表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
77/284

あれも、これも 前編

 彼女の目にははっきりと見て取れる怒りがあった。

 リンは静かに決意を持った一歩をミックスの方へ踏み出す。

 

「呼び名なんざ好きにしろ。もう、私はそのどれでもない」

「それもそうか、裏切り者に階級も糞もないな」

「……裏切りねぇ」


 この時点でミックスの頭の中で増援を呼ぶという発想は消えていた。

 先ほどまでの不利な体勢や、先制をあげてしまったこと、また未知の敵故に戦闘能力が全く分からなかったこと等がすべて消え、今では都合のいい功績を上げるための肥やしにしか見えなくなっていた。

 リンの実力は大雑把ではあるが把握している。

 確かに一般の兵の中では強い部類だが、小国とは言え各国で別格とされてきた自分たちセブンズに及ぶべくもない。

 ミックスはそう考え、自身で功績を独り占めできる運の良さを噛みしめていた。


「何か言いたげだな」


 リンは「ハッ」と吐き捨てるように笑う。


「いや、別に。私はあいつの居場所を教えてくれれば、もうここに用はないんだがな」

「あぁ、さっきまで探してるっていってた奴は、あのなよなよしいお前の腰巾着か。名前はなんて言ったかな……バル―」


―言い終える前にリンが動いた。

 持っていた小刀を前に突くようにして、ミックスの目にめがける。

 ミックスはそれをバックステップで華麗に避けようと試みた。


(このスピードなら躱せる)


 と、ミックスが油断した時だった。

 

「⁉⁉」


 リンの小刀がミックスの頬に触れる。



【能力名】

 四捨五入(アバウト)

【LEVEL】

 LEVEL4

 ~次のLEVELまで、残り四十五日間、何事においても勝負で負けない事。

【スキル詳細】

 自身の身体のサイズを0・9倍もしくは1・1倍することが可能。

 身体の一部を指定し、同時に二ヶ所以上発動は出来ない。

 最大持続時間一時間。

 連続で同じ個所は使用出来ない。

 


 距離感を崩すのは彼女の十八番だった。

 驚いた表情を隠せないミックスにリンは、攻撃の手を休めない。

 一、二、三箇所と、致命傷には至らないが、とにかく数を当てていく。


「ちっ」


 リンの攻撃リズムを読み切れないミックスは焦れて、前に出る。

 スピードが速く、一瞬で間合いが消えていく。

 その勢いのまま、ちりちりと炎の灯る左腕をリンの顔面にめがけて突き出した。

 

 焼野原(ハゲピカ)


 しかし、その燃える攻撃を、ミックスの足元にスライディングし、体勢を落とすことで寸前で躱す。

 そのまま今度はリンがミックスの足に自身の足を絡め、ミックスを転がす。

 リンは直ぐに体を起き上がらせると、地面に転がるミックスに馬乗りになり、小刀を顔面に突きたてた。


 浜風(マリン)


 だが、ミックスが顔と小刀の間に突き出した右腕に纏う風の流れが、それを阻む。

 リンは、その風の壁を破るつもりでじりじりと体重を乗せる。


 膠着した攻防に、互いの間に緊張が走る。


「思ったよりやるじゃないか」

「テメーこそ、硬化、炎、風、いくつスキルがあるんだ」


 その問いにミックスの顔が自慢げに、見せつけるような笑み浮かべ、声が自慢げに聞かせるように弾んだ。 


「……一つだよ!」


 ミックスは左右の腕を交差した。

 燃える左腕に右腕の風が送られ、炎の威力が爆発的に増す。

 自分もリンも関係なしに巻き込む炎。

 堪らずリンは飛び上がり、三度距離を置く。

 首周りの皮膚に嫌な体温を感じる。

 表皮が溶け、剥げている。

 軽度の火傷を負ったようだ。


 ミックスは起き上がり、やや荒い息を整える。


「はぁっ、はぁっ、どうだ。風の恩恵を受けた俺の炎は‼」

「へっ、今のはテメーも巻き込まれたんじゃないか?」

「心配ご無用」


 ミックスは首筋を見せつけるように、顎を上げる。

 そこにはびっしりとした鱗で覆われていて火傷の欠片も見られない。

 その気味の悪い姿にリンは悪態をつく。


「本当に化け物じみているな。一体、どんなスキルなんだよ」

「おやおや、これはお前もきっと見たことがあるはずだぜ?」

「あ? そんな気味の悪い姿見たのは、正真正銘これが初だぜ」

「そりゃ嘘だ。つい最近のことだ。お前がボケが初めってなければ覚えてなきゃ可笑しい」


 リンは押し黙り、思考に時間を費やす。


(確かに、言われてみれば)


 只の攪乱狙いの出鱈目じゃない事は、ミックスの口振りからも分かる。なら、どこで見た? あんな醜悪な化け物を、どこで見た?

