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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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私はいない、そこにいる

『くっ!』


 鬼々は直ぐに乱暴に大鎌を振り回し、ルークを剥ぐが身体には僅かな疲労が残った。

 すぅっとまたそこに存在すると、鬼々はここにきて初めて余裕を崩し苛立ちを表に出した。


「それ、やめて。人間の癖にお姉ちゃんみたいなことしないで」


 鬼々の姉とは吸血鬼である。吸血鬼は相手の精気を吸い取ることで有名であり、以前ルークと交戦したバレッタも弱すぎて頭の中でイメージが一致しなかったとはいえ、その相手を疲労させるルークのスキルに吸血鬼の面影を感じていた。


「ふん、本物を見たことある奴のお墨付きとは有り難いな。ガンガンやらせてもらおう」


 ルーク、神崎に出会って初めてまともな戦力になりつつあった。それも相手は鬼という勝てれば大金星クラスであることが意外である。

 ルークは右手に拳銃を左手に鞭を構える。

 二つの武器を両手に構える新スタイル。これも以前は手で触れなければスキルを発動できなかったため使えなかった戦い方だ。

 彼の獲得した新しい戦闘スタイル。


「ふっ、ついにお披露目するタイミングが出来たな。この戦闘スタイルに慣れる為にどれだけ陰でこそこそと練習したことか」

「いや、誰も聞いてないし」


 神崎がよろよろと立ち上がり、容赦ないツッコミをいれる。拘束から解かれた強華も加わり、また三人態勢が出来上がった。

 そして、目の前には忌々しそうにルークを睨む鬼々。


「さて、どうしようか」

「多分、敵は面倒なルークから狙ってくるはず。あいつも攻撃する時は存在している。だから、ワタシたちはルークに攻撃してくるあいつを待ち伏せるのが有効」

「だろうな」


 すぅっと鬼々の体が半透明になる。

 三人は息を呑む。互いに背を合わせ、どこから来てもいいように備える。

 一番最初に反応したのは強華。


「下!」


 三人の背を合わせた真ん中から競り上がってくるように鬼々が現れる。攻撃の動作は短く、強華、神崎、ルークの順に背に短く拳を入れて弾き飛ばす。


ピリッ―時間外(オーバー)労働(タイム)


「ちっ‼」


 鬼々が短く舌打ちをする。ルークの背に攻撃した。それはルークに触れたと言うことだ。僅か一パーセントも削れているか怪しいが、その時間にルークは時間外(オーバー)労働(タイム)を発動させている。

 三人は先ほどまでよりも早く体制を整え、また三人で固まる。


「相手はルークを警戒している。三人で固まっているうちは今みたいな短い攻撃を繰り返すしかないはず」

「そうか、それが必然的に大鎌封じにもなるんだね」

「気を緩めるなよ、今からはこれの繰り返しだ」

「そんなことはさせない‼」


 鬼々が大鎌を三人が固まっているところに投げつけた。大鎌は円を描き水平に三人の元へ向かう。

 咄嗟のことに三人は広がるようにばらけ、数の有利性を失う。


「そもそも地力が違う」


 鬼々は強華の前に急に存在する。

 そして、顔面に拳をめり込ませる。


「別に誰から倒しても問題ない」


 物凄い威力に数歩後ずさる強華。

だが、もう鬼々の拳の威力は覚えている。

 ぐっと軸足を踏ん張らせ、反撃の拳を鬼々の腹部に放った。


「ちっ、気持ち悪い」

 

 鬼々は舌打ちをし、強華の拳を躱す。

 が、それは完全ではなく、強華の拳が鬼々の衣服の端に触れ、ボタンを飛ばした。


「掠った」


 強華は自分の拳が鬼々に掠ったことが意外で、言葉を漏らした。

 追撃を加えようと更に拳を出すが、もうそこに鬼々は存在していない。


「いいぞ、お前のスピードならあいつも流石に対処しきれていないのかも知れない」


 鬼々は身体能力が高いのは言うまでもないが、それは神崎や強華を大きく凌ぐものではなかった。この世界でも身体能力の高さに定評のある獣族。その中のトップクラスである四老獣のトライともさほど違いはない。

 だが、それに加えていつどこでも消え、現れる彼ら一族の特性。

 この組み合わせこそが厄介、無敵、最強と呼ばれる所以。

 ルークも何とか弱点らしいものを探ろうとするが、果たしてそんなものがあるのかわからない。時間外(オーバー)労働(タイム)という例外中の例外的切り札を持ってはいるが、ルーク自身が一番分かっている。このペースでは鬼々の体力を削りきる前に、自分たちの方が先に倒されると言うことを感覚的に自覚していた。

