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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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エビ?



 カボチャデザートパーティを楽しんだ翌日。


 子供達はカボチャパワーで元気いっぱい、寒波がやってきてかなり冷え込んでいるというのに庭を駆け回っていた。


 中心にいるのはヤノハちゃん、由貴を肩車して両腕で支えて、その両腕にコン君とさよりちゃんがぶら下がって、そんな状態で駆けて跳んで、時には転がる。


 コン君とさよりちゃんがお兄ちゃんお姉ちゃんポジションなのだけど、体の大きさ的にはヤノハちゃんが一番で、ヤノハちゃんが引っ張るというか牽引する形になっている。


 大きな耳を揺らして、尻尾を振り回して元気いっぱい……寒さに負けず遊び回るのは良いことで、大人の俺は暖房を効かせた部屋で見守る。


 流石に無理、この寒さは無理、一緒に駆け回るのならまだしも見守るだけでは厳しいものがあって、室内での見学だ。


 そうやって子供達を見守っていると車のエンジン音。


 二日連続でレイさんが来たのかな? と、首を傾げていると長森牧場の配達車がやってきて、運転席から元気いっぱいの猫耳娘、フキちゃんが飛び出してくる。


 分厚いファー付きの革ジャンに、何故かミニスカート。


 寒がっていても、そこは譲れないらしいフキちゃんは、寒さから逃げるように玄関から入ってきて……そして元気いっぱい声を上げてくる。


「エビを使わないエビ料理教えて!!」


 矛盾の塊のような言葉をぶつけられて一瞬脳がバグるけど、すぐに答えが降って来て返事をすることが出来る。


「エビアレルギー?」


「そー! 最近知り合った子がさ、アレルギーでダメなんだけどエビ料理を食べてみたいんだって!」


 ……なるほど? つまりアレかな、彼氏候補みたいな子がいて手料理を振る舞いたくて、そこら辺を教わりに来たと。


 しかしアレルギー持ちのご家庭なら、ご両親が代替料理くらいは普通に出してくれそうなものだけど……アレかな、向こうは向こうで話題のため、仲良くなるためにあえてそんなことを言って甘えようとしているのかな。


「それならまぁ、簡単に出来るのがあるよ、それを作ってみる?

 と、言っても簡単だから言葉で説明するだけで実演は必要ないと思うんだけど……。

 あとはエビを使わない以上はどうしたってエビ料理にはならないよ、それっぽい味を楽しめるってだけで」


「良いよ、それでやって! 実際に見て覚えた方が早いから! 実演でお願いします!」


 と、フキちゃん。


 そう言うことならとまず庭向きの窓を開けて声をかける。


「ご飯を作るから、皆もそろそろ部屋に戻ってー、体冷え切っちゃうよ」


 子供達から目を離す訳にはいかないのでそう言って、子供達が家の中に戻って手洗いうがいをちゃんとしたのを確認してから、自分も手洗いをしてから台所へ。


 そして用意するのは鶏ムネ肉。


 エビそっくりの味にもならないし食感にもならない、だけども美味しい料理に仕上がる。


 エビの代替品もきっと探せば売っているのだろうけど、探す手間やコストを考えると鶏ムネ肉が一番だ。


 たとえばエビチリならぬ鶏チリ。


 市販の中華料理用レトルト調味料を使っても良いし、自作調味料でも良い。


 長ネギみじん切り、ケチャップ、お酢、醤油、うま味調味料、砂糖、料理酒を混ぜてタレとする。


 胸肉は一口サイズに切り分け、片栗粉をまぶし……フライパンでゴマ油を熱し、胸肉を焼いていく。


 とりあえず両面にしっかり火が通ったら一旦取り出して……またフライパンにゴマ油、刻みニンニクと豆板醤を入れて軽く火を入れて香りを出したら、さっきのタレを入れて、辛くしたいのならここで一味や七味をお好みの量、辛くしたくないのならそのまま胸肉を投下。


 水分が減ってとろみが出るまで炒めて……炒め終えたなら完成。


 エビチリではないけども、エビチリ風の味は楽しめる鶏チリ。


 これはこれで普通に美味しく楽しめて、安物エビを使うくらいならこっちの方が美味しいまである中々の料理だ。


 それを作ってからいつも通り台所に大集合した子供達に味見をさせてあげる。


「え、おいしい! エビチリより好き!」


 と、コン君。


「お肉が凄くいいです、片栗粉でこんなに美味しくなるんですね」


 と、さよりちゃん。


「うまうまうま……うま!」


 と、由貴、由貴にはちょっと辛めかと思ったけど問題ないようだ。


「……ほんとだ、美味しい。

 この鶏肉ってうちの牧場のだよね? それならそうだよね、変なエビ使うより美味しいよね、最高の鶏肉だもんね」


 と、フキちゃん。


 ……そうです、フキちゃんの牧場のお肉です、牧場の跡取りなんだから最初からエビではなくこちらで勝負して欲しいものだけども……それで終わらずにもう一品仕上げていく。


 今度はエビマヨ……つまり鶏マヨ。


 まずカシューナッツとクルミを炒める、しっかりと乾煎り。


 しっかりとローストしたら包丁で細かく砕いて……軽く混ぜてとりあえずの完成。


 次は鶏肉の処理、やっぱり胸肉を使う、一口サイズに切ったら塩コショウで軽く下味を付けてから片栗粉で揉む。


 そしたら少し寝かせてその間にソース作り。


 マヨネーズ多め、ケチャップ、ハチミツ、レモン汁、牛乳を丁寧に混ぜてソースが完成。


 あとは寝かせた胸肉を天ぷら粉で揚げていって……揚げたらソースをたっぷりと絡ませて皿に盛り付け、盛り付け終わったら炒ったナッツとクルミを振りかける。


 より中華風を意識するならクコの実を乗せても良いんだけど今日は用意していないので省略、これも出来たてのものを皆に味見してもらう。


「おいしーーーい! これ好き! オレ好き!」

「うわっ……美味しいです! これ凄く良いですね! 鶏肉じゃないみたいです!」

「まーうー! もっとーーー!」


 コン君、さよりちゃん、由貴の順に声を上げ……由貴はベビーチェアの机をトントン叩いてのおかわり要求。


 そしてフキちゃんは……無言で鶏肉を見つめての感動タイム。


 自分の牧場の鶏肉がここまで美味しくなるとは思っていなかったらしい。


 元々長森牧場の鶏肉は美味しい、滋味あふれるというか味に力があって旨味が強い。


 それを更に旨味ドンなマヨ系料理にしたら美味しいのは当然で……無言で食べ進めていく。


「まぁ、うん、こんな感じでエビの代わりにはならないんだけど、エビに代わる新料理にはなるから、この方向で料理してあげたら良いんじゃないかな。

 クックな調味料使えばもっと楽に出来るし、個人的にはそっちがオススメだよ。

 そうじゃない場合は……変な冒険せずにレシピを守るようにね」


 と、俺がそう言うとフキちゃんはずっと構えていたスマホを構えたままコクコクと頷く。


 メモ派のコン君とは違ってフキちゃんはスマホで録画派、確かにこの場合は実演のほうが良い教科書になるんだろうなぁ。


 そんな感じで試作をしてあげたなら、お昼ごはんのための本格調理を開始して……テチさんが戻ってくるまでの間に、それぞれの料理を山盛り仕上げるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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