 醜悪?


(……まさか)


 その言葉に確信は一切ない。

 あり得ないと別の自分が脳内で喚く。

 しかし、それでも口から零れる思考の欠片。


「……蟲大蛇」

「お前は察しがよさそうだったから、気が付くと思ってたぜ」


 ミックスは口角を嬉しそうに釣り上げる。

 そして、まるで自身のコレクションでも披露するように大仰に手を広げ、喋り始めた。


「この首は、先日この国を荒らしまわった蟲大蛇の皮膚で出来ている! 耐熱、高硬度、脱皮再生ってな具合の優れものだ! 人体の急所の一部が詰まっている首筋を守るのにこれ以上適した素材がいるか⁉」


 リンはその言葉の意味を考えた。

 蟲大蛇、先日、ホイホイを四老獣トライとともに襲った魔物の名前。

 リンは目の前で暴走したバルゴスが倒したところを見ただけだが、それでも蟲大蛇の畏怖を感じさせる威圧感は十分に身体が覚えている。

 ミックスの首筋には生まれた時からそこにあったように、何の継ぎ目もなくその魔物の皮膚が存在していた。


「……移植じゃないんだよな?」

「……昔話をしよう。ある国の国王に代々仕ええいた一族がいた。彼らは大層強く、独特の体術と、代々受け継いできたスキルによって王族を守り続けていたらしい」


 急に何の話が始まったのかと、リンは胡乱な目でミックスを睨む。

 しかし、ミックスの話は止まらない。

 常日頃から誰かに話したくて仕方なかったようだ。


「そして、そこの家に長男が生まれた。めでたいことだ。だがしかし、その長男、ある欠陥があった」

「……欠陥?」

「ロンリーだ」


 それはこの世界では、人間のスキルを一つしか持ちえない者のことを指す。スキルボックスに一枚分のスキルカードしか入るスペースがなく。普通の人間が二つ覚えられるスキルが一つしか覚えられないのだ。

 ただ、これは必ずしも蔑称と言うわけではない。

 生まれた時に一つもスキルを覚えておらず、スキルボックスにスキルを覚えるスペースが一つしかない者は確かに他より劣る。

 だが、一つしか覚えられない者の中には、あらかじめ生まれた瞬間、つまり先天的スキルとして習得しているスキルが他の人間の二つよりも強力である確率が高いと噂される。珍しい現象なので、事実確認をするほどサンプルはないが、火のない所に煙はなんとやらだ。


「その一族の長、つまりその子供の父親は大層怒った。これでは自分たちの代々受け継いできたスキルを継がせられないではないかと、怒り、悲しみ、そしてそれはその子供にぶつけられた。

 だが、子供が成長するにつれて、その怒りや悲しみは畏怖に変わる。

 その理由は、その子供のたった一つのスキルにあった」



 ミックスはばっと両手を広げる。

 リンの目の前には、その歪な体躯が晒される。


【能力名】

 完全体(アレモ・コレモ)

【LEVEL】

 LEVEL9(Max)

【スキル詳細】

 死後二時間以内の生物の肉体の一部を、自身の肉体の同パーツと入れ替えることが出来る。

 その場合、死体が生前に有していた機能、体質、特殊能力は全て使えるものとする。

 また、使用者と死体の身体のパーツのサイズが合わない場合、使用者の元のパーツと同サイズまで死体の肉体のパーツはサイズチェンジし、取り換えられる。

 ただし、肉体の十パーセント以上は同じ生物から取り換えることは出来ない。

 また、取り換える際は、その対象に触れていなくてはならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作をお読みいただきありがとうございます。
出来れば1ptだけでも評価を戴けると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