反転する世界
「世界は最後の最後でひっくり返った。全ては俺の手元に集まったんだよ」
ルークは拳銃を構える。
神崎と鬼々は身構えることすらしない。それを回避することは二人にとって朝飯前だし、威力もたかが知れている。
―パァン、パァン、パァン
乾いた音が三度なった。
「少なくともお前は先ほどの攻撃で違和感を感じるべきだったな。最強とはこうも脆いものか」
その三発の弾丸は全て鬼々に当り、彼女はその場に膝をつく。
「なんで?」
鬼々は混乱しているが立ち上がれない。
ルークは今度は腰から鞭を抜き取る。
それをゆったりと揺らし、徐々に加速させ、神崎に振るった。
神崎はそれを回避するために一歩後ろに下がる。
「無駄だ」
神崎はルークの鞭での攻撃を全て受けてしまう。
それはずっしりと彼にダメージを与え、一瞬で膝をつく。
「……キング、いやゴッドですです」
世界最強の二人を一瞬で制圧したルークを見て立ち尽くすだけのヨハネからそんな言葉が漏れた。
「ルークの攻撃手段や威力、スピードが上がっているようには見えないな」
「そんなのどうでもいいですです‼ 今、目の前に広がる景色だけが現実ですです‼」
ティグレの言葉を遮るようにヨハネが興奮気味で話す。
「あぁ、なんて気持ちいいんだろうな。俺を見下し、駆除することしか頭になかったお前らを見下ろすのはな」
ルークは尚も鞭を振るう。
追撃、追撃、追撃。
一瞬の隙を突き、鬼々は蘇生術による肉壁を、神崎は水流の壁を生み出し攻撃を回避する。そして、必死の思いでルークから距離を取る。
「ネズミが必死で逃げているみたいで気持ちがいいな」
ルークが拳銃を発砲すると、これも全弾、神崎と鬼々にヒットする。
「……今のは」
ここまでの戦闘を見てやっとティグレが違和感に気が付いた。
「ははは、俺はやっとお前たちと対等になれたと思ったが、如何やら違ったらしい。立場が対等になったのではなく、逆転したんだな。あはははははっははははは」
ルークが追い詰め、それを必死で回避、反撃する神崎、鬼々。
確かに逆転と言っても良い展開だ。
「間違いなく、あいつは最後の異世界転生を使った。だが、どこにも異世界転生者が見当たらない。それがこの展開の鍵になっているのか?」
「私ぃ、思ったんですですけど、なんだが、二人が―」
ヨハネの言葉を引き継ぎ、ティグレは違和感の正体を口にする。
「あぁ、弱っているな。そして、反撃を喰らってもルークは直ぐにケロッとした顔をしている」
そう、それが違和感の正体。
ルークが強過ぎるのではなく、神崎と鬼々が弱過ぎる。
「あああああああああああ‼」
鬼々が咆哮し、部屋中に無数の鬼族が召喚される。魔王の力を全開で開放し、死んでいった鬼族を蘇らせたのだ。
「あいつを殺して‼」




