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河はあまりに広く、あなたはあまりに遠い  作者: 無憂
間章四 涼風、炎熱を奪う
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郭聖通

*文叔が懐より帰還した時の郭聖通視点



常恐秋節至、涼風奪炎熱。

棄捐篋笥中、恩情中道絶。

   ――班倢伃はんしょうよ〈怨歌行〉

常に恐る 秋節の至りて、涼風 炎熱を奪い

篋笥の中に棄捐せられ、恩情中道に絶えんことを


 いつも恐れている。

 秋が来て冷たい風が恋の熱を冷まし、

 箱の中に打ち捨てられる扇のように、

 陛下の寵愛がぱったりと途絶えてしまうことを



***********


 建武元年(西暦二十五年)十二月。 


 洛陽南宮の和歓殿、その後殿のもっとも豪華な居間で、女は鏡を覗いて化粧に余念がなかった。

 まだ若い侍女の一人に鏡を持たせ、背後では別の中年の女が自慢の黒髪を梳いている。その宮の女主人と思しき色の白い女は、まゆずみを筆に乗せて丁寧に眉を描く。


 「陛下はもう、南宮にお入りになったの?」

 「さきほど、先触れが参りましたので、おそらくは」


 和歓殿の主である郭貴人――郭聖通――の夫、皇帝・劉文叔は、かいの離宮への行幸を終え、黄河を渡って洛陽に向かいつつあると、早馬の知らせを受けていた。半月ぶりの夫の帰還に、冷静なふりをしてはいても、郭聖通の心ははやっている。


 「……こちらには、いつ頃、いらっしゃるかしら」

 「さあ……まずは前朝で太傅の卓老公に帰還の挨拶をなさるでしょうから……」


 背後に控える宦官の孫礼が頭を下げる。その姿を鏡越しに確認して、女は筆をき、髪を梳いている女に言う。


 「あまり、高々とは結い上げないで。……陛下は着飾った女はお嫌いなのよ」

 「そんなことはございませんでしょう。皇后となられるからには、もっと華やかになさってもよろしいくらいです」

 

 中年の女が媚びるように言うが、しかし鏡の中の女は首を振った。


 「まだまだ、戦乱が続く中で、わたくしが贅沢しているように思われたら、外聞が悪いわ。それに……」


 女はふと、数日前に庭のあずまやで対面した、南陽から出てきた陰麗華という女の姿を思い浮かべる。


 「……陛下はきっと、清楚な雰囲気がお好みなのよ」

 「そうでございましょうか。殿方は女を着飾らせたがるものですよ。あまりに地味でも足元を見られます。やはり、装いには格というものがございますからね。低い方に合わせる必要もございませんよ」


 中年の女もまた、同じく陰麗華を思い浮かべているらしい。

 

 「何と申しますか、あれではあまりに田舎くさいですよ」


 女は紅を選びながら、形のよい唇の口角を少しだけあげる。


 「仕方ないわ。田舎から出てきたばかりなのだから。……陛下の貴人に対して、それ以上の悪口は慎みなさい」

 「もうしわけございません、お嬢様。ですが――」

 「何? 不満があるの? 阿姨ばあや

 「おおありでございますよ。いくら南陽で〈妻〉だったとはいえ、あんな、田舎の農家の娘を、お嬢様と同列の貴人にするなんて、いくら何でも馬鹿にしていますよ。だいたい、貴人って何ですの? 漢の掖庭こうきゅうの夫人号といえば、上から昭儀、倢伃しょうよときた十四等の位号と、昔から決まっておりますのに」

 

