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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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敵、味方

 ニアリスはナナキに自室まで送ってもらう道中、眉をしかめ、ナナキに声を掛けた。


「あなたたちは本当に人間が獣族を、亜人を、鬼を、魔王を倒せると思っているのですか」


 ナナキは色素の薄いブロンドを一度かきあげ、そのまま手を頭の上で固定する。

 言葉を選んでいるようだった。


「……僕は依然いた国で一番の騎士だった。子煩悩だった王は僕を第一王女の直属の騎士として任命した」


 唐突に始まった身の上話だが、ニアリスはそれを止めなかった。

 ニアリスもナナキも足を止めず、城内の廊下を歩きながら話をし、話を聞いていた。

 ナナキは遠い目をして、廊下の窓から見える外の景色に目をやった。


「しかし、任を受けてしばらくして僕達の国は獣族の集団に襲われた。僕らは交戦したが、僕の力では獣族の一人を押さえておくことで精一杯で、その間に姫は命を落とした。集団と言っても十人にも満たなかった。そんな数で僕の国は好き勝手に荒らされたんだ。馬鹿らしいだろ?」


 ニアリスはナナキの過去の悲惨さに顔を落とした。

 しかし、話はそれで終わらなかった。


「不思議なことに彼らは金品にも食料にも興味を示さなかった。何か満足気な顔をしている者と悔し気な表情の者、それらが去っていく背中にズタボロになった僕は声を荒げた。何が目的だったんだ、とね」


 ナナキはクスリと笑った。

 しかし、そこには確かな苦々しさがあった。


「道中に僕らの国があったから暇潰しに誰がその国の姫を殺せるか……『姫殺しゲーム』だそうだ」


 その言葉にニアリスは息を呑んだ。

 思わず進めていた歩が止まる。

 ナナキの顔を凝視するが、そこからは上手く感情を読み取れない。


「別に姫に惚れていたとか、守れなかった後悔とか、そんなものがあるわけでじゃない。でも、その言葉を聞いた時、全てが馬鹿らしくなった。彼らの獣臭さが今でもたまに鼻に蘇るんだ」


 ナナキは視線をニアリスに移す。


「僕はね、別にルークさんの世界征服になんてさほど興味はない。何人かのセブンズと違って心酔しているわけでもない。あの手腕は認めているけどね」


 ナナキは口にした。


「僕はただ散々好き勝手やって来た奴らを、今度は僕が殺せる機会を与えてくれたルークさんについて行こうと決めただけだ。だから、いつ死んでも悔いはない。死ぬまで一人でも一匹でも今までふんぞり返って来た奴らの首を狩るよ」


 それは下手なルークへの心酔よりも厄介だった。

 ただ、死に場所を求め、死ぬまで暴れたい。

 ナナキの言葉を要約すれば、そう受け取れた。

 その力を利用するルーク、しかし、それは同時にその力を使いどころを与えてくれると言う意味でもある。


 ルークにとっても、ナナキにとっても互いが都合のいいパーツなのだ。


 単純な復讐より厄介だ。


「まぁ、どこで嗅ぎつけてきたのか、そのすぐ後にルークさんたちの軍が来て、戦力の大半を失った僕らはほぼ無血開城状態で国を明け渡すことになったんだけどね」

「あはは」


 ある意味、獣族よりも酷いのではないかとニアリスは乾いた苦笑いをした。


「まぁ、つまり僕個人の意見としては出来る出来ないはどうでもいいよ。出来るところまでやらせてもらうって感じだね」


 ニアリスはナナキの顔を先ほどまでの惨事も忘れ、優しく見つめた。

 それはどこか母性すら溢れていて、見守るといっても可笑しくないかもしれない。


「……ナナキさんは、その姫のことが忘れられないのですね」


 ナナキは「ぶっ」と吹き出し、何度かせき込んだ。


「どこをどう聞いたら、そうなるんだ。そういうのじゃないと、はっきり言っただろ」

「言葉は嘘をつけます。私があなたの表情を見ていると、どうやらあなたは振り上げたままの拳を下ろす場所を見失い、ただ駄々をこねている子供のように感じます」

「勝手な決めつけはよしてくれ」


 ナナキは相手のペースに乗るまいと話を区切る。

 その背中にニアリスは少し元気が出た。

 彼はルークの手先だ。自分とは、本来相いれない人間、敵視しなくてはいけない人間、そう身構えていた。

 だけど、それでも一人の人間、組むべき事情や考え、信条があるのだ。

 

 自室に戻ったら、ベッドで泣き喚こうと考えていたニアリスは、その陳腐で甘えた考えをやめた。

 まだ、自分にも出来ることがあるはずだ。

 この国を見捨てることは出来ない。

 それには多くの国民の顔を見過ぎた。

 この国を見捨てると言うことは、彼らを見殺しにすると言うことだ。

 ニアリスがルークの意に反すれば、そのぐらいやってのける男だ。

 ニアリスは今、自分に出来ることは何なのかを考え始めた。


 ここからが、人形の王から本当の王へ変わる時だ。



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