特訓、判明
ルークは考えた。
今まで絶対的に敵わないと思っていた獣族や亜人族。その中のトップクラスである獣族のトライに神崎は勝利を収めた。恐らくだが、強華でもかなりいい戦いが出来るはずだ。
だが、それだけでは足りない。
世界を取るとは、戦争をすると言うことだ。
それは一対一で決着のつくものではない。もっと、他種族と戦える兵隊が欲しい。それには人間の中でも抜きに出たスキルを持つセブンズをまず鍛えるべきだ。そう結論付けた。
恐らくだが、セブンズなら一般の雑兵相手なら獣族、亜人族にも危なげなく勝てるはずだ。あくまで一対一を前提とするが。
そして、今回はセブンズにいくらかのホイホイの兵士も同行させている。彼らが多対一での獣族や亜人族との対戦イメージを沸かせてもらえばこれは大きい。
数は人類の方が他種族に比べて多い。その僅かばかりの利点を最大限利用し、人類初の上位種族狩りの兵隊を作り上げるのだ。
「それには、そろそろ兵隊の数を増やさないとな」
ルークはこの世界の地図を見つめる。
メアリカ、アシロ、華中。
人間の国でホイホイと同程度以上の力を持つのは、残り三国。
この三国の攻略は、獣族の森ハクア、亜人族の発展都市エア侵略の為には必須で手に入れておきたい要素だ。
「小さなことからコツコツとだな」
「ふん、変なとこで地道ね」
参謀室で悪そうな笑みと独り言に興じていたルークに、リオンがツッコミを入れた。
ルークはしばらく活躍の場もなく、地味な作業が続いていた。
ルークが地図と睨めっこをしていると、参謀室にノックの音が響き、強華が入って来た。
「ルーク、リオン、ただいま」
「強華、どうだった?」
「うん、亜人族五人、獣族三人を殺した。少し手こずったけど、苦戦するレベルじゃない」
「そうか、まぁお前と神崎にはその辺は心配していないけどな」
ルークは強華にも実際に亜人族や獣族との対戦を積んで、感覚を養ってもらおうと街に出てサーチ&デストロイしてもらったが、やはり雑兵レベルでは大した苦戦もなさそうだ。
「で、そのレベルだと同時に何人ぐらい相手に出来そうだ?」
「うーん、百、二百ぐらい?」
「ある程度、計算が付くのは有難いな」
因みに強華に以前人間では? と同じ質問をした時には「何人でも」と答えた。その程度には力に開きがあるようだ。
「なら、神崎も同程度だろう。それに今セブンズや一般兵も鍛えている。トリニティの確保で銃火器の生産も多少可能になった。そして、奥の手もある。あとは、どこか一つメアリカ、アシロ、華中、三大国家を落としたいな。シグレに調査を依頼しているが、どうもメアリカとアシロの動きがきな臭い。狙うは華中が優先かも知れん。柔軟な対応の出来る国だ。俺たちに付けば利があることを証明できればもしかすると無血開城もあるかもしれんな」
ルークの計画兼妄想する子供のようなワクワク顔をリオンと強華は微笑ましく見つめる。
実際は物騒極まりなく、迷惑も極まり過ぎているけれど、少なくともこの場の三人は笑顔だ。
フードの男は手をかざした。
「炎色反応!」
ゴローの後方で待機していた兵士の二人が、その言葉を合図のように紫、青、緑とカラフルな炎に包まれて悶えていく。
亜人族であるフードの男は自慢げに自身の技、亜人族の間ではマジックと言われる技について語る。
「どうだ、これがお前たちのみすぼらしいスキルと我々マジックの違いだ」
「俺は馬鹿だから、パッと見じゃ違いがよく分かんねーな」
ゴローは無精ひげをポリポリ掻きながら、ご高説を賜る。
フードの男は鼻で笑う。
「ふっ、今のだってそうだ。俺たち亜人族は貴様らのスキルと違って、面倒な回数制限や限定条件などの発動に対する制約はない。その上、自身の修練次第で何種類ものマジックを習得可能。段位持ちなら、軽く二桁のマジックが使える。たった二つが限界の貴様らとはまさしくレベルが違うんだよ」
「なるほどねぇ、そりゃすげぇ。確かに亜人族が俺たち人の上位互換だって言われるはずだぜ」
「ふん、そうだろう、そうだろう。理解できたのなら、あとは―」
「―消えろ!」
フードの男は、再び手をかざす。
今度はしっかりとゴローに狙いをつけてだ。
ゴローは緩慢な動きで片手盾を構えた。
「炎色反応!」
そのマジックはゼロ距離着火。
炎は唱えた瞬間に対象を燃え上がらせる回避不能の上位マジック。
ちなみに色がカラフルなのには意味はない。
選べる七色!