 阿姨ばあやがブツブツ言うのに対し、郭聖通は仕方ない、という風に眉を顰める。


 「陛下は十四等もの位号は無駄だとおっしゃるのよ。そんなにたくさんの女は必要ないし、争いの元になるだけだと。貴人は、皇后を立てるまでの、間に合わせよ」

 「だったら、どうしてあの、南陽の女も貴人にするのです?」


 阿姨ばあやの疑問は、郭聖通の痛いところを突いたが、表面上は何でもないことのように笑った。


 「……たぶん、他の位号を考えるのが面倒だったのね。貴人っていうのも、ものすごく適当につけたみたいだったし……。南陽以来の側近の方々の中には、彼女の親類もいらっしゃるのよ。ないがしろにはできないわ」

 「でも、皇后になるべきお嬢様と、皇后にならない女を一時でも同列にするなんて、図々しいですよ。陰家は南陽では大富豪かもしれませんが、特に高官を出したわけでもない、ただの農家ですよ?」


 中年女の不満に、郭聖通は微笑む。


 「それを言うなら、郭家だって真定では大家だけど、たいした家ではないと言われてしまうわよ?」

 「でもお嬢様は何と言っても、もとの真定王の姪ですわ。そこは格が違いますよ」

 「南陽には諸侯王国はなかったから、王を敬うという感覚がないのよ。……どのみち、王莽のおかげで諸侯王も列侯も潰されてしまったのだから、家格の話をしても意味がないわ」


 器用に髷を結っていく女の手際を鏡の中で見守りながら、郭聖通が言う。彼女の母は元の真定王劉揚の妹。真定の大姓・郭氏に嫁いだために、郭主の通り名でよばれる。「主」とは王女の意だ。

 

 「王」――諸侯王とは、漢帝国の藩屏はんぺいとして皇家を守る、広大な領地を有する大名のこと。


 『功有るにあらずんば侯たらしめず、劉氏に非ずんば王たらしめざれ』


 高祖高皇帝劉邦の盟約にあるように、王とは劉氏の、それも皇帝の皇子だけに許された、世襲の王国。漢帝国とはつまり「劉氏の帝国」であり、建国直後の諸侯王は皇帝とともに天下を分け合い、いわば小皇帝として領内の全権を握って君臨した。呉楚七国の乱を境に政治権力を取り上げられ、ただ、封地の租税をむだけの存在へと貶められたが、それでも広大な所領と莫大な財、皇帝に次ぐ格式を認められ、死後は巨大な墳墓に葬られた。封地においては王の紀年が使用されるなど、独立王国の風格は残っていたのである。


 河北には多くの王国が散らばり、土地の大姓と通婚関係を結びながら、連綿とその王統を伝えてきた。真定国は景帝の皇子、常山憲王劉舜の子・劉平を始祖とする。以来、七代を数えて劉揚に至り、王莽によって廃されるまで、真定の支配者であった。王莽政権崩壊後、劉揚は私兵を集めて勢力を固め、「真定王」として河北に割拠した。――成り上がりではない。真定が、殿様の支配に戻っただけである。

 同じ「劉氏」、それも同じく遡れば景帝に行きつくと言っても、はるか南陽の、一列侯家の分家出身の劉文叔など、河北では歯牙にもかけられない。文叔が「劉氏ブランド」を名乗れるのも全て、真定王の姪・郭聖通と結婚したお陰である。


 その郭聖通は今年の春に長男・彊を出産し、夫は六月に皇帝に即位した。十月には洛陽を陥落させて都を定め、郭聖通もまた、故郷の真定を出て洛陽城に入り、南宮の和歓殿に居を定めている。後宮の中心となる壮麗な和歓殿は、つまりは皇后の居宮。いまだ皇后に冊立されていないとはいえ、皇帝の寵愛は盤石と疑う者はいなかった。


