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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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規格外、例外

(強華を踏んでいる間は実体があるんだ。攻撃するなら今か? だが、どうやって? 下手な攻撃はまたすぐにその場からいなくなるだけだ)

(ルークは言わないつもりみたいだけど、実力差が離れすぎていてとれる手段が無さすぎる。これはもう一旦お姉さんがここにはいないことを話して謝ってみるか? でも、一歩間違えれば強華が危ない。どうする?)


 強華も反撃をしようと思えば出来た。だが、それでまた鬼々が消えていては、きりがない。ルークたちの答えを待とうとギリギリと踏みつけられる頭蓋の軋みに耐えた。

 ルークはその様子に歯軋りをしながらも、ある一つの策を思いついた。いや、策というほど上等なものではないが、相手が圧倒的過ぎて馬鹿らしくまだ試してもいなかったこと。

 ルークの扱う武器には二つある。

 一つは中遠距離対応のこの世界でも強力な威力を持つ拳銃。

 もう一つは、近中距離対応武器。今もまだこの場には出さず、腰に巻き付け隠している。


「わかった。お前の姉を連れてくる。しばらく待っていてくれ」


 これは当然ブラフ。

 相手を少しでも油断させられたら儲けものとルークは両手を空にして、鬼々と強華のもとに歩み寄っていく。


「しばらく? どのくらいかかるの?」

「あぁ、そうだなー」


 一定の距離に入り、自身のタイミングでその武器を振るった。

 それはしなやかに蠢く鞭。

 銃の弾数が心もとないときに愛用する自身のスキルとの相性の良い武器だ。


 だが、これを当然のように素手で掴む鬼々。


「なにこれ。こんなオモチャで鬼々に勝つつもりだったの?」


 ルークは笑う。

 かかった。


「下に強華を踏み付けているんだ。簡単に開放するわけにはいかないよな。わけのわからない強力そうな攻撃ならともかく、こんな普通の人間でも対応できそうな単純な攻撃なら避けないよな」


 そう、神崎もルークも強華を踏み付けていて実体のある今、このタイミングで如何に強力な攻撃を繰り出すかばかりを考えてしまった。

 だが、どんな強力な攻撃も鬼々はダメージを負う前にそこからいなくなるだろう。

 だから、必要だ。

 避ける必要性を一切感じさせないしょうもなく弱そうな攻撃がだ。


「?」


 ルークのスキルはひっそりとレベルアップしていた。



(ビフォー)

【能力名】

 時間外(オーバー)労働(タイム) 

【LEVEL】

LEVEL5  

~次のLEVELまで、魔物討伐残り342体。

【スキル詳細】

 触れた相手(同時になら複数可)を、使用者の匙加減で疲労させることができる。

 ただし、死ぬほどの過労は不可。

 同時に、自分も同程度の疲労を追う。

 複数回使用の場合は、全快を百とした時、一度目に相手を二十疲労させると自分は八十、二度目に別の相手を二十疲労させると、自分は残り六十となる。



ルークのスキル時間外(オーバー)労働(タイム)は、魔物を殺すことで経験値が加算され、レベルアップする方式だ。だが、当然そんな危険なことをちょこちょこやっている時間もないし、身体も持たない。

 完全に棚から牡丹餅だった。まるで努力をせずにパワーアップするそのさまは最近の少年誌の主人公と言ってもいいだろう。

 四老獣のトライは、ホイホイを襲う際に大量の魔物を引き連れていた。

 そのほとんどを神崎と暴走したバルコスが退治した。

 殺生を好まない神崎。暴走して完全な抹殺という概念のないバルコス。

 お陰でルークがホイホイに戻った時には、かなりの数の魔物が瀕死の状態で残っていた。これにはセブンズの一人ミックスの体のパーツ入れ替えのスキルのためにミックスが殺さないよう指示していたダブルミラクルもあるのだが、つまりルークはあとはとどめを刺すだけの簡単なお仕事を昼夜にわたって行った。

 で、労せずしてレベルアップを果たしたのだ。努力はオールカットである。



(アフター)

【能力名】

 時間外(オーバー)労働(タイム) 

【LEVEL】

LEVEL6  

~次のLEVELまで、魔物討伐残り1002体。

【スキル詳細】

 触れた相手(同時になら複数可)を、使用者の匙加減で疲労させることができる。触れるとは、肌と肌を介さなくても間接的(スキル使用者の武器を相手が素手で掴むなど)も可能とする。ただし、それは二点以上の間接を含むことはできない。

(例、スキル使用者の服の上から相手が手袋などの衣類ごしに掴んでいる場合はスキルは発動しない)

 ただし、死ぬほどの過労は不可。

 同時に、自分が相手を疲労させた程度の八割の疲労を追う。

 複数回使用の場合は、全快を百とした時、一度目に相手を二十疲労させると自分は八十四、二度目に別の相手を二十疲労させると、自分は残り六十八となる。



 小難しい条文が追加されているが、要は今までは肌と肌で触れないと駄目だったけど、これからは服の上からや武器越しでもスキル使えるからね! あと、自分が減る疲労分が今までよりちょっぴり少なくなったよ!

 みたいな感じである。


(今、俺の鞭は鬼々にしっかりと、触れている。使えるはずだ)


 加減はしない。もしここでルークが倒れるほどの疲労を負ったとしても、それだけの深手を鬼々に負わせることができたのなら、あとは神崎と強華が何とかしてくれる。

 ルークはフルパワーで、そのスキルを発動させた。


(喰らえ!)


時間外(オーバー)労働(タイム)‼‼‼


 初めに鞭を持つ手に感じたのは、確かな手応え。このスキルを有しているルークにしかわからない、スキル発動成功の感触。ハイスピードで自身と鬼々の疲労を蓄積させていく。


(三、五、八パーセント、十、―――)


「⁉⁉⁉」


 十五パーセントを削り終える直前で、鬼々がすぅっと強華の上から消えた。鞭は地面に落ち、ルークは舌打ちをする。


「ちっ、流石にすぐ感覚でばれるか」


 だが、同時に自分のスキルが世界最強の種族に通用したことに、喜びもあった。だが、喜ぶ時間は一秒も与えられない。


『今のなに?』


 鬼々の声がルークの背後から響いた。振り向きざまに鞭を振るうが、当然のようにそこにいた鬼々を虚しく通過する。


「もうそれは掴まない。なんか、身体がだるくなった」


 鬼々は大鎌を振りかぶる。


「礼嗣!」


 倒れていた神崎は両手を鬼々に向け、水柱を放つ。

だが、そこに鬼々は存在しない。でも、今回は大鎌だけはそこで実態を持ち存在していた。


『存在しないものを指定することもできる』


 大鎌はルークを仕留める為にその場に残したのだ。鬼々が持って、鬼々が振るっているはずの大鎌だが、そこに鬼々の姿は見えない。でも、大鎌は存在して使用者の意思をもって動いている。


「……礼嗣が一瞬動きを止めてくれただけで十分なんだよ」


 ルークは大鎌に掴みかかる。鬼々が神崎の攻撃を存在を消し、避けている一秒に満たない間に敢行した。だが、それも鬼々の腕力をもってすれば一瞬で剥せる。

 でも、ルークにとって掴めればそれで目的は達成される。

 何故なら、


時間外(オーバー)労働(タイム)‼‼‼


 パワーアップしているからである。間接的でも、消えていても、存在しなくても、大鎌は確かに鬼々が持っていて、大鎌の先には鬼々がいる。



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本作をお読みいただきありがとうございます。
出来れば1ptだけでも評価を戴けると嬉しいです。
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