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過激な結末、前途多難

「……そうだったな」


 ルークは、口の中で誰にも聞こえないようにそう言葉にした。

 バレッタにもリオンにも聞こえていない。

 だから、リオンはお構いなしに続ける。

 左右に分けられた髪が激しく揺れる。

 

「その結婚、待った!」


 群衆はあっという間に視線をリオンの方に集中させた。

 この国ではバレッタに意見することは死を意味する。

 誰もが、リオンの凄惨な未来を頭の中でイメージした。


 バレッタは逃げも隠れもしない。

 ただ、その乱入者を心から歓迎するように話を聞く姿勢を見せる。


「なんだ、なんだ、ダーリンの妾か?」

「似たようなものかもな」

「結構、結構、乱入者は大いに盛り上がる。このままじゃつまらないと思ってたんだ」


 リオンは拳を握る。

 肝心なところで脳筋な彼女には、それしか思いつかなかった。

 バレッタはそれに反射するように客車の屋上を蹴り、飛び出した。

 ルークは足元の揺れを静かに受け入れる。


 二人の拳が交わった。


「そいつは渡さない」

「私は自分のものを他人に渡したことがないんだ」


 リオンの前スキルにより歪な動きを見せるも、すぐに対応し始めるバレッタ。


 ルークはそれを眺めた。

 観衆は固唾を呑んでいる。

 均衡は中々崩れない。


 しかし、時間にして一分もせず、次の動きがあった。


 ルーク自身が初めに会ったリオンに言った事ではないか。

 結婚? 

 馬鹿らしい。


 手に持った婚姻届けを握り潰す。

 ルークは足に力を込め、彼もまた客車の屋上から飛び降りる。

 二人の元に颯爽と駆ける。


「待つのはお前らだ!」


 ルークは二人に声を掛ける。

 二人の動きは、すぐに止まる。

 正確にはルークの立ち位置を掴みかねている。

 自身の味方か、相手の味方か、そもそもここで自分に危害を加える意味も理由もない。

 ならば、二人が観察に、様子見に回るのは不思議ではない。


 しかし、ルークは飛び上がり、二人の首をラリアットの要領で腕にかけた。


 二人が状況を理解できていないタイミング、出来るだけ早く決める。


 ルークは大胆さと冷静さを頭の中でミックスする。


 時間外(オーバー)労働(タイム)


 ルークは二人に疲労を付加する。

 そして、膝から崩れるほどまで疲労させると、その場に一人だけやせ我慢で君臨する。


 手に丸めた婚姻届けを観衆の目の前でビリビリに裂いた。

 そして、大きく息を吸う。


「よく聞け! 俺はルーク・レビヨン。この世には二つのものがある。自分のものと他人のものだ。そして、俺はその全てを手中に収める男! 結婚なんて馬鹿らしい。俺がお前たちを苦しめてきたこの女を一方的に所有してやる。この国はもう争いに出なくていい。だた、ホイホイに武器を製造して流してくれれば後は自由だ! そして、お前たちはこの世界を取るルーク・レビヨンの第一の配下となる!」


 ルークか足元のバレッタを足蹴にする。

 長い沈黙が場を支配した。


「……すげぇ、あの悪魔を倒した」


 その沈黙を破ったのは、奇しくもアレーニェの村に向かう前に街中でバレッタに突っかかっていった兄を戦いで亡くした少年、アミだった。

 それを皮切りに観衆からぽつぽつと声が上がり始める。


「俺見たぜ、あの人、こないだ街中で姫の暴走を止めてたんだ」「今だって、止めてなきゃいくらかの巻き添えが出てたよね?」「でも、世界を取るとか言ってるよ」「危なくないのか?」「でも、もう俺たちは戦わなくていいって」「とにかく、あの悪魔が俺たちのトップじゃなくなるなら何でもいいだろ‼」


 必ずしも肯定的な意見ばかりではない。

 だが、疑問視する声はあっても、完全に否定的な意見はあまり無かった。

 ラブジルの国民の一番の悩みであるバレッタが次期国王という目の前の問題が解消しそうだからだ。


 となれば、後ははやい。

 小さな否定派も微妙な疑問派も圧倒的肯定派に飲み込まれていく。


『『『『ルーク‼ ルーク‼‼ ルーク‼‼』』』』


 歓声が上がり始める。

 彼は本当の意味でラブジルを手に入れた。

 意図せぬ形、即興、心からの声で。

 持たぬものが持つ渇望。

 それが国民に響いた。


「あんた、分かってるんでしょうね」


 地面に転がるリオンが呻く。

 珍しく計算からの言葉ではなかったルークは首を傾げる。


「何をだ?」

「……今、あんたは世界を敵に回したわ。今の発言はきっと外に漏れる。そうなれば、最下層の人間の一国家が獣族や亜人族、魔王にまで喧嘩を売ったってことよ。計画では人間の国家を全て手中に収めてからの宣言だったはずでしょ? 前倒しもいいところじゃない」

「…………あっ」


 ルークの口から間抜けな声が漏れた。

 やはりご利用は計画的にだ。

 その場の感情で動くと、どこか見落としが生まれる。


 ルークは、ホイホイとラブジルしか手に入れていない状態で、今から世界を敵に回すこととなった。

 今まで様子見だった人間の国も、他所の種族もホイホイに対して本格的な調査、蹂躙に回る可能性が高い。

 それは今のラブジルなど遥かに超える地獄がホイホイを待つことになる。


 ルークの足首からみしみしと怪しい音が聞こえる。


「よぉ、楽しそうなことになって来たじゃねーか」


 それはバレッタがルークの足首を握る音だった。

 彼女は怒っているわけではない。

 これから考えられる強者、化け物との戦いに子供のよにワクワクとしているのだ。


『『『『ルーク‼ ルーク‼‼ ルーク‼‼』』』』


 集団の思考が一つに染め上げられたことで、その結論に辿り着いてない観衆。

 

 この日、ルークは世界を敵に回すことを計画より大分早く宣言した。




 因みにラブジル王はショックのあまり泡を吹いて昏倒していた。





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