願いは誰の手に
「やっぱり、お前の中には何かがいた。鬼々はそれだけを斬った」
カランと大鎌が地面に落ちると同時にルークの膝も地面に落ちた。
そう鬼々は鬼の力でルークの中に居た最後の転生者『別世界の魔王の魂』を斬り浄化したのだ。
「ぐっ、馬鹿な。その力は魔王になると同時に使えなくなったはずだ。魔王へのなる為の代償として自分の種族を捨てること、それが条件だろ!」
ルークは取り乱す。
彼の言う通り新魔王である鬼々にはもう鬼の力は使えない。それが例外なく魔王になるものの代償だ。
「……だから、捨てた」
「は?」
「鬼々はもう魔王じゃない。ルーク、お前を殺す為に鬼々は魔王を捨てた」
「賭けだったけどね」
二人の会話に神崎が割って入る。
「ルーク、短い天下だったね」
「そうか、お前の入れ知恵か……俺はまだ天下を取った覚えはないぞ」
再び三人が相対する。
「ならば何者でもないお前たちに何者でもない俺が問おう。今の魔王は誰なんだ?」
鬼々は特に間置くことなく、さらっと言ってのけた。
「お姉ちゃん」
ルークは「は?」と本当に訳が分からないと言うように口から息が漏れた。
「神崎に渡すのは癪だし、ルークは論外、ならさっきから鬼々たちの戦闘を見ている二人のどっちかしか選択しないでしょ。一人はよくわかんないし、それなら鬼々はお姉ちゃんに渡すよ」
ルークと神埼が魔王の間に立つティグレに視線を注いだ。
ティグレは間抜けそうな顔で二人を見つめ返した。
「なんだ。くれるっていうから貰っといたぞ」
彼女は事の重大性を全くわかっていなそうだった。
「ティグレ! それを俺に寄越せ!」
ルークが事態をようやく把握し慌ててティグレの元へ向かう。
「させるわけないでしょ」
鬼々は完全に形勢逆転と言わんばかりにルークの蹴飛ばし制圧する。
「うん、やっぱり鬼々には魔王なんて似合わなかったんだ。やっぱりこっちの方がしっくりくるや」
「ティグレ! こっちにこい! 俺を魔王にしろ!」
「だから、させないって。あっ、でもお姉ちゃん、お姉ちゃんの魔王の力で死んでしまった鬼族のみんなだけは生き返らせてあげて」
二人は同時にティグレに請う。
そして、ティグレは答える。




