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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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ひと時の休憩、騒がしさ

 大会議は、ルークの目的とする形に落ち着いた。


 その中でニアリスをこれからの計画から切り離して考えなくてはいけないのは痛手だが、仕方ないと飲み込む。

 その後の話し合いは全て終わり、会議室にはニアリスを部屋に送っていったナナキを除いたセブンズ六人とルークだけがいた。

 ルークは中々椅子から立ち上がらず、天井を見上げる。


「……終わったか」


 ルークは、一段落ついたことに安堵し、短く息を吐いた。

 そして、椅子に体重をかけ深く腰掛けると、そこに間髪入れず飛び掛かって来る者がいた。ワインレッドの毛色の大型犬、ではなく、セブンズが一人ヨハネがルークを強く抱きしめる。


「キング~、流石の手腕ですです~。私ぃ、感動して漏らしちゃうところでした」

「いや、まぁ、あの会議前にある程度決着はついていたんだけどな。あと、ルークな」


 ルークはヨハネの頬を手の平で押しのけようとする。


「もう、いけずですです。このままいけば、キングと私で世界征服も直ぐですね」

「そんなにうまくいけばいいけどな」


 ルークはヨハネを引き剥がすと疲れたようにもう一度ため息をついた。

 このヨハネと言う女、何故かルークを「キング」と呼ぶ。誰が訂正しても呼称を訂正せず一度はもう一人のセブンズ、ワンコと喧嘩になりかけたが、ルークへの敬意があっての呼び方との弁明で一応みな納得した。

 彼女曰く「いずれ世界を取るのだからワールドキングでもいいぐらいですです」とのことだ。

 たまに諦めてはいるが、思い出したようにルークが訂正を試みるが、今のところ効果は見られない。


 二人のやり取りを横で見ていたワンコはあずき色の髪をさらりとなびかせると、ルークに少し首を傾げながら問いかける。


「何か気がかりでも?」

「そう見えたか?」

「まぁ、はい」

「そうか、なんでもない」

「なら、いいのですが」


 この場でルークの違和感の真相に気が付いていたのは、赤、青の髪色を混じらせたニニだけだった。


(多分、ルークさんにとってもニアリス様をこんな形で排除するのは不本意だったんだろうなぁ)