(じり貧だ、何かないか)

 ルークは考えた。

 それが彼に出来る事だった。

 だが、鬼々はそんな時間はくれない。


 すぅっと強華の背後に鬼々が現れた。

 その場で動けたのは、ルークだけだった。


「強華‼‼‼」


 投げた後いつの間にやら回収していた鬼々の大鎌が緩慢な動きから強華に振るわれる。

 ルークは強華の手を引いて、咄嗟に自分が間に割って入った。


―ズブリッ


 大鎌が人体の深くまで刺さった。

 それは避けようのない致命傷。

 大鎌が身体から引き抜かれれば、普通の人間は僅かな時間でその命を落とすだろう。


 強華の腹部に大きな穴が開く。


 大鎌はルークの身体を透過し、強華の身体だけをピンポイントに刺していた。


「鬼々はどこにでも現れ、どこにでも(おぬ)。鬼々の前に壁は無意味。現れるとはそこに存在すると言う事。つまり鬼々は任意で誰かの前に現れ、誰かの前から消えることも出来るの。それは斬りたいものの前にだけ現れて斬りたいものだけを斬ることと同じ。壁は斬らない。ルークは斬らない。埃も空気も何も鬼々前には障害にならない。斬りたいお姉さんだけを斬ることが出来る。それが鬼の基礎にして極意『(おぬ)』なの」


 ルークはあまりもの力量差に立ち尽くす。

 自分の背後では強華が倒れている。

 腹部から出血はない。彼女は純粋な人間ではない。

 強華のいた異世界では、強華は戦闘兵器として作られた存在だった。

 クローン技術によって生み出された強化型試作機の最終調整作。争いの絶えない人類を殲滅するために作られた量産型兵器。

 ベースとしては人間だが、その要所要所に半永久的に稼働する機械を埋め込まれていると強華はルークに以前説明した。

 アホみたいに高い馬力はそこから生み出されているらしい。

 腹部、心臓、両手両足、計六箇所がそれに該当する。

 だから、腹部を貫かれても出血はない。

 しかし、それはある意味出血よりも大きな破損に繋がる。

 腹部の機械部分の損傷。

 この世界にとっても神崎の世界にとっても完全なオーバーテクノロジー。

 それを修復する方法が果たしてあるのか、かなり疑問が残る。


(くそ、くそ、何かないのか。こいつを倒す手段は! 強華はあとどのくらい持つんだ? 一秒でも早く容体を確かめたい)


「強華‼」


 神崎も今の惨劇を見て、ルークと強華の元に駆け寄る。

 その時、ルークの脳内に一つの案が浮かんだ。

 ルークは基本的に神崎と手を組んで世界征服を企んでいる。

 だけど、それは手を組むと言うより、どこか利用してやろうと言うじゃっそうの方が強かった。

 だから、この発想に辿り着くのに遅れたのかもしれない。


 この日、本当の意味でルークと神崎は協力して戦うことになる。


「礼嗣‼」


 ルークは神崎に手を伸ばす。

 神崎は瞬時にその意図を理解する。


「俺をパクれ!」


 ルークは自分のスキルの感覚を神崎に伝える。


【能力名】

 偽物(ノーパクリ)技巧師(・オマージュデス)

【LEVEL】

 LEVEL9(Max)

【スキル詳細】

 発動時、特定の人物のスキルを出力二百パーセントでコピーできる。

 使用回数制限なし。


 神崎のチートスキルの一つ。

 ただ、これは基本的に格上に使うことはあまり無い。

 何故なら、神崎の他のチートスキル炎と水を操る双頭(アクア・)(フレイム)と肉体強化の滋養(マッスル)強壮(・アッパー)が大抵のスキル保持者のスキルより強いからである。

 つまり、格上と戦うなら自分のスキルを使った方がいいのである。

 だから、神崎はここまで偽物(ノーパクリ)技巧師(・オマージュデス)を格下の対戦相手のスキル敢えて真似て差を見せつける威圧用や既にストックしてあるスキルがたまたま要所で使えそうな時ぐらいにしか使用していない。


 しかし、今回、パクる価値もなさそうなルークの微妙スキルが鬼族、鬼々に有効なのだ。じり貧とはいえ、通用はしている。

 ならば、答えは簡単だった。


「二人がかりだ」

「何? 何しても後はその後ろのお姉さんと同じ運命を辿るだけだよ」


 神崎とルークは背を合わせ、目の前の鬼々を見据える。


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