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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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一つの



 ヤノハちゃんの挨拶が終わると、皆で食事タイム。


 流石に規模が規模なので俺は完全に食事係に徹し……テチさん、由貴、コン君、さよりちゃん、フキちゃん、ヤノハちゃんも手伝いをしてくれる。


 採れたてのクリを中心としたメニューの組み立てで、クルミも多少組み込み、今まで作ってきた料理の中で美味しいものを次から次へと。


 肉だったり魚だったりエビだったり、スパイス料理だったりクリ料理だったり。


 途中タケさん達も手伝いに来てくれて……皆で飲み食いしながら料理を仕上げていく。


 俺達だけでなく他の料理人や、養殖所も出張してきて魚料理を振る舞い、レイさんのお菓子コーナーも展開され……スーパーもかき氷の露店などで参加し、盛り上げていってくれる。


 とにかく大人数、いつもの食欲魔人達が数え切れない程の数になったらどうなるのかという答えがここにあり……途中からはもう無我夢中、何かを考える暇のない忙しさとなっていった。


 なんとかこの場を乗り切ろうと頑張って頑張って……気付いたらもう夕方で、宴も酣。


 すっかりと皆落ち着いて、お腹を膨らませて寝転がるか、静かに時間を過ごすかといった空気が漂っていた。


 どうにか乗り切ったと、安堵しながら料理用鉄板の後方に用意してもらった椅子に腰を下ろして体を休め……更に後ろにあるブルーシートの上で休む子供達を見る。


 由貴は熟睡、コン君さよりちゃんも一塊となって熟睡。


 主役であるはずのヤノハちゃんも皆の中心で熟睡していて……テチさんとフキちゃんが見守り役。


 そこにレイさんがやってきて声をかけてくる。


「おう、おつかれ」


「お疲れ様です……レイさんは全然疲れていませんね」


 と、俺が返すとレイさんはゲラゲラと笑ってから言葉を返してくる。


「おいおい、オレにはこれが日常だぞ? 毎日こうやって皆にお菓子を作ってるんだからな?

 それに菓子作りは結構な肉体労働だぞ? 料理もまぁそうだが……内容次第では料理の数倍疲れるもんなんだからな。

 このくらいは余裕だよ」


「……うわぁ、改めて凄いと思っちゃいますねぇ」


「オレもまぁ、お前のこと凄いと思ってるよ、もう本当に森の一員だもんなぁ。

 いや、結婚した時点でそうではあったんだが、もう違和感が全然ないしな、文句を言うやつもいない。

 以前やらかした連中も全然姿を見せないだろ? もう一度か二度は絡んでくると思ったんだがなぁ。

 ……そういうこともなく、平和な今を勝ちとった、いや、大したもんだよ」


「……そう言えばアレ以来見ていませんねぇ。

 まぁ、特に自覚もなくこうなっちゃったって感じですが……。

 それで皆が幸せに暮らせるのなら、まぁ悪くはないかもですね」


「そうだな、それだけ頑張ったってことなんだろうな」


「……なんか、ただただ毎日主夫していただけって感じもしますけどね」


「それはそれで立派なもんだろ」


 と、そんな会話をしてからレイさんはブルーシートに向かい、テチさんの代わりに見回り役になってくれて……そしてテチさんがこちらへやってくる。


「もう少ししたら片付けをしよう。

 それが終わったら道具や子供達を抱えての帰宅だな、暗くなる前にやりきってしまわないと」


 と、テチさん。


「うん、分かった。

 洗い物は自宅でやった方が早く済むから、とにかく全部持って帰って最悪今日だけじゃなく明日もかけて洗い物やっていくよ。

 子供達をお風呂に入れたりとかはテチさんに任せて良いかな?」


「ああ、任せてくれ」


 と、そう言ってからテチさんは立ち上がり、その両手で由貴とコン君とさよりちゃんを一気に抱き上げて……そしてそのまま家に帰っていく。

 

 ヤノハちゃんはここに残して行けば良いとして、とりあえず起きるまではフキちゃんが見ていてくれることになり、こちらでの片付けはレイさんがやってくれることになり……俺は持てるだけの荷物を抱えてテチさんを追いかけていく。


 それからはテチさんと一緒に会場から行ったり来たり、何度も往復を繰り返し……それが終わったら片付けたり風呂入ったり、寝る前の身支度をしたり。


 コン君達は泊まっていく予定だったのでテチさんの部屋で寝てもらって、由貴も寝てもらって……それから自分の部屋でゆっくりしていると、襖が開いてパジャマ姿のテチさんが仁王立ち。


 枕を脇に抱えて堂々と。


「あ、うん、はい。

 今日は一緒に寝ようか」


 俺がそう言うとテチさんは嬉しそうに笑い、枕を布団に投げつけて、それからはとりあえずあれこれと会話をする。


 昼間には出来ない二人の会話、特に意味のない雑談と言っても良いのか分からないことを話して楽しみ……後は二人の時間となる。


 翌朝、元気いっぱいのテチさんに振り回されながら朝食を用意し、皆で楽しみ……残りの片付けをどうにか終わらせたら日常が戻ってくる。


 まだまだ疲れは残っているけども、大体はいつも通り……疲労が抜けるまでは省エネモードだけども、それでも家事はしっかりとこなして。


 そしてそれからは特に何という訳でもない日々が続くことになり……秋が終わって冬が来て、特に何事もなく年末が近付いてきた……ある日のこと。


 由貴を連れて病院に行っていたテチさんがなんとも嬉しそうな顔をしながら、尻尾の毛並みをツヤツヤとさせながらの帰還をする。


 その尻尾にはテンションが上がっているのか、全力で抱きついている由貴の姿があって、テチさんはそんな尻尾を嬉しそうに振り回していて……。


 コン君、さよりちゃん、ヤノハちゃん、フキちゃんが遊びに来ている居間でもって声を張り上げる。


「二人目だ!」


 その言葉の意味が俺達はしばらく分からず……ただ首を傾げていたのだけど、テチさんが母子手帳を見せてきたことで意味を理解する。


 そうして俺を含めた皆が一斉に声を上げて、我が家は一気に慌ただしくなり……それからもいつも通りの、スローライフと言って良い日々がどこまでも続くことになるのだった。




お読みいただきありがとうございました。



さて、ここで完結! と言いますか

この物語はここで一旦休憩とさせていただきます


500話近く続けてきまして、ネタ切れとなりつつあるというのと私事が忙しくなっているためです

ただ完結はせずに、ネタを仕入れ次第更新する本当の不定期更新となります

いついつ更新出来るとはお約束できない形になってしまいますが、どうかご容赦いただければと思います


ここで完結としていただくもよし、続きをお待ちいただくもよし、といった感じになる感じです


改めてここまでお読みいただき、応援頂き本当に本当にありがとうございました!


また保存食ネタなど仕入れ次第に更新したいと思いますので、その時はまたお読みいただければ幸いです!


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― 新着の感想 ―
お料理や保存食のお話が色々読めるこの物語が大好きなので、不定期にでも続けていただけるのが嬉しいです(・∀・*) のんびり待ってますー
あれま…(´・ω・`) 最近の話がなんか畳む方向に向かっているなとは感じてたけど、本当にたたみに来るとは思ってなかった 完結でなくてよかったです。 続きをゆっくりとお待ちしてますね
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