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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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鬼、容赦ねー

「鬼である鬼々に情けはない。お姉ちゃんの場所を知っているなら、早く教えたほうがいい」


 バサギは私も鬼じゃないと言った。

 だが、こちらは鬼。


「そうしたいのは山々なんだけどな」


 そもそも吸血鬼がこの国にいるというのが、はったりなのだ。いるはずもないものを見つけて来いというのは不可能だ。

 神崎はルークに耳打ちをする。


「どうする? 正直に話してみる?」

「はは、礼嗣は勇気があるなぁ。そんなことしみろ、プライドの高い鬼族が自分たちの神みたいな存在の吸血鬼の名前を無断で拝借してたなんて知ったら、その場でミンチだ」

「でも、だったら」

「あぁ、どのみちこのままだと話しても話さなくてもミンチだ。なら、話さないで注意を引きつつあいつをミンチにしたほうがいい」

「……殺さなきゃいけないってことだね」

「中途半端出来るほど甘い相手じゃないぞ。覚悟を決めろ」


 ルーク、神崎、強華は鬼々を見据える。なんの緊張感もなさそうな締まりのない顔だが、相対すれば、その圧力に一歩足を前に踏み出すだけでも喉がカラカラになる。

 

 ルークは自分に注意を引き付けようと、口を開いた。


「まぁ、そのなんだ。今、お前のお姉さんは外出中でな」

「―もういい。話す気がないなら殺す」

「気が短すぎる!」


 鬼々が大鎌を構えた。


「強華!」


 ルークが叫ぶと、強華が瓦礫の山を拳圧で崩し、鬼々の足元を不安定にさせる。そこに神崎とルークで畳みかける。

 神崎はスキルにより強化した肉体で殴り掛かり、ルークはその隙を見て、腰に隠していた拳銃で発砲する。


「人間のくせに鬼々と戦うなんて馬鹿すぎる」


神崎の拳は空を切り、ルークの銃弾も空を切った。

鬼々に躱された。

否、鬼々はそこを一歩も動いていない。

鬼々は目の前にいた神崎の脇腹に思いっきり蹴りを入れた。神崎は攻撃直後で躱し切れず、それをもろに受け、建物の壁に激突する。


(物凄い威力だ。だけど、これならトライとそう変わらない)


「礼嗣!」


 ルークが叫んだ。

 壁に叩きつけられた神崎の目の前には、もう鬼々がいた。

 そして、自分の体長ほどもある大きな鎌を横に振るう。


(いや、これだけ至近距離だと僕に当たる前に後ろの壁にぶつかるぞ)


 それはあまりに大きな動作だった。

 まるで神崎以外見えていないのかと思うほどの大きな一振り。このままでは神崎の身を割く前に先に建物の壁に刃が当たってしまう。

 それ故に、頭で冷静に判断を下してしまったからこそ神崎は反射的な回避ができなかった。人は目の前に透明な壁があったとして、自分にはそれが見えている。そして、その壁の向こうにいる人が自分に向かって殴り掛かろうとしているのを見て、本気で回避することができるだろうか。


ぴくりとぐらいは体が動くかもしれないが、本気で回避するのは難しかろう。だって、出来ないと頭が処理してしまったのだから。


 死んだ。


―キィィン


 金属の刃が震える音がした。


「あれ?」


 声の主は鬼々だった。物事が自分の思い通りに運ばずに何故だと頭を捻って出るような声だ。

 大鎌がぶつかり交響したのは建物の壁ではなく、強華の振り上げた足の靴底と交錯した音だった。

 今、強華が来なければ神崎の体は綺麗に二等分され、死んでいた。

 その死を神崎の脳内に強制的に刻まされた。


 鎌の刃を足で食い止めている強華が苦しそうな声を上げる。


「早く逃げて」

「あっ」


 神崎はそこでようやく正気に戻る。直ぐに距離をとると、それを見て強華も距離をとった。


「あなた、不思議。本当に人間?」


 鬼々は確実に一人仕留めたと思ったのか、素直に強華に対して感嘆の声を上げた。


「礼嗣、どうして避けなかった?」


 ルークは神崎に近寄り尋ねる。

 ルークや強華からは角度的問題で壁に大鎌が衝突しそうになっていたことまでは分かっておらず、ただただ神崎が大鎌に斬られるのを回避できなかったように見えていた。


「いや、今、壁が―」


 神崎は避けれなかった理由を説明しようとした。

 だが、違う。

 神崎は今避けられなかった理由より、何故鬼々が大鎌をあの角度で振りぬこうとしていたかを知らせるべきだ。

(この三人の中で鬼々と戦闘時間が一番長いのは自分だ。その戦闘の中での違和感と今の攻撃方法から自分なりの答えを探して二人に知らせなきゃ)

 神崎は言葉を探す。

 だが、上手い解釈を見つかられずに難儀する。


「ルーク、さっき銃弾を鬼々が避けたのは見えた?」

「あぁ、少し距離があったがうまく避けられたな」

「具体的にはどうやって避けてたかで見えた?」

「……悪い。ただですら片目で動体視力には自信がない。鬼族の女だから俺には目で追えない物凄いスピードで避けたんじゃないのか?」

「違うよ。僕は直接殴り掛かったからわかる。彼女はあの場から一歩も避けずに僕らの攻撃を躱していた」

「どういうことだ?」


 流石のルークもその答えには困惑する。


「さっきの鎌もそうだ。ルークたちの角度からは分からなかったかもしれないけど、あのまま振りぬいてても壁に衝突しているはずだった。でも鬼々は迷わず振りぬいてた」

「……それがあいつの未知の力ってわけか」


 ルークも段々と神崎の言いたいことが分かって来る。


「そう。多分だけど、あのまま振りぬいてたらあの鎌は壁をすり抜けてたはずなんだ」

「なんだと?」

「能力の全てはまだわからないけど、その確証はある」

「くそ、鎌にすり抜ける力でも付与したのか? 面倒なものを」


 ルークは敵の未知の力の正体を推察し始める。

 だが、その前にそれを遮る冷ややかな声が刺さる。


「違う」


 三人は敵の声に敏感に反応する。


「鬼々はそんなちゃちな能力なんかじゃない」


 すると、鬼々は見せつけるように大鎌の刃を下にして、地面につけた。



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