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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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会議、結果 後編

 目の前の現実にニアリスは言葉を失う。


「さようなら、ニアリス様。あなたとはもう少し穏便な関係を築きたかったです」


 ルークは、眉を少し下げ、悲し気な表情を作る。

 これは嘘ではない。

 彼の心からの言葉だ。


 会場を見渡し、手を挙げている人間を数える。

 いや、数えるまでもない。



 その数、一。



 その一であった貴族代表のギルバードも、今や周りを見渡し自信なさげに挙げた手が沈んでいく。

 ニアリスはハッとなり進行のミズタマの顔を見る。

 その顔には微塵も驚きが見られない。

 まるで知っていたかのように。


「これは、出来ればやりたくなかった。これは本心です。あなたとはこれからも仲良く国を運営していきたかったんです。それが一番角が立たない。でも、これ以上噛みつかれては色々と支障が出てきます」


 ルークも落ち着きを払い、淡々と口にする。


「冷静に考えてみてくださいよ。この国の骨格作りに一番尽力したのが誰なのか、決定権が誰にあったのか、外務大臣のシグレさんは? 財務大臣のハバトは? 法務大臣のミナトは? 誰が就任させたんでしたっけ?」


 これは当たり前の結果だ。

 この国の骨組みは大半がルークが作ったものだ。

 前国家の流用が多いとはいえ、それは組み易しと考えた相手や自分と考えの近い能力の高いものをかき集めたうえでの決定。

 ニアリスの意見も採用したように見えて、その実情はある程度どれでも困らない選択肢の中から選ばせていたに過ぎない。

 そして、今の計画を、世界掌握、世界征服、この考えを現実にする根回しをほぼ完成まで持っていっていた。


「最後は、どうでもいいギルバードを押さえれば完璧でしたけど、そこまで上手くはいきませんね。少々時間が足りなかった」


 ギルバードが最後の一吠えとばかりに噛みつく。


「貴族を皆敵に回して、ただで済むと思っているのか⁉ 土地は‼ 金は‼ 誰が出していると思っているんだ‼」


 ルークはニアリスに向けていた時の憐憫な目ではなく、心底どうでもいいものを見るような目でギルバードを見下す。


「あぁ、あなたが一番うるさいので貴族代表にしておいてただけで、別に変る首はいくつもあるんですよ。例えば、バティスティ家とか、少々ここからは遠いですが、あなたのところよりよっぽど格調がある」

「ぐっ」


 ギルバードは歯噛みする。

 バティスティ家、それはリオンの実家の名前だった。

 実際にルークにとってメイドのアレットが色々怖いので、指名することはほぼないだろうが、その名はそれなりに牽制となる。

 それに貴族の首をすり替えられるのは事実だ。

 只従順なだけの候補は多い。


 吠えることの出来なくなった負け犬を、ルークの周りに座っているセブンズがにやにやと見世物でも見るように目にする。

 言いたいことを言い、ギルバードに興味を失ったルークは会話の相手を戻す。

 その相手は愕然とし、項垂れるばかりだ。


「ニアリス様、あなたのプランは未来がない。夢物語だ」

「……ルーク様の、あなたの望む未来に何の意味があるのですか」

「頂に立つのに意味などいらない」


 ルークの言葉から敬いの言葉が消えた。

 ルークはミズタマに顎で指示を出す。

 ミズタマは静かに会釈する。


「では、結果は明らかですが、最終決定を降させさせて頂きます。今後、国の方針はルーク参謀総長の案で展開していきたいと思います。また、国王ニアリス様の政治不介入により今後の政治的方針の最終決定権もルーク参謀総長に譲渡する形を提案しますが、異議のあるものは?」


 異議など唱えるものがいるはずもない。

 もうこの場は、この国は一人の男に表裏支配されてしまった。

 

 ルークの満足気な下卑た笑みが、この議会の正解となる。


「では、もう今日の『大会議』はこの辺でいいですか? 大変有意義なものだったですね。ナナキ、ニアリス様を部屋まで送っていってあげてくれ」


 ルークはナナキに指示を出すと、ナナキは席から立ち、ニアリスに退席を促す。

 それに特に抵抗することもなく、ニアリスはよろよろと立ち上がる。

 彼女の美しい白銀の髪の色にほんの少し陰りがかかったように見えた。




 ルークの真後ろに座っていたセブンズが一人先ほど防衛団長に指名されたワンコが、ルークに耳打ちする。


「良かったのですか、あまり矢面に立つようなポジションは嫌っていたのでは?」

「まぁ、仕方ないさ。道具の消費期限が来たと言うだけの話だ。これからは色々前倒しで動くことになるが頼んだぞ」

「はい、それは。しかし、ニアリス様の造反の心配は?」

「それについても大丈夫だ。自分が動くことでどれだけの人間が死ぬのかもわからない馬鹿ではない。このホイホイの国民全てが彼女の人質だ」


 ワンコは合点がいったのか、軽く頭を下げ、椅子に深く座り直した。


 そして、残った会場の皆がルークに視線を注ぐ。

 それに答えるようにルークは立ち上がる。

 ルークは喉の調子を整え、会場全体に響く声をあげる。


「ニアリス様に退席頂き、我らホイホイ国家内に組織する世界征服組織『チャトランガ』の話し合いがようやくできるな。では、始めようか―」


 ルークはそこで一度区切る。


「―底が頂に変わる時間だ」




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