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ぷにぷに、ぷにぷに

 ルークたちがまた半日近くかけて馬車に乗り、ラブジルに帰ってきた。

 途中黒焦げのバレッタが死んでしまわないか心配ではあったが、意識までは戻らないものの恐ろしい生命力で一命はとりとめていた。

 あと、ラブジル国内の医療チームに任せれば大丈夫だろう。


 ラブジルの王は小さい頃からスキルのおかげでまともな怪我一つ見せなかった娘が黒焦げになって慌てふためいていたが、なんとか事情を説明し終えることが出来た。


 因みに、バレッタを黒焦げにした張本人であるアレーニェは先にホイホイの方に向かわせた。

 流石にアレーニェの部分の話はぼかし、生死不明で逃げられたという話にしておいた。


「まさか、花嫁が結婚前に黒焦げになるとはな」

「結局、結婚するの?」


 ラブジル城内の廊下を二人並んで歩いていたルークと強華。

 強華はルークの顔を覗き込むように顔の位置を低くする。


「まぁ、約束だしな。これからもあの村は利用しなきゃいけないし、現状結婚するしかないだろう」

「そっか、頑張ってね」


 強華は両手の拳を握って、豊かな胸の前で力を込める。


「頑張るって……別に戦うわけじゃないんだぞ、便宜上そうなるだけだ」

「つまり、ワタシが姑?」

「なんで、そうなるんだ」


 強華のどこかずれた会話に困惑しつつも、二人は自分たちに用意された客間に入室した。

 そこにはシグレとティグレがいて、シグレは本を読んでいて、ティグレはモンブランを食べていた。

 シグレは二人の入室に気が付き、顔を上げる。


「あっ、おかえりなさい。大変だったみたいですね」

「大変なんてものじゃないですよ」

「お土産はないのか?」

「そんなものはない、お前は少しは仕事をしろ」


 舐めた口を叩くティグレに、ルークは電気糸を口に突っ込んでやろうかと衝動に駆られた。

 しかし、ここはグッと堪える。


「まぁ、黒焦げの花嫁も明日には回復するだろう。明日の参列ぐらいは頼むぞ」

「任せておけ、婚礼料理は豪華にしろよ。それと入刀するケーキはモンブランがいい」

「……お前な」


 二度目は堪えきれず、ティグレの座るソファに近づき、容赦なくそのお腹を摘まむ。

 ルークは、デザートの過剰摂取による程よく脂ののった揉み心地の良い腹肉を指先に感じる。


―ぷにぷに


「最近、ここヤバくなってるぞ」

「んっ、やめろ、あっ、私のお腹で発情することは許さんぞ」

「誰が発情するか、この腹をもがれたくなかったら、もう少しぐらい俺に協力的な態度を示せ、俺のスキルの情報が欲しいんだろうが」


―ぷにぷに


「んっ、あんっ、わっかった、わかったから、腹をぷにぷにするな」

「いーや、やめん、俺がどんれだけ苦労して帰って来たと思ってるんだ。お前は毎度毎度食っては寝てを繰り返しやがって」


―ぷにぷに


「あっ、本当にあぁ、もうやめっ、やめろ~」


―ぷにぷに


 一説によると、程よく脂肪のついた腹肉は女性の胸部の揉み心地に匹敵するとか、しないとか、学者の間では噂される。


「はぁはぁはぁ」


 長いぷにぷにの刑によりぐったりとするティグレ。

 ルークは思わぬところで対ティグレの武器を手に入れた。


「はぁはぁ、私なんかより、もっと出席に相応しい奴がいるだろ」


 ティグレは息を切らせながら、言葉を吐き出す。


「誰のことだ?」

「はぁはぁ、リオンはいいのか?」

「……あぁ、まぁあいつなら最初は怒るかもしれんが、分かってくれるだろう」


 ルークはラブジルに出発する前に意図的にリオンを置いてきた。

 バレッタとの結婚に確実にいい顔はしないだろうし、なにより、


「ところで、勿論あの女の好意には気が付いているんだろうな?」

「……何年一緒にいると思ってるんだ。昨日今日の関係じゃないんだ」


 当然ながら、ルークはリオンの好意には気が付いていた。

 幼少期からの付き合いで、半ば姉弟的家族愛も多分に含まれてはいるが、リオンのあの感情は間違いなく恋愛的感情だ。

 それを否定したり、誤魔化したりするほど、間抜けではない。

 二人の会話を聞いていたシグレが割って入る。


「あの、それじゃあ、流石にリオンさんが可哀想じゃありませんか?」

「いいんですよ。俺が何をするかは伝えました。あとはあいつがどうするかは、あいつ次第です」


 ルークのその言葉は無自覚だったが、その言葉の奥にはどこか淡い何かが見え隠れしているようにシグレには感じた。



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