 そのことを思っても、ニニは敢えて口にはしない。

 言ったところで本人は否定するだろうし、他のセブンズが想像するルーク像とのズレから噛みついてくる者がいても面倒だと思ったからだ。

 ルークは残念そうに呟く。

 決別と言えるほど歯切れのいい口調ではなかったが、次に進むための言葉を呟いた。


「どうにかして、口車でも何でも乗せてニアリスは手の平転がしておきたかったが、仕方ない。次の段階に進もう」


 ルークは立ち上がり、参謀室に帰ろうとする。

 ワンコは、その背をついて行こうとするが手で制される。


「大丈夫だ。護衛は強華が付いている。お前たちは休め」


 その言葉を発した瞬間、天井から何者かが音もなく降りてくる。

 サラサラの腰まで伸びた金髪、その燃えるような緋色な目とは対照的に全体的に落ち着いた印象を持たせる美しい容姿。

 それは先ほどまでの会議を天井に張り付いていて監視していた強華だった。

 強華はまるで他のセブンズが見えていないかのように、ルークに真っ直ぐ詰め寄った。


「ルーク、帰ろう」

「あぁ、そうだな。いい加減ティグレとリオンに仕事を任せ過ぎて爆発寸前だからな」


 強華はルークの袖を引き、帰宅を促した。

 その背をワンコとヨハネは熱望の眼差しで見送る。

 その双眸は僅かにだが細くなった。


「一応、言っとくけど、変なこと考えちゃ駄目だよぉ」


 ニニがワンコとヨハネの思考を読み釘を刺す。

 ワンコは心外だとばかりに首を振った。

 ニニは視線を合わせずに口を尖らせる。


「ニニ、変な言いがかりはやめてもらおうか」

「ですです」


 二人は知らぬふりして反論する。

 反省の色が見えない二人に、元傭兵だったゴローが野太い声で付け加えた。


「大体、強華ちゃんは馬鹿つえーぞ。俺たちが何とかできる相手じゃない」


 ゴローは数々の修羅場を潜り抜けてきたが故の経験則で語る。

 しかし、それがワンコには気に食わなかったようだ。


「我らセブンズはルーク様の右腕だぞ。誰が相手だろうと、そのような弱気な発言は許さん」

「別に敵じゃねーんだし、いいだろうが。それに右腕はどちらかと言うと、強華ちゃんや神崎の方なんじゃねーの?」

 

 ゴローは大して気にする様子もなく、ワンコの言葉を適当に応対する。

 ニニは面倒になりそうだと、他のセブンズに視線を向けると、ミックスとムッツリはやってられないと思ったのか、こっそりと退室しようとしていた。

 ニニに見つかったことに気が付き、気まずそうに一言ずつ残して去っていく。


「俺は今日はもう疲れたので、先に自室で休ませてもらいますね」


 と、マロ眉の長身男ミックス。


「ボクも腹が減って来たからパンツを食べに行ってきます」


 と、訳のわからない供述を述べた鬱陶しく伸び目元まで零れる髪のムッツリ。

 ニニはそれを見てため息をついた。


「全くなんてまとまりのない集団なんだぁい」


 比較的常識人枠のナナキが消えるとカオスも極まって来る。

 良くも悪くも、この集団がまとまっているのはルークが中心にいる時だけだ。

 綺麗に編み上げられた髪を気にしながら「ところで」とヨハネが残ったメンバーに尋ねた。


「キングの言ってた、次の段階っていつぐらいにやるんでしたっけ? 私ぃには特に必要ありませんが、セブンズに面汚しがいてもいけませんですしね」


 その言葉をワンコが受け取る。

 なんやかんやで、喧嘩も多いがルークに心酔していると言う点で会話も噛み合いやすく、コミュニケーション頻度の多い二人だ。


「近いうちにやるはずだ。私も特に個人では必要としていないが、お前やムッツリのように実戦経験の少ない者には必要だろう。せいぜいセブンズの名に泥を塗らないよう気を付けてくれ」

「はぁ、全然不必要なんですです~。私ぃの方がワンコロより遥かに強いんですけど~」

「ふっ、なら先ほどの会議で何故防衛団長に私がセブンズの中から選ばれたんだ? そういうことだ。あと、いい加減ワンコロと呼ぶのをやめろ」

「キングは一番暇そうな人を指名しただけですです」

「そんなわけないだろ! 信頼と実力によって選んだんだ!」

「わぁ、私ぃ、男の妄想が一番気持ち悪いと思ってるんですです。今度から近寄らないで下さいですです」


 こうして一瞬油断するとすぐに一触即発ムードになるのが玉に瑕だ。

 そして、大概ニニかナナキが仲裁に入る。


「はいはい、もう各自部屋に帰るんだぁい。ルークさんがみんな仲良くって言ってるでしょ」

「ふん、この女には協調性がないから困ったものだ」

「まぁ、私ぃもガキ臭い相手にムキになり過ぎましたですです。反省ですです」


 そして、また睨みあう。


「はいはい、ヨハネちゃん、私達はもう帰るんだぁい」


 きりがないと判断し、ニニがヨハネの背中を押して退室した。

 結局、物理的に距離を置かせるのは一番手っ取り早いのだ。

 残ったゴローが心底面倒そうにワンコを座ったまま見上げた。


「女と喧嘩しても疲れるだけだぞ?」

「すまない、私もセブンズのリーダーとして大人になるべきだった」

「まーだ、いってら」


 別にセブンズにリーダー制度はない。



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