 皇帝・劉文叔が洛陽に還御した今夜はきっと、久しぶりのお渡りがあるに違いない。

 郭聖通は髪を結い上げ、髪の飾りを選ぶ。金のかんざしに造花の飾り。耳のすぐ脇に垂れる玉の簪珥さんじ。唇には高価な紅をさし、沈香の練り香を耳朶の裏に塗り込む。目を瞠るほどの美形ではないが、手間をかけて手入れし、贅をらして装えば、生まれ持った気品と磨かれた立ち居振る舞いもあって、十分美しい部類には入る。彼女の階級に要求されるのは、抜きんでた美貌ではない。――それはもっと下の階級の女が、権力者の寵愛を得て出世するための武器であって、彼女には必要ないもの。郭聖通に求められるのは、教養と気品、皇后つまり「天下の母」として君臨するための、淑女の徳目。それを郭聖通は備えていた。そうなるべく教育されたからだ。


 鏡の中の自分に満足そうに頷いて、郭聖通は立ち上がる。

 今日こそ、夫に告げなければ。……新しい命が、自身に宿っていることを。

 郭聖通は無意識に、まだ膨らまない腹を撫でる。夫は初めての子に戸惑っているのか、あるいは失った子への遠慮があるのか、子への接し方が些か淡泊だが、二人目を妊ったと知れば、父親の自覚も湧くに違いない。


 阿姨ばあやの袁が背後から着せかける鮮やかな紅色の褶衣うちかけに袖を通し、振り返って尋ねる。


「あの子はどうしてる?」

「はい、乳を飲んで、今はお休みでございます」

「そう。……陛下がいらしてから、目を覚まして泣かなければいいけれど」


 春に生まれた長男の彊は、健やかに育って、さほど手もかからない。

 今日は夕餉もご一緒出来るだろうか。食事をともにするのは、随分と久しぶりのように思われる。冷静な態度を心掛けても、郭聖通の心は歓びに逸って、夫の到着を待ち焦がれていた。そんな時に、表の方から宦官が声をかけた。


 「申し上げます。前将軍のこう伯山殿より、皇帝陛下が無事に南宮に帰還なさった旨、報せがございました。後ほど、ご挨拶に伺うとのことでございます」

 「伯山にいさまが? ……それは、もしやお一人で?」


 嫌な予感がした。耿伯山の母はやはり真定王劉揚の妹、郭主には姉に当たる。つまり、彼は郭聖通の従兄で、この和歓殿にも出入りを許された親族だ。だが、彼がわざわざ帰還の挨拶に来るというのは、つまり――。


 まさか、夫は今夜来ないなんてことは――。


 冷水を浴びせかけられたような気分で、しかし郭聖通は何事も無いような風を装い、従兄の訪れを待った。結局、従兄が和歓殿にやってきたのは夕刻に差し掛かろうかという時刻。前殿の一角で、母の郭主と弟・郭長卿と三人で従兄を出迎えた。


 早足で堂に入ってきた耿伯山は、片膝をついて顔の前で拱手の礼を取る。


 「堅苦しい礼はけっこうよ、伯山にいさま。お久しぶりですこと。……陛下も、無事でお戻りに?」


 従兄はすぐに立ち上がり、実直そうな顔で頷く。


 「ええ、どうしても片付けねばならない、火急の用件が溜まっていて、今宵は顔を出せないが、近いうちに必ずと、ご伝言を託されました」

 「何ですって?今夜はいらっしゃらないの?」


 耿伯山が言い終わらないうちに、母の郭主が甲高い声で咎める。


 「まさか……例の、南陽の女のもとに?」

 「お母様!」


 郭聖通が慌てて遮る。――嫉妬しているように、見られたくなかった。


 「――二年ぶりの再会ですもの。あちらを優先するのは仕方のないことですわ」

 「でも――!」


 なおも不満を表明しようとする郭主に対し、耿伯山が冷静に言った。


 「あちらの方がご体調を崩されたと、早馬が参りました。こればかりは致し方ないかと」


 それは初耳であったので、郭聖通がチラリと掖庭令の孫礼を見た。孫礼が無言で首を振る。――報告はなかった、との意だ。数日前、孫礼に無理を言って彼女の散策を邪魔し、強いて対面したが、その結果、あちらは警戒を強めて、孫礼にも内情を知らせなくなったのだ。


