起きたようだ。その選手はすぐに退場していった。治療を受けるのだろう。


 結局、付属校の最終走者がゴールして1分20秒後に軍学校の最終走者がゴールした。


 今年の交流戦も付属校が完全勝利して終了した。


 競技場の上では両校の選手たちが整列して、お互いに礼をして今年の交流戦は終了した。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 勝敗が決まってもちゃんと勝負する潔さが良いですね!
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