終わりに彼は何を思う
「違う、俺は今から神崎を殺して世界の王になるんだ。いや、神だ。俺がこの世界を支配するんだ」
「……キング」
「くそ、殺せよ。強華‼ ヨハネ‼ ティグレ‼ リオン‼ 誰でもいい‼ 神崎を殺せよ‼」
「ごっ、ごめんね、ルーク。私達、我儘放題が発動している限り神崎に危害を加える気になれないの」
生き返らせたリオンが泣きはらした目から零れる涙を拭いながら謝罪する。
そして、その涙にはルークとの別れを予期する意味を含まれていた。
長年連れ添った幼馴染にその表情から流石のルークも悟った。
「……そうか、終わりか」
ルークの周りにその場にいた者たちが集まって来る。
最後に彼を見送る為に。
「はは、馬鹿みたいな最後だな。あれだけ多くの犠牲を払って得た頂点の椅子も数分で取り上げられてしまうとはな。そのみすぼらしさが俺らしい」
「……例え一分だろうと人が魔王になり世界を支配したのは世界史初ですです」
「払ったものに見合ってないよ」
段々とルークの声音が優しくなっていく。
そして、神崎を見上げる。
「あぁ、すっきりしないな。せめてお前を元の世界に葬れていたらまた気持ちが違ったのかな。目の前の障害が残ったままの魔王ってのもな。ほんとしっくりこない。まぁ、これも俺らしい」
「僕は君を看取ってから元の世界に戻るよ」
「はは、ほざけ。一秒でも長く俺の方が長生きしてやる」
ルークはここまでの道のりに思いを馳せた。
後悔はなく、反省もない。
ただどうしても浮かんでくるのだ。ここまで歩んできた道のりを共に歩んできた者たちが。
「そうだ…約束があったんだった。アレーニェの村の奴等を生き返らせとかなきゃな。ついでにあいつが間抜け面を晒して滑稽だろうからにアレーニェも生き返らせといてやろう。イチとニーには大きな借りがある当然生き返らせる。バレッタは平和な世界では生き辛いかもな、嫌がらせの為に生き返らすか、そうだ他のセブンズもついでに生き返らせておこう。上手くいけば俺の遺志を継ぐかもしれん…あと、あいつとこいつと、そいつと―」
ルークがうわ言のようにぶつぶつと言葉を溢した。
床に倒れたままの彼の手が発光する。魔王の力を行使しているのだ。
例えそれが残り少ない寿命を縮めることになろうとも。
もう本当に力が残っていない。
ルークが最後に視線を送ったのは意外な人物だった。
「……勘違い、するなよ」
そこにいる誰もがルークの最後を悟っている。
だから、誰も声を出さない。その最後の言葉を聞く為に。
「これは帳尻合わせだ。後付けだ。思い付きに過ぎない」
ルークは膝をついたまま右手を挙げる。
「ただ証明したかっただけだ。証拠を残しただけだ」
ルークの声の音量が段々と小さくなっていく。
「後から絶対に微笑んだりするんじゃないぞ……ニアリス」
「……私は貴方にこそそうであって欲しかった。必要ならば最後に私のスキルを送りますよ?」
「必要ない。今の俺は心の底から笑える」
彼は最後にニアリスにそう吐き捨てて命を落とした。
その遺体は誰も今までに見たことのない満面の笑みでそこに存在していた。




