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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
最終章 誰もが欲しいものへ手を伸ばし、勝者は只一人
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最後の最後に彼は漏らす

「……アナタは本当にいつまでも子供だね」


 強華は吐き捨てた。


「アナタの正義とやらは確かに綺麗で正しいかもしれない。でも、それは綺麗で正しいだけでそこにアナタの信念は感じない。初めて会った時からそうだった。アナタの正義は借り物で誰かの物。それは誰かの代弁、それはアナタ以外でも良かった。ただ、たまたまアナタが力を手にしたから実行しているだけ。いや、アナタは手に入れた力の言い訳が欲しかっただけ! この力はこう使うから僕は悪くないですよ。みんな、僕を好きになってくださいって見えない誰かに媚びを売る」


 強華の空弾の雨は止まない。


「……今日は随分喋るじゃないか」


 神崎はガード越しに強華へ返事をした。

 背中越しに水の柱と炎の柱が生えてくる。


(まずい、あれはノーモーションでも打てるのか)


 強華が攻撃に備えて一瞬身構えた隙を神崎は見逃さない。今度は神崎のターンだ。水の柱と炎の柱が交互に強華を襲う。


「僕と君たちの他の異世界転生組とは一つだけ違う点がある。わかるかい?」


 今度は強華がガード越しに耳を傾ける。


「君たちは前の世界から飛び抜けた何かを持っていた。だけどね、僕は違うんだ。前の世界じゃ名前もないようなモブ、村人A、小説の中では一行も描かれない脇役だったんだ」


 心なしか攻撃の威力が上がっていく。


「なぁ、そんな僕にどんな信念を持てって言うんだよ。ただ消費する日常を送っていた僕にどんな理想を! 個を! 正義を描けばいいんだよ‼」


 水と炎の波状攻撃に気を取られて強華は神崎本体を見失った。


「わからないから僕は教科書に書かれた綺麗なだけの理想を演じているんだ。本音を言ってあげようか、僕は汚くても歪んでいても揺らがない君たちの信念が妬ましくてだから邪魔しているだけなのかもしれない」


 強華は神崎に背後を盗られた。

 左わき腹を抉る左の中段蹴り。

 強華は壁に叩きつけられる。


 残り二分五十八秒。


「この力に戸惑わない為に僕は僕なりの処世術で多数を選んだ。多数が褒めてくれる正しさの数の多い順の理想を描き続けた。一人でも多くに好かれたかった。それが間違いだったとは言わせない」


 彼のこの世界に来てから初めて漏れた本音。


「礼嗣様」


 神崎はその声にビクッと震え視線を与えた。

 ニアリス、ホイホイの王が、彼を慕う者がそこにはいた。きっと下の階から救援に小戸ずれたのだろう。

 魔王の間の扉の前でニアリスは彼を知る。

 彼女もまた彼の底に沈む表情を、不安を見落としていたのかもしれない。


「ようやく無個性から没個性くらいにはなったんじゃないか」


 ニアリスの隣でティグレの意地悪な表情が妙に神崎の脳裡に残った。





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