炎は一瞬で狭い路地を埋め尽くし、爆発的に広がり互いの視界を塞ぐ。
それは最初に兵士に向けて放ったものとは段違いの火力だった。
フードの男は上機嫌で高笑いをする。
「はは、燃えろ! 燃えろ! ……ん?」
その炎は終息し、やがて止んだ。
路地裏から炎の灯りは消え、また薄暗い闇が戻る。
「ふー、やべー火力だな。こりゃ避けるのは無理だわ」
その闇の中にゴローは先ほどまでと何の変りもなく立っていた。
見る限り無傷である。
フードの男は明らかに狼狽える。
「なっ、何故だ! 確実に焼き払っただろ!」
ゴローは面倒くさそうに後頭部をかくが、この状況の説明はしない。その様子にフードの男は推測を口に出していく。
「そっ、そうか。もしかするとあいつは炎耐性のあるスキル持ちだったのかもしれない。そうか、そうに違いない。だから、部下が焼かれた時も余裕だったのか」
フードの男は一人納得する。
「ははは、残念だったな。お前の底が知れたぞ! 俺たち亜人族は能力の多彩さが売りでな。炎だけと思うなよ」
フードの男は今度は両手を空にかざす。
「電化製品!」
その言葉を吐くと、突如ゴローの頭上の雲行きが怪しくなり、獣の唸り声のようなグルルという音が辺りに響く。
「はは、逃げても無駄だぞ。追尾する雷だ!」
しかし、ゴローは一切逃げなかった。
その場に立ち尽くし、自分の頭上の雲を見上げる。
―ピカッ!
――ビシャーン‼‼‼
光が先に到達し、次に轟音が響いた。
大通りにいた人々の悲鳴が遅れて聞こえ始める。
この路地にピンポイントに降り注いだ雷。避けようなんてなかった。焦げ臭いにおいと、煙が辺りに充満する。
「今度こそやったな」
フードの男は勝利を確信し、ゴローのいた場所に背を向け立ち去ろうとする。
しかし、背後で聞こえるはずのない声がした。
「すげー、威力だな。普通即死だぞ」
フードの男は慌てて振り返る。
信じられない事にそこには衣服に多少の焦げはあるものの無傷のゴローがいた。
「なっ、何故だ! 何故だー‼‼」
フードの男は取り乱し、自分の持ちうる多種多様な攻撃マジックを無差別に、無作為にゴローに向けて発射した。
周りの建物はそれに耐えられず崩壊しだし、その攻撃はおよそ一分にもわたった。
「はぁはぁはぁ」
フードの男は肩で息をしつつ、攻撃の煙と周囲の鎮火を待った。
だが、無駄だった。
「おいおい、ルークさんに秘密裏に行えって言われたのに、こりゃ大目玉だな」
そこには飄々と片手に盾だけを装備したゴローがいた。
「何故だー‼」
「何故って、そういうスキルなんだよ」
ゴローは拳を握った。
【能力名】
弱点
【LEVEL】
LEVEL8
~次のLEVELまで、残り七千五百二十一回、同箇所に攻撃を受け続ける事。
【スキル詳細】
あらかじめ指定した一点に自身への攻撃を集めることが出来る。
指定する一点は自身の身体から五メートル以上離れたものは不可。
一度、指定すると対象が使用不可になるまで変更は出来ない。
一度に発動できる最大時間は三十分(のちインターバル同時間程度必要)。
【能力名】
強点
【LEVEL】
LEVEL7
~次のLEVELまで、残り二百三回、同攻撃で敵対者にとどめを刺すこと。
【スキル詳細】
あらかじめ指定した自身の身体の一部に攻撃力の全てを集めることが出来る。
これは時間の経過分威力が増加していく。
指定箇所の体積が小さければ小さいほど威力の増加する時間も短い。
Maxで本来のスキルを用いない攻撃力の百倍(百分間必要)まで威力は増加する。
一日の使用回数、五回(二十四時間以内に五回を使用しつくした場合、次の使用までに二十四時間のインターバルと九時間以上の睡眠が必要)。
ゴローはスキルで強化した拳をフードの男に振り下ろした。
「ぶへっ!」
フードの男は情けない声をあげ、地面に転がるんだった。
「まぁ、こんなもんかな」
ゴローは懐に入れていた小刀でフードの男にとどめを刺すと、面倒事に巻き込まれる前に足早にその場を去った。