 「仮病ではないの?陛下のお気を引くために、早馬まで飛ばすなんて、小賢しいこと」


 郭主が忌々しげに言うのに、内心、頷きそうになりながら、郭聖通はおっとりと言う。


 「そんなことを言っては気の毒よ、お母様。旅のお疲れなのでしょう」

 「聖通、お前は昔から優しいというよりお人好しで、あたくし心配よ」


 母の言葉を微笑んで受け流し、郭聖通は言った。


 「でも、わたくしも陛下に申し上げるべきことがあるのです。出来る限り早くとお伝え願えませんか」

 「ええ、この後、陛下にはそのように申し上げましょう」


 耿伯山が請け合った。


 「陛下にはお健やかに?」


 郭聖通の問いに耿伯山は頷いたが、しかし、少し考えるような表情をした。


 「……あちらの……陰貴人の殿舎については、こちらへは何も?」

 「そのことですよ!いくらなんでも、非常識ではなくて? 掖庭の一殿舎ではなく、陛下の居宮に住まわせるなんて!」


 母の郭主が声を尖らせる。


 「聖通、お前もお人好しが過ぎますよ。何故、お諌めしないのです!」


 郭聖通も困ったように眉尻を下げて言った。


 「事前に何の相談もなかったのですもの。近いうちに南陽の方がご到着になると聞いて、殿舎はどうするのか、孫礼を通じて衛尉の李次元に問い合わせましたが、全ては陛下の裁量にてすでに決定済みで、口出しは無用と言われてしまったのですわ。直前になって、もう一度、問い合わせたら、()()()()後殿に住まわせるとの返事で」

 「ひとまずって、いくらなんでも非常識でしょう」

 

 郭主の不満を、郭聖通が鷹揚に宥める。


 「陛下はまだ、慣れていらっしゃらないのでしょう。後宮の規定などにも疎くて……掖庭の夫人の号だって、適当な号をつけてしまわれた」

 「十四等もの号位は不要との、お考えからです」


 耿伯山が皇帝を庇った。

 

 「河北では王の宮廷や後宮があるのは当たり前でしたが、南陽には王国もなく、後宮などは存在しません。陰貴人との結婚生活は短いとはいえ、一度は正式に妻として娶った女性です。陛下の、亡くなられた姉上のご夫君の、親族に当たられるそうです。きちんと説明の上で、今後のことを納得してもらいたいと、陛下が気を遣われるのは当然と思いますが……」


 そこで、耿伯山がコホンと咳ばらいをし、まっすぐに郭聖通の目を見て続ける。


 「陛下が後殿にとご指定なさったのは、こちらとの余計な接触を避けるためと思われます。それにもかかわらず、陛下のお許しもなく、あちら様とご対面なさったとか。……陛下は非常に驚かれて、衛尉の李次元殿を叱責なさった。陰貴人が体調を崩したのも、もしや……と陛下はこちらをお疑いでいらっしゃる」


 郭聖通は切れ長の一重瞼を一瞬、見開いて、すぐに表情を和らげて見せた。


 「そんな……わたくしはただ、ご挨拶をしただけですわ。ひどい誤解もあったもの」

 「まさか、陛下に疑いの芽を植えつけるために、わざと倒れたわけじゃあ……」


 郭主がおおげさに驚くのを、郭聖通がさりげなく袖を引いて窘める。


 「お母さま、そんなことを口にするものではないわ」

 「でも、聖通……」


 二人のやり取りを、耿伯山は冷静に首を振って止めた。


 「陰氏の件は非常に繊細なのです。どう言い繕おうと、先に結婚していたのはあちらです。身分も、結婚していた期間も、関係ない。証人もいる。しかも、正式な離縁はいまだになされていない。……どういうことか、お分かりになりませんか?」

 「……どういうことって?」

 

