運命は捻じれたまま
「鬼々はお前を殺す」
鬼々が弱々しく鎌を振るう。
それは子供にだって避けられてしまいそうなか弱い攻撃。
ルークはそれを避け、鬼々の顔面に蹴りを入れる。
もうこの世界の頂点たちはそんな底まで堕ちていた。
どんな種や仕掛けがあろうともルークが強くなってしまったのは事実なのだ。その原因を掴み、解決しない限りは勝ち目はない。
「―何か……何か理由があるはずなんだ。力を解放したトリガーが」
神崎は鬼々のお陰でルークの力の正体は分かった。でも、どうしてそこまでの強さを手に入れたのかはわからない。いや、厳密にはアタリはついているが、詳細が分からないのだ。
十中八九、異世界転生の力だ。
異世界転生で異世界転生者を呼び出し、何かしらの方法でルークは力を付与させたのだ。だが、その付与させた方法が分からない。
その正体さえ分かってしまえば、それを取り除けばいい。
だが、まだ神崎も鬼々もそこに辿り着けていない。
(近くにルークの力を底上げした異世界転生者がいるのか?)
神崎は周囲をキョロキョロと見渡すが、それらしき人影は見えない。それとももう既に力を解放させたのちここから離脱したのか、そもそもこのルークの力は取り除けるものなのか。
(なんにしても正体を知る事でしか先に進めない)
神崎が両手から水流を発生させ、それを天井に目掛けて放つ。水流は重力により力なく落下し、人工的な雨となる。
次に神崎は最大火力で両手から炎を発する。
たちまち水蒸気が発生し、魔王の間全体を覆っていく。
「ふん、目くらましか。弱者の戦法だな」
弱者側だったルークはすぐさま神崎の意図を読み、鼻で笑う。
ルークの視界を遮った隙に神崎は鬼々の身体を起こす。
「よく聞け、ルークの力の源は異世界から呼び出した人間の力によるものだ。つまりそいつさえ見つけてしまえばあの力は取り除ける」
鬼々は数秒ぼうっとしていたが、頭を切り替え、短く頷いた。
「世界中の誰に殺されるよりもルークに殺されるのが嫌。鬼々も少しの間だけお前に協力してあげる」
こうして休戦協定が結ばれた。
「どこだ! どこにいるんだ!」
「駄目、鬼々の五感にも全く反応しない」
微かに聞こえる声と辺りを捜索している二人にルークはようやく気が付いた。
「ふっ、弱い者同士で手を組んだか」
部屋の外から見ていたティグレたちもようやく戦況が見えてくる。
「さっきまで神崎に縋ろうとしていたキングに対して、今度はあの化け物の二人が手を組んだですです」
「ふむ、不思議な光景だな」
休戦協定。
それは本来、ルークが神崎に対して結ぼうとしていたもの。
でも、運命が二人を結ぶことはもう二度とないのだ。一度目の出会いですら奇跡だった。
「俺にはもはや必要のないものだ‼」
視界は悪いままだが、ルークが声のする方へ時間外労働を放つ。




