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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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実り、実害

――ホイホイ城内、会議室


 そこには多くの人がいた。

 どこの世界も熟して来れば実の数は増える。

 不必要に。


 今日の会議はいつもより大規模なもので、ホイホイ領土内の貴族代表や全大臣、そしてニアリス国王も顔を出していた。

 

「見慣れぬ顔が増えておるが、新顔か?」


 顔に年相応のしわを蓄えた貴族代表が増えた七つの顔に怪訝な表情で尋ねる。

 そして、その質問に答えたのはその七人ではなく、その中心にいたルークだった。


「これはギルバート様、お初にお目にかけます。こちらはセブンズ。右からワンコ、ニニ、ミックス、ヨハネ、ゴロー、ムッツリ、ナナキです。以後、お見知りおきを」

「ほう、そいつらが噂のセブンズかね。こんなところまで連れてくるとは、ルーク殿ご自慢らしいな。でも、今から大事な会議なんだ。早いところ外に出したまえ」

「ご配慮くださりありがとうございます。ですが、心配には及びません。こいつらも今や正式にこの会議に加われるだけの役職持ちです」

「なっ、急に七人もの大会議に参加できるだけの役職を作ったのか! ルーク殿、いくらなんでもそれは越権が過ぎるぞ!」


 貴族代表のギルバートは激昂した。

 今回会議は『大会議』と呼ばれる月に一回国の現状の問題、これからの方針、行く末を話し合うかなりの権力者たちが集まる会議となっている。

 気密性や決定事項の重みも高い。

 そこにルークの息のかかった七票が加わるのは避けたいのだろう。


「おやおや、ギルバート様はもうお忘れになったのですか? 最近、空いた役職があるではないですか?」


 ルークはにやにやといやらしい笑みを浮かべる。

 ギルバートは逡巡したが、脳裡に浮かんでこない。


「七つも空いた席などあるわけがないだろう」

「確かに七つはありませんが、そこはまだまだ未熟なセブンズ、数で補わせていただきます」

「なっ、そんな事許されるはずがないだろう! 議席のバランスも崩れる」


 ギルバートの怒りはふつふつと上がっていく。

 しかし、この世界で結局金や地位をどれだけ振り回そうと、最後にものをいうのは暴力、自衛の力なのだ。どれだけ金を余らせようとも、通り魔の一刺しで死ねば何の意味も無くなってしまう。


「防衛団長」


 その言葉にギルバートはハッとなる。


「アシュバルの席か」

「そう、私がホイホイを開けていた間に卑劣にも獣族の襲撃に遭い、勇敢な前防衛団長のアシュバル様が命を賭してこの国を守ってくださいました。私はただその意思を引き継ぎたいだけなのです」

「……白々しい」


 アシュバルもルークとそこまで対立をしていたわけではないので、そもそも無理してその席を狙う理由もなかったのだが、こうなれば話は別だ。

 外交の大半はルークと外務大臣のシグレが取り仕切っている。

 更に今敵国から何時攻撃を受けてもおかしくない状況で、防衛団長を地位を手中に収めるのは、実質的内政も手にしたに等しい。

 現に今の言葉にギルバートは黙ってしまった。

 どう考えても防衛団長の椅子に七席は無茶苦茶だ。

 だが、この国でルーク程自由に武力を動かせる人間はいない。

 せいぜい、国王のニアリスが少し離されて次点といったところだ。

 城内での人間関係をルークはルイやバルゴスといった軍人関係から深めていった。それはくだらない土地争いや商売の権利争いをしている貴族や商人より後々効いてくることは明白だったからだ。

 ギルバートを含め、他の権力者たちには国を守るだけの代替戦力がない。

 セブンズに防衛団長を降りられると「なら、代わりは?」と言われた時にまともな代わりを用意できないのだ。

 それは命の危機に直結する。

 ホイホイのルークへの依存度は日に日に増していた。


 しかし、まだこの会議において、いやこの国においてルークに比肩し、意見出来る者がいた。


「あの、ルーク様。流石に七席は多すぎないでしょうか? せめて三席か二席にまで絞ってもらいたいのですが」


 ルークが担ぎ上げた飾りの国王、傀儡の頂点、元イリアタの姫、ニアリス。

 ルークはギルバートに向けていた薄汚い笑顔ではなく、好青年のような晴れやかな笑顔でニアリスに対応する。


「ニアリス様、確かに一見多く見えるかもしれませんが、今我が国を渦巻く戦況は逐次変化していっております。この目まぐるしく状況にも即座に対応できるよう防衛の要である防衛団長の頭は多い方がいいのです」

「ですが、多い頭は指揮系統の混乱も招きます。必ずしも良い点ばかりではないはずです」


 ニアリスは食い下がらなかった。

 強い意志をもって、その白銀の髪が揺れる。

 始めは慣れない王の仕事に戸惑いを見せていた彼女だが、今は国をよりよくしたいという一念で弛まぬ尽力で尽くしている。

 ルークもこれからの議題のために強くは出ない。


「わかりました。では、防衛団長はワンコに任せ、その他六人は補佐、議会での有権は一票で、他六人は出席だけという形でよろしいですか?」


 ルークが大幅に折れた形に周り表情はどこか含みを持つ表情を作る。

 ニアリスはその提案ににこやかに礼をする。


「ルーク様、ありがとうございます。それでは今回の最重要議題を話し合いましょう」


 しかし、これは結果としてどさくさに紛れて特に会議もなしに防衛団長の地位をルークの手の者に渡していることになる。

 完全な軸のすり替えで、結果を得ていた。

 話し合ったところで似た結果は得ていたかもしれないが、ルークとしては上手く手間を省きたかったのだろう。


 ニアリスの言葉を聞き、進行が声をあげる。

 進行の眠たげな眼をした女は淡々と用意していたメモを読み上げる。


「では、これより進行は私、ミズタマが務めさせていただきます。今回の議題は―」


 ルークとセブンズの笑顔がやや引きつったものとなる。


「―先日のルーク様のラブジルでの発言。世界を取る発言。現在、各国からの問い合わせが絶えないこの案件を今日の最重要議題とさせて頂きます。ルーク様、発言の真意、今後の対応など答えてもらいますよ」


 ラブジルでの失言から三日。

 事態は一切収束していなかった。

 ニアリスの笑顔が怖い。




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