 郭主の問いに、耿伯山が真剣な目で言った。


 「陛下が南陽で陰氏と結婚していたことは、たった二か月の結婚生活だったこともあり、知る人は少ない。俺も知らなくて、陛下に聖通との結婚を打診し、陛下は南陽に妻がいると言って、一度はお断りになった。それでも、我々は聖通との結婚を強く推した」


 郭聖通が頷く。


 「ええ、それはわかっていてよ。でも陛下は……」

 「南陽の者たちは、聖通と正式に結婚するにあたり、南陽の陰家に離縁状を送るように陛下を説得した。しかし――陛下は、陰氏への離縁状を出していなかったのです。陛下が陰氏を洛陽に迎えると言い出して初めて、まだ離縁が成立していないとわかった。つまり重婚状態だった」


 郭聖通が切れ長の目を見開いた。


 「……それはあちらが、離縁を拒否しているせいではなくて?」

 「陰家側は何度も、離縁を求める書簡を送っていたのに、それを陛下が握りつぶしていたらしい」

 

 耿伯山が実直そうな面長の顔の、眉を顰めて言う言葉に、郭聖通が掠れたような声で言った。


 「では、陰麗華が洛陽に来たというのは――」

 「妻からの離縁には夫の承諾が必要です。傅子衛将軍は、離縁して欲しければ洛陽まで出向いて話し合うしかないと言って、渋る彼女を説得したそうです。……そう、全て陛下のご意向なのです」


 郭主が柳眉を逆立てて、耿伯山に詰め寄った。


 「あちらから押しかけてきたわけではない、と言うの?」


 耿伯山が大きく頷く。


 「陰家は南陽でも最大の富豪で、家格的にも舂陵しょうりょう劉氏と釣り合う。……分家の三男坊だった陛下にとっては格上の家です。あちらの当主は陰貴人の兄でまだ若い男ですが、正妻として嫁がせたのであって、河北で他の女を娶った以上、婚姻は破綻している、皇帝だろうが、妹を妾にするつもりはないと、啖呵を切ったとか」

 

 その言葉に、郭主が少しだけ表情を和らげる。


 「じゃあ、離縁を取って南陽に帰ればいいじゃない」

 「離縁を承知するならば、二年前に離縁状を送っているでしょう。陛下に離縁する気がないから、ややこしいことになっている」


 郭聖通と郭主が顔を見合わせ、少し下がって、まだ少年の郭長卿が不安げに大人たちの顔色を窺っている。

 耿伯山は郭聖通の方に少しだけ顔を近づけ、声を落として言った。


 「――陛下は、陰麗華を皇后に立てるおつもりだ」

 「なんですって?!」


 耿伯山の気遣いは、郭主の甲高い悲鳴で台無しになった。


 「そんな馬鹿な! 皇后はこの、あたくしの聖通に決まっているわ! そんな南陽の田舎の小娘がっ……」

 「お母さま落ち着いて……」


 郭聖通はさすがにギリギリのところで冷静さを失わず、言った。


 「でも、陛下の跡継ぎは彊だけよ?」


 耿伯山も大きく頷いて言った。


 「ええ、ですから側近たちは、南陽の者も河北の者も全員、皇后になるべきは郭聖通だと考えている。陰氏も離縁して南陽に帰りたがっている」


 思わずホッと息をつく郭聖通を見て、耿伯山は牀の上で居住まいを正し、溜息交じりに言う。


 「……ですから、先日の対面は余計なことだったと、俺は言いたいのです。側近も陰氏本人もその兄も、陛下とこっそり対面して、陛下を説得し、正式な離縁を取って南陽に戻る予定だった。ですが、李次元を通さずに無理に対面し、さらに陰氏が体調を崩したことで、陛下はすっかり、こちらを警戒してしまわれた。――いや、違う。陛下がこちらを警戒し、陰貴人を手元に囲い込む口実を与えてしまったのですよ!」

  


 

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